転生プログラマのゴーレム王朝建国日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~
11 メガスローライフ
目が覚めると、こちらを見つめる黒猫と目があった。三秒後、黒猫の瞳が大きく開かれ、尻尾がピンと伸びる。
「うむ、意識が戻ったか主」
あ。この猫、絶っ対鈴音だ。
世界広しといえども主に対してこんな不遜な態度を取る猫は鈴音しかおるまい。
……いや、そもそも猫はしゃべらないか。
俺は子供用のベッドに寝ているようだ。何故か視力が生前の俺並みに回復している。いや、成長したのか? しかし、昨日から一日しかたっていないはずだが。
「端的に説明するぞ。ワシはこんななりをしておるが、鈴音じゃ。お主は半年ほど前に転生者としての意識を失い、今目覚めた。そして今、さっそくトラブルが発生したようじゃ」
端的すぎるわ! そして情報がタイムリーすぎる!
俺は半年ほど眠ってたのか? そしてトラブルってなんだトラブルって。今起きたばっかりでタイミングよくトラブルが起きる訳無いだろう。
「混乱しておるようじゃの。あれから半年たっておるのじゃ。簡単な会話ができる筋力はついておるはずじゃ。ほれ、話してみい」
何、そうなのか。それは助かる。いくら鈴音が感情を読み取れるとしても、細かい情報は伝えられない。早速トラブルについての詳細を教えてもらおう。
「とぅーぶぅー」
(話せねえじゃねえかちくしょう!)
「ぶふぅ! 何を言っているか全然分からんわい。まるで赤子じゃの」
(体は赤子だっ! 笑うな! お前は猫の癖に流暢に会話しやがって!)
「まあ、いきなりは無理じゃ。練習が必要じゃな。ワシは猫の体で喋れるようになるまで30年はかかったからのう。それで、トラブルの事について知りたいんじゃな」
ちゃんと伝わってんじゃねえか! それと、今さらっと30年とか言ったが、一体今いくつだなんだこの猫娘は。
「それについては、説明する必要はない。何故なら主はトラブルに巻き込まれる星の元に生まれておるからの。ほれ、そこの扉を見てみろ。今にも扉がノックされ……」
コンコン
「……トラブルは向こうから舞い込んでくる」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここに寝ているのが、先ほど話した息子、巧魔だ」
タクマ? 名前は前世と同じなんだろうか?名は体を現すという言葉があるが、もしかすると転生をしても名前は変わらないのかもしれない。
「そうですか。見たところただの赤ん坊です。晃一氏が仰られるような特別な力は在るとはとても信じられないです」
そう話すのは、赤髪のロングヘアーをした少女だ。背は150センチ程だろうか。まだ顔にはあどけなさが残る。頬に薄くソバカスがあるが、決して悪い顔立ちではない。服装ははザ・魔法使いです! と言わんばかりに、黒のとんがり帽子、黒のローブ、木の杖を装備している。ミス・ファンタジーの称号は彼女に授けよう。
「まあ、そうだろうなあ。俺だって逆の立場ならそう思うわな」
「そうです。とても信じられないです。この赤子が森の主を倒すだなんて」
(……森の主って、まさかあのグレーターウルフの事だろうか? まずい。まさかとは思うが、俺がグレーターウルフを倒したせいで森の生態系のバランスが崩れたりしていないだろうなあ。……鈴音がこちらを観ながらニヤニヤしている。まるで俺の予測が当たっているかのような表情だが、断じて気のせいだ。それに、俺は赤子だ。俺が疑われる要素はひとつもない!)
「だが、こいつを見てもそう思えるかな?」
晃一はそう言うと、先ほど自分達が入ってきた扉側の部屋の隅に向かってあごをしゃくる。
……そこには、サムライゴーレムの遺した装備品一式が飾られていた。
(ガッデム! あったよ証拠! 森から拾って来やがったのか!)
「こっ、これは一体?!」
赤髪の魔女っ子は目を見張る。
「これは全身鎧? 見たこともないデザインです。この刀、余りにも巨大すぎるです。それに一件シンプルですが、吸い込まれるような魅力を感じる。」
「これは、恐らく呼び出されたゴーレムが身に付けていた装備品だ。確証がないのは、俺が気を失っていたからだが、状況からいってまず間違い無いだろう」
魔女っ子はじっと訝しげに俺を見つめる。
「……この世界では見たことも聞いたこともないデザインの装備品をゴーレムに装備させて生み出すなんて。そんなこと出来るはずが……ましてやただの赤子に出来るわけ無いです。……もしかして、寄生型の魔物?」
「ちょっと! 巧魔ちゃんを魔物扱いしないでくれる?! 巧魔ちゃんは他の子よりちょっと天才なだけなんだから!」
じっと聞いていた菫が突然声を荒らげた。
「そう、巧魔ちゃんは、生まれながらの天才なのよ。将来出世してこの国の筆頭魔道師になるんですからね」
ママン、いつの間にそんなめんどくさそうな人生設計を。俺としては前世が過労死ということもあるので、メガスローライフを満喫したいところ何だが。
うん、そうだ、決めた。俺の今回の人生の目的は『メガスローライフで幸せになる』だ!
「うむ、意識が戻ったか主」
あ。この猫、絶っ対鈴音だ。
世界広しといえども主に対してこんな不遜な態度を取る猫は鈴音しかおるまい。
……いや、そもそも猫はしゃべらないか。
俺は子供用のベッドに寝ているようだ。何故か視力が生前の俺並みに回復している。いや、成長したのか? しかし、昨日から一日しかたっていないはずだが。
「端的に説明するぞ。ワシはこんななりをしておるが、鈴音じゃ。お主は半年ほど前に転生者としての意識を失い、今目覚めた。そして今、さっそくトラブルが発生したようじゃ」
端的すぎるわ! そして情報がタイムリーすぎる!
俺は半年ほど眠ってたのか? そしてトラブルってなんだトラブルって。今起きたばっかりでタイミングよくトラブルが起きる訳無いだろう。
「混乱しておるようじゃの。あれから半年たっておるのじゃ。簡単な会話ができる筋力はついておるはずじゃ。ほれ、話してみい」
何、そうなのか。それは助かる。いくら鈴音が感情を読み取れるとしても、細かい情報は伝えられない。早速トラブルについての詳細を教えてもらおう。
「とぅーぶぅー」
(話せねえじゃねえかちくしょう!)
「ぶふぅ! 何を言っているか全然分からんわい。まるで赤子じゃの」
(体は赤子だっ! 笑うな! お前は猫の癖に流暢に会話しやがって!)
「まあ、いきなりは無理じゃ。練習が必要じゃな。ワシは猫の体で喋れるようになるまで30年はかかったからのう。それで、トラブルの事について知りたいんじゃな」
ちゃんと伝わってんじゃねえか! それと、今さらっと30年とか言ったが、一体今いくつだなんだこの猫娘は。
「それについては、説明する必要はない。何故なら主はトラブルに巻き込まれる星の元に生まれておるからの。ほれ、そこの扉を見てみろ。今にも扉がノックされ……」
コンコン
「……トラブルは向こうから舞い込んでくる」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここに寝ているのが、先ほど話した息子、巧魔だ」
タクマ? 名前は前世と同じなんだろうか?名は体を現すという言葉があるが、もしかすると転生をしても名前は変わらないのかもしれない。
「そうですか。見たところただの赤ん坊です。晃一氏が仰られるような特別な力は在るとはとても信じられないです」
そう話すのは、赤髪のロングヘアーをした少女だ。背は150センチ程だろうか。まだ顔にはあどけなさが残る。頬に薄くソバカスがあるが、決して悪い顔立ちではない。服装ははザ・魔法使いです! と言わんばかりに、黒のとんがり帽子、黒のローブ、木の杖を装備している。ミス・ファンタジーの称号は彼女に授けよう。
「まあ、そうだろうなあ。俺だって逆の立場ならそう思うわな」
「そうです。とても信じられないです。この赤子が森の主を倒すだなんて」
(……森の主って、まさかあのグレーターウルフの事だろうか? まずい。まさかとは思うが、俺がグレーターウルフを倒したせいで森の生態系のバランスが崩れたりしていないだろうなあ。……鈴音がこちらを観ながらニヤニヤしている。まるで俺の予測が当たっているかのような表情だが、断じて気のせいだ。それに、俺は赤子だ。俺が疑われる要素はひとつもない!)
「だが、こいつを見てもそう思えるかな?」
晃一はそう言うと、先ほど自分達が入ってきた扉側の部屋の隅に向かってあごをしゃくる。
……そこには、サムライゴーレムの遺した装備品一式が飾られていた。
(ガッデム! あったよ証拠! 森から拾って来やがったのか!)
「こっ、これは一体?!」
赤髪の魔女っ子は目を見張る。
「これは全身鎧? 見たこともないデザインです。この刀、余りにも巨大すぎるです。それに一件シンプルですが、吸い込まれるような魅力を感じる。」
「これは、恐らく呼び出されたゴーレムが身に付けていた装備品だ。確証がないのは、俺が気を失っていたからだが、状況からいってまず間違い無いだろう」
魔女っ子はじっと訝しげに俺を見つめる。
「……この世界では見たことも聞いたこともないデザインの装備品をゴーレムに装備させて生み出すなんて。そんなこと出来るはずが……ましてやただの赤子に出来るわけ無いです。……もしかして、寄生型の魔物?」
「ちょっと! 巧魔ちゃんを魔物扱いしないでくれる?! 巧魔ちゃんは他の子よりちょっと天才なだけなんだから!」
じっと聞いていた菫が突然声を荒らげた。
「そう、巧魔ちゃんは、生まれながらの天才なのよ。将来出世してこの国の筆頭魔道師になるんですからね」
ママン、いつの間にそんなめんどくさそうな人生設計を。俺としては前世が過労死ということもあるので、メガスローライフを満喫したいところ何だが。
うん、そうだ、決めた。俺の今回の人生の目的は『メガスローライフで幸せになる』だ!
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