白の血族

九条一

第一章(02)

 どう質問すれば状況を把握できるだろうか、と思案をめぐらしていると、ドアの向こうから足音が近づいてきた。
「統詞くん起きて――――って、誰、その子?」
 エプロン姿の妹はノックとともに勢い良くドアを開け、そのままの姿勢で固まった。思いがけぬ人影に戸惑っているようだ。
 ――彼女は榊綺華(あやか)。二歳下の妹で、オレと同じく富士原高校に通う高校一年生だ。榊家の家事をそつなくこなすなかなかできた妹だが、何かと暴力に訴える残念な思考の持ち主だ。
 中学まで空手を習っていた関係で、破壊力がハンパないのも問題だ。普通武道を習っていたら素人には手を上げないものだが……。

 まあ、今はそれよりも情報がひとつ増えたことの方が重要だ。妹がこの子を家に入れたわけではないらしい。
 ウチはかなり広い一軒家だが、現在はオレと妹の二人暮らし。保護者として父親がいるが、オヤジは単身赴任しており年に数度しか帰宅しない。……なるほど。
「……あんなちゃんはオヤジに連れてこられたんだ?」
「えーと、大海おじちゃんと一緒にきたよ」
 ――榊大海(たいかい)。オレと綺華の父親であり、古代遺跡研究の第一人者とされているそこそこ有名な考古学者だ。富士原大学の教授として勤務していたこともあるが、頻繁に行方不明になり休講を繰り返したためクビになったと聞いている。
「……その大海おじちゃんはどこにいるの?」
「研究に戻るって言ってた」
 オヤジめ、面倒を押し付けて逃げたな。
「……とりあえず、朝メシ食いながら話そうか」
「うんっ」
 女の子は元気よく頷いた。素直そうなのが救いだ。
「綺華、すまんが朝メシをもう一人分用意してくれ」
「あ、……うん」
 綺華はもう一度女の子を観察してから出ていった。オレも女の子の手を引いてダイニングへと向かった。

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