SiN・MAZINGERーZERO

SUBARU

第13話

かつて、スバルと戦っていた怪獣達である機械生命体スペース・ノヴァビースト。それらはスバルやその仲間達によって全滅した……地球に来たビーストに限っては。
ビースト達は自分達の仲間が命をかけて伝えたデータにより、進化を遂げ、機械に頼らずに肉体を構成できるようになり、さらに知性も引き上がった。そして自分達の仲間を皆殺しにしたスバルに復讐するため、そして、自分達の新たな進化のため。ビースト達はX獣スペースビーストとなり、地球に潜伏していた。
その内の1体が、ついに活動を再開した。


関東、赤城山。そこの山道で失踪事件が多発していた。だが、実際はブロブタイプビースト、ヘドロクライムの仕業である。ヘドロクライムは自らの姿を山中に擬態させて、近くを通った人間を捕食していたのだ。
ヘドロクライムの捕食方法は2通りある。1つは自らの肉体を小さなナメクジのように変化させ、口から触手を出して一瞬で喰らってしまうという方法。
もう1つはヘドロクライムの肉体は95%が水分という事を活かし、直接取り込んで強力な消化液で生きたまま溶かし尽くすという方法だ。
今日も、赤城山の山道を通ったカップルが消えた。
まず彼氏の方が触手で捕食された。女が彼氏を探していると、捕食中のヘドロクライムに出会した。女が悲鳴をあげようと口を開けた瞬間、ヘドロクライムは女を取り込んだ。女がもがき苦しんでいるのを楽しむように、ヘドロクライムの強力な消化液が体内に充満する。そして女は助かる事も、楽になる事も無くヘドロクライムに捕食された。
ヘドロクライムは満足そうに山中に消えた。次に奴が現れるのは赤城山の山道で次の獲物を見つけた時だろう。
ーその惨劇を、まるで子供がヒーローショーを見るように輝かしい目で見る男が1人。
「こいつは良いネタだ……」
彼の名は石動秀一。ジャーナリストである。だが、人間性が皆無の男である。


ディストピア星人……いや、ワルキューレ星人の最期を、スバルは敬礼をして見届けた。そこにヒルドとスルーズが現れる。
「……」
「助けて、あげられなかったの?」
「……すまない。だが、これがワルキューレ星人の願いだった」
スバルは謝罪したが、反省はしていなかった。ワルキューレ星人はディストピア星人として死に、ワルキューレ星人として輝く事を求めた。彼はそれを叶えただけだと確信していた。
「……ワルキューレ星人がああなったのは、人間のせいです」
「ワルキューレ星人はいい宇宙人だった。なのにどうして……」
「人間ってのは、そういう生き物だ」
スバルはそう吐き捨てるように言った。
「姿形、考え方が違うだけで迫害し、抹殺しようとする。もう、人間を守ろうとは思わない」
「じゃあ、スバルのお兄さんはなんで戦うの?」
ヒルドは涙ぐみながら聞いた。
「俺はThe・ONEを殺す。それだけだ」
スバルはシャルフリヒターに乗り、事務所へ帰って行った。そしてその道中、小型のX獣を踏み潰していたが。


スバルがディストピア星人と戦っている中、ある人物は戦う準備を整えるため、フランスへ帰っていた。シノン・へカーティアである。
彼女はスバルに突き放され、戦いの準備を命じられた時、ある銃が完成したとの報告を受け、フランス軍本部に帰っていたのだ。
「お帰りなさい!シノン大佐」
「シノンでいいわ。今更大佐なんて」
シノンは敬礼した兵士に駄目出しをくらわせる。フランスはX獣の進撃がまだ少なく、それに小型X獣しか現れていないため、まだ平和な方だが、赤城山の事件を受け、対X獣用兵器の開発を急いでいた。
「ですが、上官を呼び捨てには……」
「じゃあせめて教官にしなさい」
シノンは呆れながらそう伝える。シノンが目指したのは、開発ドッグ。
彼女が入ると、開発ドッグの主任らしき男が敬礼した。
「御足労、ありがとうございます。シノン大佐」
「……もういいわ」
シノンは呆れ果て、ついに諦めた。わざとらしい溜息を1つつき、主任に向き直る。
「で?あれは?」
「こちらに」
シノンが案内されたのは開発ドッグ内の射撃場だった。そこに、巨大なライフルが置かれていた。
「フランス軍制式採用の対物ライフル、PGMヘカートIIにカスタマイズを施した新型対物ライフル、PGMへカートⅩⅦです」
「……なんで17?」
「これが17番目なんです」
「意味は無いのね」
シノンは早速へカートⅩⅦを持とうとするが、その重さに驚愕する。
「これ……何キロよ……」
「色々詰め込みましたから……多分20キロはあるかと……」
シノンは驚愕する。銃が20キロとは。それは最早銃では無い。兵器だ。それでもシノンは何とか頬付けし、トリガーを引いた。
凄まじい轟音と反動。そしてターゲットを粉砕する破壊力が、へカートⅩⅦにはあった。
「ねぇ」
「はい?」
「これ、貰っていいかしら」
「他にも試作品がありますが……?」
「ダメ。これじゃないと……」
シノンは一呼吸置いて言った。
「……ジャックを守れない」
シノンはへカートⅩⅦを担ぎ、主任に向き直る。
「まだあるでしょ?」
「え、えぇ……」
シノンは主任が開発した最新兵器を受け取り、一通りの装備を整えた。
そしてフランス軍本部から出ようとするシノンを、主任が引き止めた。
「待って下さい!シノン大佐!」
「何?まさかまだあるの?」
「はい。貴女の覚悟を見て、これも託す気になりました」
主任は格納庫にシノンを連れて行った。そこには……
「……これは」
そこには、銀色のバイクのような兵器があった。
360°の回転が可能な特殊な形状の車輪。 各部に装備されたブースターやジェットエンジン。そしてバイクとは思えない大きさ。
「私達フランス軍……いや、人類の化学の最高傑作、ジェットスライガーです。操縦の難易度がとんでもなく高いため、まだ制式採用はされてませんが……」
「これ、凄いわ。まるでバイクの形した戦闘機じゃない」
シノンは早速乗り込む。そしてエンジンを作動させる。
「呼ぶ時はこれを」
主任はシノンに携帯端末を渡した。
「使い方は使いながら覚えるわ」
シノンはジェットスライガーのアクセルを踏み、フランスを後にした。

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