L a p i s ~ 世界樹の精霊《スピリット・オブ・マナ》 ~

神の味噌汁

『Saturni』



「メアは、アリシャのことを頼んだわよ」
「お任せください、グランドマスター」
「必要なら、A等級までの武具を、倉庫から好きに持っていっていいわ」 
「それでしたらぜひ、靴底が鉄製の具足を。あと……武器は何か適当にお借りします」 
 どうぞどうぞ、お好きに、という感じのラピス。
「でも、起動したばかりのメアだけだと、少し不安ね」 
 何を言いますか、私一人で十分です。とメアはムッっとした様子で。
 それでしたら私が。とメルクリエは期待の眼差しだ。


 メアだけでは不安なのも事実だが、しかし、ラピスには別の思惑がある。
 もしかして、他の七分封界アルカンシェルも顕現するのではないかという、期待だ。
 誰にするか、ラピスは少し悩んで。
「サートゥルニー」
 紫色の宝石を呼び出す。
 土と重を司る魔石だ。


 けれどすぐに姿は変化しない。
 今はまだ、正八面体のままラピスの回りに浮かんでいる。


 つまり、ラピスの武具として振舞っているということだ。
 ラピスの記憶はある程度、魔石に移っているが、メルクリエのように、顕現した状態での記憶はラピスに還元されない。
 それがどういうことかと言うと――。


 ラピスは、アリシャにメルクリエを託した時のように、自分の一部として機能する状態――
武装モードを『オフ』にする。


 そうすることで、一時的にラピスは魔石を自由に呼び出せない状態になる。
 魔石が独立するのだ。




「あなたに、アリシャの護衛を頼むわ」
 そう、ラピスは紫の魔石に命じた。


 すると。


 周囲に、瞬間的に、砂塵と力場が発生する。
 そうして、それは現れた。


 ラピスは、満足げな表情で。
 メルクリエは、神妙な面持ちで。
 アリシャとメアは、驚きをもって。


 その少女の出現を、歓迎する。


 現れたのは、チョコレート色のアーマードレスに、ワインレッドのチェインショールという装備に、紫色の三つ編みお下げの少女。
 身長はラピスよりもやや低いかもしれない。


 少女はラピスの前に膝をつき、


 ――固く、生真面目そうな表情に、ひと際幼い声が言う。
七分封界アルカンシェルがひとり、サートゥルニー、ここに顕現致しました」
 膝をついたまま。 
 サートゥルニーの、柑子色の瞳が、アリシャに向けられる。
 護衛の対象を確認し、再びラピスを見て、堅苦しい感じの身振りを加え、
「アリシャ様の護衛。確かに、承ります」
 そう言ったサートゥルニーは、忠実な臣下を思わせる。


 立ち上がると、やはりラピスよりも背は低い。


 そうして、三つ編みの少女は、部屋の中を見渡し、アリシャ、メア、と見て、メルクリエを見る。
「主様。メルクリエと話す機会をお許しいただけますか」
 サートゥルニーはわざわざラピスに許可を求めた。
 ラピスの頷きを待ってから、メルクリエに近寄る。
「……初めてお会いしますね。メルクリエ様」
 え、ええ。と返事が曖昧で、メルクリエは少し緊張気味だ。
「初めまして。と言うのもおかしい気もしますけれど。これからは、今までと違う形で、長い付き合いになりますわね、サートゥルニー」
 そして二人は微笑み合う。その姿は、往年の親友のようだ。
「よろしければ、私のことは、気軽にメルと呼んでほしいですわ」
「では、私はサーティとお呼びください」 
 お互いに、頷き、解り合う。分かりましたわ。了解しました。と。




 そんな挨拶を終えた二人を、ラピスが促す。
「早速だけど、私は、吸血鬼のところに向かうわ。あなたもついてきなさい、メルクリエ」 
 それに、メルクリエが了解する。


「こっちは買い出しですね。今度こそ、食材を買ってきます。ノースルーリエでいいかな」
 魔の森から最寄りの都市はノースルーリエになる。


 しかし、
「いえ。砦まで『空間コネクティング接続・ゲート』で送るわ。買い出しのついでに、王都の様子や、戦争の情報を集めてきて頂戴」


 ラピスの提案に、なるほど。とアリシャは納得する。
 人間たちには。
 特に、戦争を起こす人間たちには、後始末が不十分なせいで、魔物たちが迷惑を被っているのだということを理解してもらわねばならない。そうしなければ、今後、人間同士の比ではない大戦争に発展しかねない。
 それを防ぐためには、もう少し情報が必要だ。


 そうして、魔の森の少女たちは動き始めた。
 ラピスとメルクリエは吸血鬼の洋館に。
 アリシャ、メア、サートゥルニーは買い出しのついでに、王都の情報収集に。



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