うちよそ村

とある学園の教師

アレイシアと8

「………………」
「なんだ?」
通学路。口を開き、唖然とするクローヴェル。
「な」
目の前には、居るはずのない少女。
「なんでお前が………」
涙が、ボロボロと出てくる。
嘘だ、嘘だと思いながら、この現実を受け止める。


彼女が居るはずのない世界。
物理的に有り得ない。
それなのに、何故か居る。


「いやー重畳。まさか、こんな場所ところで貴公に出会えるとは。しかし、何故泣いている?」
少女が肩をバンバンと叩く。
「なんだか、懐かしくて………つい………」
「あははは、そうかそうか」
うんうん、と満足気に頷く。
「あぁクソ、久しぶりに泣き顔見られた」
「ふんふん。面白いぞ」
「チキショウ」
目を逸らし、涙を拭う。
「久しぶりだな、アレイシア」
「あぁ、久しぶり」
アレイシア、と呼ばれた少女が微笑んで答える。
ああもう、今日はなんて吉日なんだ。







「ここは地球、日本。だが、お前の居た世界とは違う」
「へー」
「時間的にはお前が死ぬ前。だから、肉体があるはずだ」
「確かにな、体が重い」
「だろ」
「太ったわけじゃないぞ?」
「訊いてない」
「ちぇ」
舌打ち。
「ふん」
鼻で笑う。


暫く歩く。
「……………あっつ」
「夏だしなぁ」
「ここに来る前は冬だったのに」
「マジ?ズレがあるのは知ってたけど、そこまでだったか」
「多分、少し時間が歪められてる」
「ふーん」
「その顔、心当たりがあるな?」
「ないね。潔白だ」
「嘘をつけ。私に下らない冗談が通じるとでも?」
「存在が冗談みたいな奴だしな」
クローヴェルは意地悪く笑った。
「へぇ………」
アレイシアは不機嫌そうに目を細めると、彼の背後からのしかかる。
結果的におんぶになった。
「重っ」
「コロス」
「うわぁぁぁ」
わざとらしく前傾になって倒れそうになるが、背負い投げの形をとり、そのまま樽を抱えるように肩で担いだ。
スカートがめくれそうになっているが、気にしない。
そこに、
「おはようタカシ、今日は暑い………ね…………」
アジアンタがやってきた。
「そんな………侍らせてもいいとは言ったけどまさか誘拐するだなんて…………」
よよよ、と徐に涙を拭う仕草をする。
「ち、違う!こいつは昔からの知り合いで………」
「え?誰?知らない人にケツ見られてるの?少しこ、こうふ…………」
言い切る前に降ろす。
「空気を味わいたかった…………」
「言い訳は聞かねぇよ?まぁいいや………んで、おはようさん。確かに暑いな」
「うーん、事案だったことを棚に上げて話を進めようとする肝っ玉の座りよう、嫌いじゃないよ」
「そうかそうか。ははは」
「初めまして、アレイシアちゃん。名前だけは聞いてたよ」
「は?なんで」
喧嘩腰だが、クローヴェルには理由がわからないし、何故知っているのかもわからない。
「うふふ………秘密」
「まあ良い………正直、獣臭くて鼻をつまみたいし目が腐るから見たくないぐらいだが…………」
「はぁ?コイツは人間だぞ」
「違うね、人外だ。私の耳がそう言っている」
「はいはいそうですか」
「ほら、行こう。タカシ、遅れちゃうよ」
「ちと待て」
彼は携帯を取り出して、2人の元から離れた。



「で、どうして私の名前を知っている」
不機嫌そうに尋ねた。
「知り合いから聞いたんだよ。貴女をよく知る子から、ね」
「誰だ………2人くらい居るんだが………」
「そこまでは言えないなー。約束だし」
「言え」
「言わない」
「はぁ…………」
「うふふふ」
「苦手なタイプだ」
「そうね。貴女には、私がそう見えるのかも」



「ふぅ…………忙しいぜ」
クローヴェルが戻ってくる。
「仲良くしてたか?」
引き攣った笑みで聞く。
「ああ貴公、この世界ではタカシって呼ばれてるんだな。私はなんて呼ぼうか?ターさん?」
「話を逸らすな。どうなんだ」
「まぁまぁかなー」
アジアンタが割り込む。
「なにぃ?」
アレイシアが青筋を立てて目を見開く。
「落ち着け…………取り敢えず、アレイシアお前も来いよ」
「え?良いのか?邪魔じゃないか?」
「右も左も分からないのに跳ね返す訳にもいかんしな。暫くこっちに居てもいいじゃん?」
「なんて説明するんだ………」
「なに。留学生だって言えばヨユーよ」
「リューガクセイ?」
知らない単語に困惑する。
「まぁ、俺に任せておけよ」
「やっぱりタカシは優しいねぇ」
アジアンタが揶揄う。
「いや………アイツとの約束だし………」
『アイツ?』
2人して首を傾ぐ。
「なんでもない」
「そっか」
「そうか」
「さぁ、行こうぜ」
そう言って、彼は学校に向かって駆け出した。








食堂で座る3人。
「このカラアゲ?っていうの、中々に美味いな………」
「そりゃ良かったな」
「でも野菜は臭くて食えん………」
「水道水の匂いがなー」
「だよねぇ………」
「まぁ、私は食うけどな!」
そう言いながら器のサラダを掻き込む。
「ぷふ………あは……あははははは!」
アジアンタが吹いた。
「む。何故笑う」
「ふん、阿呆みたいなことしてるからだろ」
「そうなのか?」
確認するようにアジアンタを見る。
「違うよ。ただ、思ってたよりも面白い人だなーって」
「人じゃないけどな」
クローヴェルが口を挟む。
「うるへー」
箸を咥えて、ここぞとばかりにつっこむ。
「まぁ良いんでね。こういうのも悪くないべ」
「急に訛らないでよ………」
「そうだなぁ………殺伐とした日常だったしこういうのも良いな」
「そうだ!放課後カフェ行こうよ!この間できたのがあるんだ」
「おっ!良いな。アレイシアも行こうぜ」
「うん?私もいいのか」
「勿論。だってお前も_____」


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