SiN・MAZINGERーZERO

SUBARU

第8話

魔神降臨ノ書を読み進めていくうちにスバルはある事実を悟った。
それは、『究極の闇』と呼ばれる存在になってもThe・ONEを倒せるか分からない。仮に敗北すればこの世界だけでなく、ほかの世界……つまり平行世界にもThe・ONEの光の影響が及ぶという事。The・ONEの光。即ち宇宙開闢ビッグバン。The・ONEが勝利すれば全ての世界が消滅する。
スバルは拳を握り締め、呟く。
「……必ず変える。こんなくだらねぇ運命なんぞ…絶対に」
リリスはスバルの鬼気迫る表情に恐怖していた。そしてある誓いを立てた。
ーもし、お兄様が暴走したら、私が刺し違えてでも……ー
どうすればいいかリリスが迷っていると、突然地震が発生した。
「何だ?」
地震が収まったのをかくにんし、スバルとリリスは外に出る。
そこには現地点から北東に、巨大な城らしき物が聳え立っていた。
「おっきい……」
「悪趣味だな」
リリスは圧倒され、スバルは吐き捨てるように皮肉った。
「リリス。俺が行く。お前は魔界に帰って何時でも戦えるようにしとくようにみんなに言っといてくれ」
「はい。お兄様」
リリスは魔法陣を通って地下にある魔界へと帰って行った。
スバルはそれを見届ける事無く、処刑人シャルフリヒターを駆り、城らしき物へ向かう。


東京都、秋葉原。スバルは目を疑った。
普段は人で溢れる秋葉原だが、生者でなく、死者が溢れていた。しかも全員動いている。言わばゾンビだ。
しかし、このゾンビを全員倒さなければ前には進めない。
スバルは意を決して《罪と快楽の悪魔デビルバーストモード》に変身。咆哮を上げてゾンビ達に斬り掛かる。

罪と快楽の悪魔デビルバーストモード》はパワーは無いが凄まじいスピードが特徴である。その唯一無二の明確な弱点。それは体力が大きく削られる事である。その為一撃一撃で生物の肉体に致命傷を与える戦い方が基本スタイルとなる。そのため致命傷を与えても死なないゾンビ達は、この形態と絶望的な程相性が悪い。

悪魔はその絶望的な程の相性を覆そうと口から赤い放射熱線を吐いた。身勝手な運命に対する『憤怒』の名を持つ《憤怒の炎ラース・ファイア》を放つ。だがゾンビは身体に火を付けながら尚立ち上がる。ダメージを受けている様子は無い。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
悪魔の体力が大幅に削れ、息切れが起こる。ゾンビはそれを見逃さず、悪魔の頭部に強烈な攻撃を食らわせる。
「アァァァ……」
悪魔はよろめき、体勢を崩す。ゾンビ達は悪魔をぶっ飛ばし、電柱に拘束した。
悪魔は意識を失う。そして変身が解け、スバルへ戻った。


空1面が美しい青。舞い散る桜。
スバルは懐かしさを感じる温かさの中、目覚める。
「目、覚めた?」
懐かしい声。スバルは誰かに膝枕されていた。スバルはそれが誰だか知っていた。
自分の命よりも家族を守った唯一の肉親、菜月ステラである。
「……姉さん…なんで……」
「だってやられちゃった時、スバルの魂と融合したもの。だから、貴方の中で私は生きてる」
そう。目の前で姉を失ったスバルは、逃げた後、精神崩壊を起こした。ステラはそんな弟を見ておれず、何時でも助けられる様、魂をスバルと一体にしていたのである。
「じゃあ……姉さんはまだ……」
「うーん……生きてるのか死んでるのか、たまに分かんなくなるんだよね」
ステラはバツが悪そうに笑った。スバルは生前と変わらない姉を見て、少しだけ嬉しくなった。
「ねぇ、スバル」
ステラは急に真剣な顔になり、スバルに1つの質問をした。
「私の力、使う?」
「え……?」
「私なら、死なない奴でも軽くぶっ飛ばせるよ?」
「でも、姉さんはもう……」
そう。ステラはもう死んでいる。死霊使いネクロマンサーでも無い限り、死者を甦らせる事は出来ない。
「私の魂と、スバルの魂を入れ替えるの。そしたら、貴方の肉体を借りて私が戦える」
「そんな……無理だよ姉さん」
スバルは俯いて言った。
「俺の身体は、魂が入れ替わったって戦えない。戦える状況じゃない」
ステラはスバルを抱き締め、こう言った。
「大丈夫、信じて。私は貴方の姉よ?あんな悪趣味ゾンビ軍団、ぶちのめしてあげる」
スバルから離れ、いつもスバルを勇気付けた笑顔で重ねてこう言った。
「お姉ちゃんに任せなさい!」
その声を聞いて、スバルの意識は再び途切れる。


再び目覚める。拘束は手錠のみと簡素だった。スバルは手錠を引きちぎって脱出した。
ゾンビ達は意識を取り戻した事に驚愕したらしく、数歩後ずさりする。
「……行くよ。姉さん」
そう呟くと、スバルの周りを青い旋風が吹き荒れる。無謀にも近付くゾンビは吹っ飛ばされる。
「……はぁ!」
旋風を切り裂き、少女が姿を見せる。
闇のように黒い髪を左右非対称のツインテールに纏め、肌は雪のように白い。
眼はサファイアのように蒼く、頬には青い血涙。
白いシャツに青いラインが走る黒いロングコートを前開きにして着ている。ロングコートの背中と右胸に炎が星を包んでいるようなマークがある。
黒いホットパンツに紫のベルト、黒いロングブーツを着用している。
これがスバルの肉親を失った「悲しみ」を具現化し、ステラとスバルの魂が入れ替わった事で『菜月ステラ』その者に変化した形態《悲しみが奏し黒岩の鎮魂歌シューターモード・レクイエム》である。
ゾンビ達は雄叫びを上げ、ステラに襲い掛かる。ステラは落ち着き払って、右手を掲げる。
すると青い螺旋状の光を纏い、巨大なキャノン砲が現れる。ステラはその巨大な銃口をゾンビに向け、引鉄を引く。
銃弾はゾンビの肉体を抉り、貫いた。
他のゾンビ達は驚いたのか、大きく後ずさりする。中には尻餅をついた者もいる。
「……貴方達が私の可愛い弟を虐めた奴らね……」
その声は、スバルの物ではなく、ステラのものだった。
ステラはゾンビ達に向けてこう言った。
「……絶対に許さないわよあんたら。じわじわと嬲り殺しにしてあげる」
ステラは地面を蹴り、ゾンビの群れへ突っ込んだ。

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