うちよそ村

とある学園の教師

ヨルカと

「ヨールカ君、はーなしまっしょ」
「ふむ、話すことは無いと思うが……」
顔を近ずけるアジアンタにヨルカがのそりと頭を上げる。
「そうかなぁ………私はあるんだけど」
「例えば?」
「アレちゃんとクローのこと!」
「ははぁ、惚気と嫉妬か」
「ふふん、当たり」
「胸を張ることでも無いが…………」
「でも、好きな人が他人と話してるともやもやするよね。その愚痴」
「ふむ……そうか?そうだな」
「アレちゃんとは友達なんでしょ?」
「昔からの悪友だ。腐れ縁よ」
「ふーん?」
「キミは、どうなんだ。彼とは長いのか」
「ううん。ずっと前から知ってるけど、17年しか一緒に居れてないんだ」
「ふむ………難儀なものだな」
「ヨルカ君と比べたらそうでもないよ。悲劇なんて味わってない、ただのヒロインだもの」
「ははは、謙遜するな。彼とようやく会えた、それは幸福だろう」
 「うん、でも………」
アジアンタは俯く。
「アレちゃんと仲良さそうにしてるのを見ると、私は要らないのかなぁって」
「そうか」 
「彼は、ずっと私だけを見ていると言ってくれた。でも、心配なんだ」
「そうか」
「もう、同じ反応しないで」 
コツン、とアジアンタは拳をヨルカの頭にぶつける。
「いたっ。でも、そんなもんだと思う。ボクも生まれ変わった妻が、実験に朽ちたのを知った時は激情に浸った」
「それを教えてくれたのは誰?」
「君の好きな人だよ」
「遠回しな言い方やめてよ………」
「はは、こういう性分でな」
「まぁ良いんだよ。私は、彼を思う気持ちは変わらないし」
「ボクも変わらないよ」
「友人が略奪しようとしているのはいただけないが、君の反応を見ている分には面白い」
「クズ!ヨルクズ!」
「ふはは、その呼び名も良いな」
「ドMヨルクズ!」
「どうでも良い」
「くたばっちゃえ!」
「もうくたばってるし、花の乙女がそんな罵倒をしちゃ駄目だよ」
「うるさい!君もクローに攻略されちゃうの!わかってるんだからね!」
「は?ボクには心に決めた人が居るんだぞ?そんな訳ないだろう」
「あの人、男も堕とす優男だよ」
「それでも、だ。生前、彼と深く関わったがそんなことは無かった」
「むぅ………」
「彼に魅力を感じないと言っても怒るのだね。面倒くさい子だ」
「めんどくさくないもん!」
「そういう所だよ」
「うわん」
「嘘泣きは効かんよ」
「クローに負けないクズっぷりだね」
「褒め言葉として受け取ろう」
「うぐぅ…………」
涙目になる。
「君の気持ちは真っ直ぐだ。彼に届いているのも間違いない。だが、こうしてボクと話しているのを彼が知ったらどう思うかな?」
「嫉妬してくれる」
「わお、歪み切ってるね」
「良いもん、私を見てくれるなら、何でもする」
「生前から性根が腐っているようだね」
「うん。彼はシスコンだったし、私を見てくれてもそこまで熱中してなかったし」
「相思相愛とまでは行かなかったわけだ」
「良いよね、君は」
「そうだね。結ばれた点では、キミよりも報われている」
「私も、何時か救われるかな」
「それまで見守ろうじゃないか。彼らの行く末を」
「うん。そうだね」
星の海。揺蕩う少年少女。彼らの進む先には、常に絶望が寄り添う。

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