黄金の将《たった3人の軍団》

ごぼうチップス

第一章 12

「お、女の子?」
「そ、そんな、ここは戦場ですわよ?あり得ませんわ!」
「どう言う事なの?」
ノヴァたちが困惑していると、女の子が前と歩いてきて、唐突に会釈をしてきたのだ。
「私はルシア。ルシア・リンドゲール」
「!?」
「もしかして、貴女たちは敵?私の敵なの?」
「「えっ?」」
この子は何を言っている?
こんな小さな子がこの場にいる事それ事態が、異常な事なのに更に事欠いて、私たちを敵だと言う。
何がどうなっているのか、ノヴァたちは理解が追い付かなかった。
「敵なのね?プーちゃん、ほら、アレが私たちの敵だよ」
人形に話しかけた後、ルシアと名乗った少女はヴァルキュリア部隊の面々に指を指し、またニコリと笑った。
「くっ、全員この場から離れなさい!」
「えっ?ノヴァ様?」
「この子は何か、危険よ。だから早くこの場を離れるのよ!」
ルシアが放つ異様な空気に、ノヴァは嫌な気配を感じていた。
何か、これはまずい。
この子からは、殺気は感じない。もちろん、普通の女の子がそんなものを放つはずはないのだが、しかし、敵兵を掻き分けて、この場に立っているのだ。
アドート帝国サイドの人間である事は間違いなかった。
もの凄く嫌な予感がする。
ノヴァの額からは、疲労とは別の汗が垂れてくる。
「そ、そんな事できるわけないじゃないですか!ノヴァ様お一人で残るつもりなんでしょう!?」
「そうですわ!ノヴァ様が残るなら、私たちも一緒に・・」
「黙りなさい!私の言う事が聞けないと言うの!?」
「ねえ、何を喧嘩しているの?私を無視して」
「くっ、早く行きなさい!」
「それはできません!」
「ええ、そうですとも!」
ヴァルキュリア部隊の全員が退くどころか、ノヴァの前と出て、武器を構え出したのだ。
「ノヴァ様を置いて、退いたとあれば、我が家名の恥ですわ!」
「そうです。そんな事するぐらいなら、舌を噛み切って、死んだ方がマシと言うものです!」
「私も・・」
「ノヴァ様は我々がお守りします!」
「ケリー、リーナ、みんな・・・」
ヴァルキュリア部隊へと入隊する事を決め、ノヴァから離れず彼女を守ると決めた時から、隊員全員の心は一つだった。
「お姉ちゃんたち、おしゃべり終わった?」
「貴女、一つ聞きたいことがあるわ」
「えっ、なに?」
「貴女、いったい何者なの?」
「私?私は貴女たちの敵だよ。貴女たちを、私が殺すの。ね、プーちゃん」
ルシアはプーレガドーを高い高いと言った感じで掲げると、チラッと顔をずらしノヴァの顔を見る。
「・・・」
いけない。彼女の独特な空気に呑まれてはダメだ。
ノヴァは気を入れ直し、ルシアへと武器を構える。
もう迷わない。彼女はただの女の子ではない。危険な存在なのだ。
「そう、私と戦うの?いいよ!遊ぼ!」
「来るわよ!」
「「aye aye!」」
「ふふ、『プーレガドー』イグニッション、だよ」
彼女はそう言うと、今度はプーレガドーと呼ばれた人形が、光を放ち始める。しかし、それは明るい光ではなくどちらかと言うとそれは、ドス黒く暗い闇のような光だった。
そして、それは唐突に起こる。
プーレガドーと呼ばれた人形が徐々にだが大きくなっていくのがわかったのだ。
「で、でかく!?」
次第に最初の手に収まるサイズから、今では平均的な人の身長の3倍くらいになっていた。
「ふふ、プーちゃん。アレやろうか」
ルシアがそう言うと、プーレガドーの背中から大きな2本の腕が生えてきたのだ。
プーレガドーと呼ばれた人形は、最初の可愛らしい少女の姿をした状態からは、想像もできない醜い姿へと変貌を遂げていた。
「いけ、プーちゃん。リグア・シー・コム飛び出す舌
彼女がそう言うと、今度は生えてきた2本の腕から、鞭状の何かが何本も飛び出し、ノヴァたち目掛け襲い出したのだ。
「ハアアアアッ!」
ノヴァはその長い愛武器エモノ『ハルバート』を使い、自分たち目掛け飛んできた鞭のようなものを全て弾き返して見せた。
「ノ、ノヴァ様」
「はぁ、はぁ。全員、無事?」
「は、はい。何とか。ノヴァ様のお陰で無事です」
「へえ!凄いね、お姉ちゃん」
「・・貴女のそのオモチャ、もしかして、魔装具なの?」
「魔装具?違うよ、プーレガドーはね。私の友達、プーちゃんなの!」
「いえ、だってその力は、普通じゃない。魔装具でしかなし得ない力よ」
「違うってば!この子は私の友達なの!」
ルシアはああ言うが、ノヴァは先ほどの攻撃を見て確信していた。
アレは確実に魔装具であると。
だが、それとは別に疑問が浮かんでくる。
あんな小さな子が魔装具を?
あの小さな子にあれほどの魔力が宿っているものなのか?と。
魔装具は誰にでも簡単に操れるものではない。
常人より遥かに多い魔力量、繊細な魔力操作技術、そしてこれが一番重要なのだが、魔装具への適合性が高くなくては魔装具はうんともすんとも動かないのだ。
それが、齢10歳もいかないだろう子が魔装具を自在に操っている。
こんな事が現実におころうとは。
「ノヴァ様」
「ええ、かなりやっかない子に、私たちは見付かってしまったようね」
「さあ、お姉ちゃんたち、私と遊ぼうよ!」




コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品