うちよそ村

とある学園の教師

アストラエアと

「よう、アス」
「あれ、クロさんじゃない」
排他世界に遊びに来たクローヴェルが、とある少女に話しかける。
「そうだな、久しぶりに顔合わせたのに覚えててくれてお兄さん嬉しいよ」
「覚えてるよ、だってノア姉が嬉嬉として話してるもん」
ニヤニヤしながら答える。
「あいつの好奇心はどちらかと言うと生態観察に近いんだけどな…………まぁ、話題に出るだけ有難い話か………」
「クロさんは、ノア姉のことはどう思ってるの?」
「妹かなぁ…………そこまで重きに置いてる訳でも無いけど、興味はある」
「ふーん?じゃあ、私のお兄さんになる訳だ」
「そうだな、そう思っても良いんじゃないか」
軽く流す。口車に乗せられたら終わりだ。
「私は嫌だけどね」
「なんで言ったんだよ」
「揶揄おうと思って」
「乗らなくて良かった……」
「はぁぁぁ…………クロさんに好きな人がいなかったらなぁ………」
「それだったらどうするんだ?」
「面白そうなのが見れそうだなって意味」
「そうか」
「ねえねえ」
「なんだよ」
「アレイシアとは上手くやってるの?」
「どういう意味を含んでいるのかは敢えて訊かないが、仲良くやってるよ」
「何を妄想してるの?変態かな?」
「うわ、誘導だ誘導。やめろ、そういうの」
「へへっ、やめないよ。面白いもん」
「そうか」
「でもクロさんは揶揄い甲斐が無いなぁ、大人過ぎる」
「そうか?正直面倒なんだが…………」
「ひっど。私は好きだよ?」
「そういうところがだよ」
「けっ」
「うわ」
悪態を吐く彼女に引く。
「本当に弄り甲斐が無いなぁ………噛んでも味のしないスルメみたい」
「スルメという概念を知っているのが疑問だがそれはどうでもいいとして…………それは、自覚している。遊びはあるが、そこまでの男であることはわかってるさ」
「うーん?私にはそこが面白く感じるんだよね。貴方に足りないのは、情緒と関心だよ」
「それも知ってる…………毒吐くの好きだねぇ」
「吐く言葉が毒なだけだよ」
「それを毒舌っていうんだよ」
「あっそう」
「この…………」
クローヴェルが拳を握りしめる。
見えない奴だ、と溜息も吐く。
「取り敢えず、アレイシアを宜しくね」
「は?」
「あの子は、自由だけど不憫な子だから………友達も数人しか居ないし、あまり良い過去を持たないからね。クロさんにしか頼めないんだ」
「そうかねぇ…………戦いに明け暮れていたとはいえ、少なくとも恵まれてたとは思うよ」
「そこは私達の主観だからね。あの子がどう思ってるかはわからない………」
「まぁ、そこまで言われなくてもわかってるつもりだよ」
「うん、頼んだよ」
「おう」
そう言って、お互いの大小の拳をこつんとぶつけた。

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