黄金の将《たった3人の軍団》

ごぼうチップス

第一章 2

「本気か、本気なのじゃな?」
「何度も言わせんなよ。俺一人で行くって言ってんだ」
俺の本気を目で確認するように、ダレルの爺さんは鋭い眼光で俺を貫く。
「レムリ様、横から失礼しますが、いくらなんでも無謀過ぎます。たとえ、レムリ様でも何万と迫り来る敵軍をお一人で相手するのは、素手でダレル様に挑むくらい無謀としか言えません」
「それは、誉めとるのかのぉ?」
「もちろんです。ダレル様」
「・・・」
俺は席を立つと、こう言ってやる。
「俺を誰だと思ってる?俺がそう簡単に死ぬタマに見えるか?」
レムリが3人を睨むと、なぜかノヴァだけが睨み返してくる。
「何だよ?」
「別に、変なところで格好つけるのは相変わらずねっと、思っただけよ」
ノヴァはそう言うと、フンっとそっぽを向く。
こいつ。
「それでは、レムリ。アレ・・を使うと言うわけじゃな?」
「ああ、使う。敵は万の兵、対抗するには必要だ」
「レムリ様」
ネアはこちらを見上げ、真剣な表情で口を開く。
「必要な品は、エレクト様の所にあります。おそらく、整備は完了しているものかと」
エレクト?
ああ、そうか。
「ネアがやってくれていたのか」
「はい。常に万全にしておく。レムリ様がいつも仰っている事です」
「助かる」
ダレルは二人が会話を終えた事を確認した後に席を立ち、扉の前まで行く。
「ではこの件は、レムリに任せる事にする。ワシは王へとアドート軍の事を報告せねばならんゆえ、これで失礼するぞい」
ダレルはそう言うと、執務室を後にした。
「それで、本当にいいの?私の部隊も一応、秘密裏に動かせると思うけど」
ノヴァの部隊、ああ、ヴァルキュリア部隊の事か。
《ヴァルキュリア部隊》昨年創設された新設部隊で、ノヴァ自身が人選し、鍛え上げた女性だけの少数精鋭部隊である。
最もノヴァ軍団長の率いる軍団、第三軍団は女性のみだけで構成された軍団なのだが。
「不要だ」
「貴方の軍団、貴方一人だけじゃないでしょ・・・・・・・・・・・・・。それでも・・」
「しつこい奴だ。いいか、一人だけで動く事に意味があるんだ」
「どう言う事よ?」
「理解できないなら、これ以上喋るな」
「(怒)」
ノヴァはキィイイと擬音が聞こえてくるような表情と動きで、部屋を出ていこうとするレムリに怒りを露にする。
「ネア。俺はこのまま、エレクトの工房に向かう。お前はノルクの元にこの件を報告しに行ってくれ」
「了解しました」
そうして、レムリは部屋を出る。
「・・・」
「?」
ネアは首をかしげ、
「どうされましたか?」
「いえ、何でもないわ」
そうして、今度はノヴァが部屋を出ていった。
「・・ノヴァ様」



レムリは今、エレクトの武器工房の前に立っていた。
エレクト・マーベクス。王国にはいくつかの工房が存在していたが、その中でも王家認定された工房は第一級工房とされ、武器工房・家具工房・美術工房などの第一級工房は、この王国内でも数えるほどしか存在しなかった。
その一つがエレクト工房。少数精鋭の武器工房であり、第一級工房の中で唯一アレ・・を製造している武器工房である。
「邪魔するぞ。エレクト」
「・・・」
エレクト工房の中に入ると、数名の武器職人が作業しているのが見える。
「おい、エレクト。整備が終わったと聞いて、取りに来たんだが」
「・・・ああ、レムリの旦那」
「クラフトか。エレクトはどこにいる?」
「親方なら、奥にいますよ。ですが・・・」
「奥だな?」
「ええ、ですが、今は別件の注文で籠っていますからって、あの!」
レムリは最後までクラフトの言葉を聞かず、奥へと進んでいく。
そのまま制止を振り切り、エレクトの自室兼作業室にどかどかと入っていく。
「エレクト!」
レムリは声を張り、エレクトの名を呼んだ。
「・・・」
「おい、聞こえるか?エレクト!」
「・・・お前か。何だ?何の用だ?俺は今忙しいんだ」
「見たらわかる。だが、ブツの整備が終わったと聞いた。だから、取りに来たんだ」
「・・・そうか。それなら、そこにある。お前の魔装具、少しパーツにヒビが入っていたぞ。ただ、オーバーホールした際に新規パーツに交換しておいた。それ以外のパーツも新しい物に交換しておいた。今のソイツは魔力伝達率が以前の15%ほど上昇しているはずだ。後は伝達領域にムラがあった。その部分の修正をしておいた」
「そうか。助かった」
「・・お前、これから出るのか?」
「ああ、少しな」
「あまり、無理をするな」
「珍しいな。お前さんが、人の心配なんて」
「お前の心配などしていない。魔装具に無茶をさせるなと言っている」
「ははっ、何だ。そう言う事か。お前らしいな」
「・・・魔装具は確かに兵器、武器。だが、俺にとっては、芸術だ。だから、無茶な使い方はしてほしくないだけだ」
「そうかい、わかったよ。心配するな。無理やりこいつの力を引き出すような真似はしないさ」
「理解していればいい。なら、もう行ってくれ。俺は忙しいと言っただろ」
「へいへい、わかりました。俺はこれで退散するよ」
レムリは、じゃあなとだけエレクトに挨拶し、工房を後にした。









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