L a p i s ~ 世界樹の精霊《スピリット・オブ・マナ》 ~

神の味噌汁

『コンビネーションアタック』



 ラピスの魔法による猛攻でも無傷だったリューズ。
 こちらの番だと言わんばかりに、リューズは攻撃に転じる。
 空間ごと切り裂く魔法や、押しつぶす魔法。時には、手足の補助翼を稼働させ、2枚を合わせることで、剣の様な武器として装備し、襲い掛かる。


 リューズの攻撃魔法は、素直な射撃系の魔法でないため、盾のような魔法や武具ではガードが出来ない。全身を包む障壁でも、空間が潰されれば、それごとつぶされてしまう。
 出来る対抗手段は、反する効果で相殺するか、純粋に指定された座標から居なくなるしかない。だが、生半可な回避行動ではすぐに対応されてしまう。生身の回避では許されない――。
「『瞬間移動テレポート』」
 だから、瞬間的な移動による回避になる。


 ラピスも魔法で応酬を試みるが、自動防御や転移で回避されて、効果は期待できない。 
 そんな攻防の両者は、瞬間移動や高速移動を交え、目まぐるしく動いている。


「強いな。森の魔女よ。我とここまで戦いぬけるとはな。だが――」
 リューズの眼が細められる。そこには不満のようなものが滲んでいた。
「――貴様、まだ力を隠しているな!?」
 リューズは十指の封環に気づいているのか、それとも――魔法以外の手段のことを言っているのか。
 ともかく、ラピスにとって封環をはずすことは敗北と同義だ。
 それは易々と許されない。
 そもそも、リューズに関しては、


 命中させることが困難なこと、
 命中しても障壁で効果がかなり減らされる、あるいは無効にされること、
 たとえダメージや、状態異常が当たっても、時間を巻きどす回復によって瞬時に全快すること。


 問題はこの3つなのだ。
 これは魔力以外で解決できるはずのこと。 
 だが魔法だけでは解決が難しい。
 埒が明かないのだ。
 やはり、リューズにたとえ苦労して傷を負わせても、1秒後には完全回復されてしまう。


「そうね。仕方ないわ、私も一つ、約束を破らせてもらおうかしら」


 つまり戦い方を変えるほかはない。


 その言葉とともに、
「『全能能力強化フルトランス』!」


 筋力/攻撃力
 集中力
 自己治癒力
 幸運
 持久力/活動効率
 敏捷性/速度
 精神耐性/魔法防御
 神経伝達速度/反応速度
 視覚能力/千里眼付与
 状態異常耐性
 生命力/生存率
 神秘力/魔法威力
 第六感
 痛耐性
 知力/経験・閃き
 距離感


 
 ただ一つの魔法で、全属性の加護を付与し、あらゆる能力が向上する。
 本来よりも3種項目が足りないのは、土の魔石、サートゥルニーの居ない分だ。 


「ほう。奥の手というわけか、面白い!」
 再び開始される魔法合戦。
 魔法のみによる攻防。
 魔力も上昇し、放つ魔弾も段違いに強力になっている。
 それどころか、全能力を強化したラピスは、確かにそれまでと動きが違っていた。


 ラピスはリューズの魔法に対応しつつ、これ見よがしにあらゆる属性エレメントの魔法を乱発する。
 そうして、作り上げたリューズの隙を狙う。 
「『天下プリズミッック七閃フォース』!」


  


「ふっ、同じ轍は踏まん!」
 だが、命中する瞬間に、リューズは視界から消え失せていた。


 それこそが、真の狙い。


 それに強化された第六感が、経験が、集中力が、リューズの意図に対し瞬時に反応する。


付与エンチャント術式解体ディスペル
付与エンチャント時間停止ストップタイム


 ラピスは二種類の効果を瞬時に自身に付与し、後方へ振り返ると同時に、魔力を存分に込めた蹴りを放った。
 本来なら間に合わないタイミング。
 しかし、今のラピスは、反応速度も、敏捷性も、段違いだ。
 それは、瞬間移動で後方から不意打ちを狙って来たリューズに突き刺さる。




「ぐ、あッ!?」


 術式解体ディスペルの効果で、自動防御を根こそぎ貫通し、その身に打撃をとどかせる。


「な、ッ!?」 
 強化の魔法で、筋力も魔力も向上している今、ただの蹴りと言えども、威力は尋常ではない。
 リューズの身体は上空に吹き飛ばされる。何が起こったのか、理解が出来ぬという表情のまま。


 そして、リューズの時間が1秒だけ、時間停止ストップタイムの効果で停止する。
 時間と空間を司る精霊に、時間の魔法を使っても、本来ならば効果はない。しかし、白と黒の魔石をフル稼働させ、今ある分の魔力を全力で籠めれば、ほんの一瞬だけ止めることができる。
 その一瞬さえあれば、打撃を加えるたびに傷の巻き戻りをリワインド・ヒールの発動を遅らせることができる。
 だから、そこを、武術と魔法の連続コンビネーションで畳みかける!


 ラピスは、『魔法使い』として相手をする、という言葉、その約束を破ったのだ。


「『瞬間移動テレポート


 蹴り上げた体に、瞬間移動で追いつき、
 拳の連打、魔石による直接の物理攻撃(六連打)、を順に叩き込んだのち、


六重シクスタプル・鏡面ディレクション
 リューズを囲うように、全方位に、実態を持つ分身を置いて。
 手数にして6倍、方位にして6方向から打撃と魔法を浴びせかける。


 さらに最後に、蹴りで地上に向けて叩き落とした。




 その上空で、分身を集結させ、一人に戻りつつ、両の掌に魔力を集中させ、
「『反逆アースリー・デイズ・幻想ブレイカー』!」
 落下するリューズの身体に向けて解き放つ。
 地面に激突する身体に、極太の閃光が突き刺さり、砂地の地形をえぐり取っていく。
 それは深く深く、惑星の深部までに達した。
 今持てる最大出力の魔法。魔奥義と呼んでも差し支えない、乱暴な魔法だ。




 砂塵が舞い、砂嵐のように視界を染め上げる。
 それが晴れた頃、砂漠に大穴が開いていた。












 見物しているメンバーのすべてが、それを惚けたように見ていた。
「まさか、やったのか!?」
 クヴェインが、ずいぶんと遅れて、恐る恐るというかんじで言葉を発する。


 だが待ってほしい。
 それは言ってはいけないセリフだ。



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