黄金の将《たった3人の軍団》

ごぼうチップス

第一章 5

「何でここにお前がいる?」
「何でって、付いてきたからに決まってるでしょ」
「あのー」
「答えになってねぇよ」
「別に、いいじゃない。あんた、細かい事を気にしすぎなのよ。そんなんじゃ、女の子にモテないわよ」
「あのー」
「何でお前にそこまで言われなきゃならないんだ。だいたい・・・」
「あのーーー!!」
「!?」
レムリは耳を塞ぎ、ノヴァは呆れ顔に変わる。
レムリが目を擦り、横をチラッと見ると、そこにはノヴァとは別の、可愛らしいお嬢さんが立っていた。
「えっ?」
「クロエ、いたの?」
「酷いですよ!お二人とも!ずーっと、隣にいたのに、無視するなんて!」
このクロエと呼ばれた女性は、クロエ・ウェリンソン(24歳)。
第三軍団副団長にして、精鋭部隊ヴァルキュリア部隊隊長を務める女性である。
「無視なんてしてないわ。そもそも、貴女がいるなんて気付いてなかったもの。ねえ?テグナント卿」
「あ、ああ」
「そんなー・・」
存在に気付かなかった?この俺が?
この子はいったい?
「そう言えば、あんたは初めてよね?」
「あ、あの。現在、第三軍団の副団長を務めさせて頂いている、クロエ・ウェリンソンです。よろしくお願いいたします。テグナント様」
そんなテンプレなご紹介が行われている中、ノヴァが密かにクスクスと笑っているのをレムリは見逃さなかった。
「おい、本当は気付いていただろ。ノヴァ」
「・・えっ?」
「気付いてただろって言ったんだ」
「・・いや、ああ、そ、そうね。ええ、気付いていたわよ。あ、あんたのリアクションがあまりにも面白いから、つい」
「あ、あのあの、すみませんでした。テグナント様」
「何で、謝る?」
「いえ、なんか驚かすようなかたちでご挨拶してしまって。私、そんなつもりなかったんです。だって、私・・本当はテグナント様の・・」
「「えっ?」」
おいおい、これはまさか。
こ、この子はいったい何を・・。
「私、テグナント様の大ファンなんです!」
「「えっ?」」
本当に本当にとクロエは付け加え、レムリの両手を自然と握ってきた。
「テグナント様、お会いできて光栄です!」
「あ、ああ。えっと・・ク、クロエ君だっけ?あの、ちょっと、ち、近いんだが」
「あああ!す、すみません!私ったら、つい!」
んっ?
レムリは何気にノヴァの方をチラッと見ると、なぜかムスっとした表情を浮かべる彼女がそこにいた。
「ノヴァ様ーーー」
そんなやり取りをしていると、遠くの方からなにやら大きな声を上げ、近付いてくる人物がいた。いや、一人だけではなかった。その後ろには10人、20人ほどの人影が見えたのだ。
「戻ったか」
ノヴァはそう言うと、その一団を迎える。
近付いてくるうちにわかったことがあった。その一団が全員、女性である事に。
「ノヴァ様、ご報告いたします。付近一帯をくまなく調べましたが、アドート兵の姿は見当たりませんでした。その代わり、複数の人骨を発見。また、魔獣が生息していると思われる洞穴も発見しました」
洞穴・・もしかして、スチームリザードの。
レムリが思案していると、ノヴァが声を掛けてくる。
「紹介するわ。この子たちは、私が去年創設した部隊、ヴァルキュリア部隊のメンバーよ。少数部隊だけど、私自身が鍛え上げた精鋭部隊なんだから、なめてかかると痛い目見るわよ」
「ヴァルキュリア部隊ねえ。それで、その精鋭部隊を連れて、お前さんは俺の跡をつけてきたわけか」
「なっ!?ひ、人聞きの悪い言い方はやめてよね。わ、私はただ、あんたがアドート軍に苦戦して、挙げ句にボコボコにされて、ぼろ雑巾のように殺されたら、一緒にダレル様のお話を聞いた私の目覚めが悪くなると思ったから、しょうがなく本当にしょうがなく、重い腰を上げてやったのよ!」
はあ、お素直に、ご心配だったと仰れればいいのに。
そう言えばわたくし、遠くからノヴァ様が、憂いに満ちた瞳で、テグナント様をお見送りされているお姿を、拝見いたしましたわ!
それ、本当なの?
はい、バッチリ、この瞳に焼き付けておりますわ!
ならやっぱり、ノヴァ様って。
キャーーーーー!!
「あ、あんたたち」
「・・・」
凄いな、やっぱ女子って。
レムリは変なところ感心を抱いていると、
「おほん、この子たちには、後でキツく言い聞かせておくとして、私たちもついくわよ。いい?」
「いいも何も」
「ダレル様の許可は取ってあるわ。あんただけじゃ、やはり不安だってね」
「はぁ、わかったよ。好きにすればいい。だが、アドート軍を発見した後は、俺の指示で動く。それでいいなら、後は何も言わねえよ」
「わかったわよ。みんなもそれでいい?」
「ノヴァ様の仰せのままに」
クロエがそう言うと、他の者たちもそれに続く。
「はあ~、こんな大所帯で行くつもり、なかったんだがな」
「何か言った?」
「何でもねえよ。それより、俺の荷物がまだあっちに残っているんだ。俺は取りに戻るからな」
「それならば、これでありましょうか?」
ヴァルキュリア部隊の複数名が、レムリの荷物を持って前に出てきた。
「・・・」
「ねっ?優秀でしょ?」
「・・ああ、そうだな。なら、直ぐに出発だ」
おオオー!
森を抜けるため、一同は西へ向かう。

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