SiN・MAZINGERーZERO

SUBARU

第1話

辺り一面、崩壊した都市が広がっている。
ここは、崩壊した世界。ある男が生まれ、育ち、破壊された世界。

男はボロボロの身体を引きずって歩いていた。目的地は、自分の生家。
彼は敗北し、この崩壊した世界に落とされた。瞼の裏に、仲間達の悲しみに暮れた表情が焼き付いている。だが、その眼に、涙は無かった。

男はただ真っ直ぐに、生家を目指して着実に進む。
黒地に赤ラインが入ったロングコートを着込み、黒い血が飛び散った様な装飾を持つ白シャツにダボッとしたジーンズ、腰にはバックパック。更に太腿にガンホルダーとナイフの鞘。首には血に濡れたマフラーを巻いている。
男の名は、菜月スバル。魔神パワーと呼ばれる能力を持つ魔剣士である。

この世界で彼は、全てを失った。大切な家族も、家も、戦友も。そして復讐を誓い、強くなった。だが、全ての元凶は"無"その物だ。物理攻撃は全く効かず、手も足も出ずに愛剣をへし折られた。そしてここに落とされた。

何分、何時間歩いたか分からないが、スバルはついに生家に辿り着いた。生家の前に、黒龍が眠っていた。スバルはその龍の頭を撫でた。
「ここでずっと…待っててくれたんだな…ありがとう、レギーナ」
スバルは黒龍の名を呟き、崩壊した生家へ入って行った。



生家は崩壊していたが、家族の写真だけは健在だった。苦笑いの父、満面の笑みを浮かべる姉、静かに赤ん坊を抱きかかえて笑う母。
『おい!なにやってんだよ!』
しばらく写真を眺めていたスバルを、1つの声が現実に引き戻す。
「グリフォン」
グリフォンと呼ばれた喋る烏のような悪魔は弄れた声で言葉を続ける。
『グリフォン。じゃねーよ!早く戻れよ、あいつをぶちのめすんだろ!?』
スバルはグリフォンの言葉を完全に無視して独り言を話す。
「…俺が魔神パワーに本格的に目覚めたのは、リヴェリオンに、腹をぶっ刺されてからだ」
そう言いながら、スバルはへし折られた愛剣《魔剣リベリオン》を取り出す。リヴェリオンとは、魔剣リベリオンが悪魔として生きていた時の名だ。
『あ?今更すんのかよその話』
グリフォンは相変わらず皮肉を撒き散らす。スバルは苦笑し、言葉を続ける。
「ずっと考えてた……リヴェリオンは何故、俺を認めた?」
『…何を、言ってんだよ』
グリフォンは皮肉をやめ、真剣な口調で返す。
「俺も色々な奴に刺されたが、まさかこんな日が来るなんてな」
そう言って、スバルは折れたリベリオンを腹に突き刺した。
『イカれちまったのか!運命を変えるんだろ!?なぁ、おい!自殺とか、よせよ!お前が死んだら、奴はどうすんだよ!』
グリフォンは焦って捲し立てる。
スバルは自殺する為にリベリオンを刺したのでは無い。痛みに耐えながら、言葉を絞り出す。
閻魔刀やまとは、人と魔を分かつんだろ…だったら対を成すリベリオンは………」
閻魔刀。それは人と魔を繋ぐ地獄門の鍵でありながら地獄門を破壊する為にある、リベリオンと対を成す白刀。自らの力はリベリオンの力で引き出された。それならは……
その時、世界に無数の光が差し込む。
リベリオンはその力を解放し、全ての世界に存在する全ての魔具、神具、聖具と融合して行き、その力を吸収して行く。
『マジかよ……リベリオンに…魔具が…いや、それだけじゃない……神具に聖具。人が本来持つべきでは無い武器が……』
グリフォンは驚き、呟く事しか出来なかった。
光がリベリオンに全て究極された時、スバルは叫ぶ。
「ああああああああぁぁぁぁ!!」
『うわぁぁぁ!』
グリフォンはぶっ飛ばされ、壁に叩き付けられた。そして、スバルは覚醒した。
それと同時に、外にいた黒龍が目を覚まし、咆哮を上げる。
「グオオァァァァァ!!」
スバルは起き上がったレギーナの頭を撫でる。レギーナはスバルにじゃれ付き、体制を低くし、スバルに乗るように促す。
「一緒に、戦ってくれるのか?」
レギーナは頷く。それを見て、スバルはレギーナの背中に乗る。
「行くぞ、レギーナ」
レギーナは天高く舞い、虚空へ身を踊らせた。

コメント

  • SUBARU

    コメントありがとうございます!!

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  • 姉川京

    文章の表現力が凄いですね。比喩や擬人法をうまく使い、読者を惹きつけるような文に驚きました!

    これからも読ませていただきます。

    これからもお互い頑張りましょうね♪

    そしてもしよろしければ僕の作品も読んで下さい!

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