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夢と現実と狭間の案内人 [社会不適応者として生きるということ⋯⋯]

巴崎サキ

恵美との小さな事件 ④

 私が学校に着くと、恵美はもう教室にいてテストの最後の詰めをしていた。

(⋯⋯あっ。)

 一瞬、教室に入るのを躊躇ってしまう。

(⋯⋯大丈夫。うん、大丈夫。えっと⋯⋯まず⋯⋯挨拶。そう、あいさつ。挨拶から⋯⋯)

 覚悟を決めて、教室に一歩踏み込む。

 すると、

 突然、首根っこを掴まれズルズル廊下へと引きずり出された。

(ぅわっ  わっわっわ  ちょっと?  えぇ??)

 明日香だった。

「な~にやってんの??あんた」

 上から見下ろされながら、細めた目でジーーっと見つめられる。

 ただでさえ、長身の明日香だ。
 その威圧感たら凄い。

「えっ?? いや~~、えっと⋯⋯。ねぇ~??」

 あたしが、言葉に詰まっていると⋯⋯。

「はぁ~。くだらない。行くよ!!」

 明日香は、そう言うと今度は私の肩に腕を回してきて教室に引きづりこんだ。

「ちょっ!ちょっ!ちょっと!!」

 あたしは、足がつんのめりながら教室に入る。

「おはよーーー!!」

 教室中に、一際元気な明日香の声が響き渡る。

「あっ!明日香おはよ~!」
「おぅ!神園!ほんと朝から元気だな~、おめぇ」

 クラス中から返事が返ってくる。

 その中から

「明日香、おはよ~!!」
手を振りながら返事を返す恵美。

「あっ!咲希!!おはよー!!」

 満面の笑みを浮かべ、より一層手を大きく振りながら恵美が挨拶してくる。

「へっ?」

 間抜けな声を出すあたし。

「いいから、行くよ。」

 明日香は、小声であたしにそう言うとそのまま恵美のところへ連れて行く。

「おはよ~。えっと⋯⋯ん~、昨日⋯⋯ごめんね。」

 目を合わせられず、俯きながらなんとか⋯⋯なんとか最低限の言葉をあたしは絞り出した。

 すると、恵美は首を横に振りながら

「私こそ、なんかごめんね。
昨日の夜ね、明日香に怒られちゃった。

『咲希が、そんな事するはずない。
あるとすれば、なにかしら必ず理由があるはず。
疑うなっ!!』

って。
確かに、そうなんだよね。
寝ちゃったぐらいでオーバーだったと思う。
機嫌損ねるような事じゃないよね。」

 笑顔で、こう答えてくれた。

 あっけらかんとした対応に若干戸惑うも、明日香がいろいろ話してくれていたんだろう。
 改めて感謝しかない。

 私は昨夜寝てしまう直前、お願いしてみようかなと思っていたことを打ち明けてみることにした。

「ん~。けど、悪いのはあたしだよ。
やっぱり寝ちゃうってのはなしだと思う。
でね⋯⋯え~っと⋯⋯。
実は、2人にお願いがあるんだけど⋯⋯。
あたし、確かに眠くて寝てるんだけど、実は寝たくて寝てるわけではないのね。
正直なところ⋯⋯起きていたい。
学校を寝て過ごすなんてもったいないし。
だから、あたしが寝てたら起こしてもらいたいの。
お願いできないかなぁ??」

 あたしは、子供みたいなことを友人に頼んでいる自分が心底情けなくなってきた。

 自分の意思では『寝ちゃダメ!!』と、抵抗しても目が覚めない。
 仮に覚めても頭がフラフラして仕方がない。
 だけど、肩をポンと軽く叩いてさえもらえれば何故か簡単に起きられる。
 そして、眠気も飛んでいる。

 これしか方法が思いつかなかった。

「ん?要は起こしゃいいんでしょ??別にいいけど」

 明日香だ。

 すかさず恵美が割って入ってくる。

「学校で寝てるから起こすって⋯⋯まぁ、本来普通だよね。
ただ、咲希の口から  "寝たくて寝てるわけじゃない"  って聞けてよかった。ってか、ホッとしたというか⋯⋯安心した。
じゃ~、これからは起こすね!!」

⋯⋯意外ととんとん拍子に話が進む。

 内容としては、"寝てたら起こせ" ただそれだけ。
 いたって普通だし、大した事じゃ無い。

 だけど、寝てしまったことで傷つけてしまったあたしとしては結構な大事で、大事な対策⋯⋯とは言え、本当はみっともなくてこんな事は頼みたくなかったのが本音だった。

「ありがと。そういえば恵美、昨日喫茶店で何か言いかけてたけど⋯⋯ごめん、あれなんだった??」

 正直なところ、言いかけだったのか言い終わってたのか後半がうろ覚えで自信がなかったんだけど⋯⋯。

 しかし、次の恵美の返答で大事な⋯⋯とてもとても大事な現実を思い出させられる。

「あ~、あれね。まぁ~、テスト終わった後に帰りにでもまた話すよ!!」

⋯⋯⋯⋯??

「あっ!!」
「んん??」

 あたしと明日香は、お互い顔を見合わせると二人して血の気が引いていった。

 その顔を見れば明日香もあたしと同じ状況だってのは手に取るようにわかる。

 先に噛みついたのは明日香だ。

 恵美の両肩を掴み、揺さぶりながらこんな事を言い出した。

「恵美っ!!緊急事態だっ!!あたしを後20分で赤点回避させてっ!!勉強してないっ!!あぁ~、もう咲希でもいい!!」


(⋯⋯はい??   いや⋯⋯でもってなによ??)


「無理っ!!」
「無理でしょ!!」

 あたし達は声を揃えてこう言うと、すかさずカウンターが飛んでくる。

「元はと言えば、あんた達のせいでしょうが!!今度は、あたしを助けなさいよ!!」

 まぁ⋯⋯確かにそうなんだけど⋯⋯。
 けど、そもそもやったところで⋯⋯

 いや、それよりも⋯⋯

「えっと⋯⋯実は、あたしも助けて欲しいんだけど⋯⋯。」



「⋯⋯うそっ??」




 恵美から其々秘策を伝授されるとあたし達は、やぶれかぶれでテストに挑んだ。


 テストが始まり20分経過


(え~~っと、ここでさっき聞いた公式を使って⋯⋯使っ⋯⋯⋯⋯
⋯⋯そろ⋯⋯あたし達⋯⋯⋯⋯引退⋯⋯試合⋯⋯⋯⋯勝ち⋯⋯)

⋯⋯

⋯⋯⋯⋯。




ガタンッ!!

「ひッッ!!」

 あたしは、突然の衝撃に情けない声を上げてしまった。

 椅子を突然後ろから蹴飛ばされたのだ。

「だれだ~??うるさいぞ!!テスト中だぞ!!」

 先生が、全員に向けて話す。

(えっ?あたし⋯⋯半分寝てた??)

 蹴飛ばしてきたのは当然後ろにいる  "明日香"  だった。


 終了の鐘がなる。

「はい。答案用紙後ろから集めて!!次のテストの準備するように!!」

 先生は、答案用紙を集めるとそそくさと教室を出て行った。

「ちょっと、咲希!!あんた寝てたでしょ??
首がカクカク揺れてたに!!
諦めるにはまだ早い時間だよなぁ~って思ってさ!
さっそく起こしてあげたわ!!
どうだった?あたしの一撃!!
目ぇ覚めた??」

 してやったりと、妙に得意げに話す明日香。

「覚めた。
覚めたんだけど、びっくりしすぎて全然心臓落ち着かないし。もうちょっと優しくてもいいんだけど⋯⋯まぁ、おかげで眠気は全て吹っ飛んだけどね。すごい今頭がシャキッとしてる!!」

 日頃、常に頭の芯がぼーっとしている感じがするのだが、驚かされてからはそれすらもなくなりすごく久しぶりに頭がすっきりとしている。

 眠くなったら、びっくりさせてもらえればこの眠気は止まるのかな??

 そうこう話しているうちに、恵美が割って入ってきた。

「ちょっと!!反省会は後々!!次のテストの対策するよ!!10分しかないんだからね!!」

 10分で赤点が免れる秘策が??

(早く今日のテスト全て終わってっ!!
しんどすぎる~!!)

「お願いしますっ!!」
「お願いしますっ!!」




 本日のテストも全て終わった放課後
 11:30

「どう??何とかなった??」

 あたしと明日香に、恵美が話しかけてきた。

「結果を見てみないとわかんないけど⋯⋯もしかしたら50点ぐらいはいけちゃったかもしれない!!」

 あたしがそう答えると、

「やばいっ!!ひょっとしたら赤点免れたかもっ!!」

 と、明日香が続く。そして、ふと疑問に思ったことをそのまま聞き出した。

「ところで、あんたなんでそんなにテストの点の取り方わかんの??もしかして~先生と繋がってるとか??」

「変なこと言わないでよ!!気持ち悪い!!そんなわけないでしょ!!この学校、進学校じゃないじゃん。つまり、学校としては単位を落として留年させちゃって、学校を辞めるなんてことにはできるだけさせたくないわけ。前回のテストのレベルから判断して、今回のテストはかなりeasyに作ってくるってのは見えてた。だから、点数を取らせるためにかなり記号問題を出してくるだろうなとは思ったの。なら、難しい漢字や単語や用語を覚える必要なんてなくて、テストに出そうな資料や長文を直前に一度しっかり目を通しておけばなんとなく記号なら埋めれるってわけ。とは言え、テストで点を取るためだけの手段であって、自分の知識としては何にも身に付かないからあくまでも最後の手段だけどね。」


(⋯⋯えっ??)

 いまいち、話についてけれてない。

 明日香なんて、ポカーンとしてる。


 あたしは、もしかしたら大きな勘違いをしていたのかもしれない。

 同じ学校、同じクラスだから単純にクラスのできる子と恵美のことを見ていた。

 けれど⋯⋯もしかしたら、根本的なところから違うんじゃないか??と、思えてくる。

 私は、同じ学校に来ているのだから過去の成績なんてみんな似たり寄ったりなんだろうと思い特に聞いてこなかったことをぶつけてみる。

「あっ⋯⋯あのさ~、恵美って⋯⋯中学のときの内申点て、最高いくつ??」


 すると、想定以上の数字が飛んできた。


「えっ??内申??え~っと⋯⋯43」


 ん?

 最高が5で⋯⋯9科目で⋯⋯最高で45だから⋯⋯⋯⋯。


「はあぁぁぁ??」

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