夢と現実と狭間の案内人 [社会不適応者として生きるということ⋯⋯]

巴崎サキ

* 目が覚めて ⑤

「ぅあ⋯⋯あっっぅあああああああああ」


 私は、両腕を滅茶苦茶に振り回しながら飛び起きた。


「⋯⋯えっ??  ここは??」

 そこは、見慣れたいつもの私のベッドの上。

 違うのは、全身汗だくになっている自分だけ。

(⋯⋯っ??⋯⋯ゆ⋯⋯)

 痛っ!!

 左薬指に鈍い痛みが走ったような気がした。

 全身を悪寒が襲い、緊張が髪の先まで走る。

(あ⋯⋯うそ⋯⋯。いや⋯⋯まさか)

 私は、ゆっくり薬指を確認する。


 しかし、そこには想像に反していつもの指があるだけ。腕にも異常はない。

(はぁ~。よかった。付いてる。
ちゃんと、あった。  指⋯⋯大丈夫。
そう⋯⋯そうだよ。大丈夫。これは夢。
現実じゃない。こんな事ありえない。
だから⋯⋯だから(今回も)大丈夫)

 私は、そう自分に言い聞かせながら、切り落とされたはずの薬指を確認した。

 だが、ナイフが皮膚を裂き、関節に食い込み、指の中を通過して切り落とされていった生々しい感覚が痛みとともに目が覚めてもなお残っている。

 いつもの事と言ってしまえばいつもの事なんだが⋯⋯。


 私は、”特発性過眠症”という睡眠障害を患っている。
 この  ”特発性過眠症”  や  ”ナルコレプシー”  といったいわゆる過眠症は、日中の強い眠気が主な特徴だが、それ以外にもいろいろと特徴的な症状がある。  その一つが

   “リアルな悪夢” 

 だった。

 ここでいうリアルというのは、夢の内容が生々しく、かつ目が覚めてもその時に覚えた感情や、触れた感触、痛みといったものが残っているというもの。

 悪夢の内容は人それぞれ個人差はあるが、私の場合は、身体を傷つけられる、殺されるといった内容が多かった。


 人によっては、何か物を食べた時に、全ての歯が折れたり、砕けたり、抜けたりして、口の中がジャリジャリした夢を見た。
 そのジャリジャリした感覚が起きても残っていて気持ち悪かった、といった事例も聞いたことがある。



「人形⋯⋯知らない人形だった。
なんなの??
いや⋯⋯やめよう。
夢⋯⋯そう、夢なんだから。
いつもの様に、忘れるしかない」


 とは言え、そう簡単に忘れられるようなものではない。

 今回は、知らない人形に襲われた。
 西洋の方のだろうか。
 内容のイメージとしては、

 映画、『チャイルドプレイ』

 を、ご存知の方なら想像がしやすいか。

 あれが、5体。


「はぁ~。昼寝なんかするんじゃなかった。ってか、今何時??」

 時計は 18時を指そうとしていた。

  19時には友人といつものお店で会う約束がある。

「やばっ!!もう、あんま時間ないじゃん!!」

「エッセイ」の人気作品

コメント

コメントを書く