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食用キノコによる、地味な世界征服

草笛あたる

父親



 ノブナガは気付いた。

 ごく自然に、ブタ人間の言葉が理解できる事実に。
 分からなかったブタ言語だが、もしかすると、ジョロキア成分を獲得したように、ブタに食われたとき言語能力も獲得したのだろうか。

 
 ◆
 

 人間の父親が帰宅してきた。
 畳の血痕を見て「おおっ!」と驚き、ミキが持つ動く物体に腰を抜かした。
 バケモノでも見たかのかというような慄いた形相を、向けた先はノブナガ。

「な、なんだそれっ!!」

「キノコちゃん」

「きっ、……きのこぉ?」

 父の狼狽ぶりを気にもせず、次女は、ニコニコしながらムニムニ動くキノコに頬ずりしている。

「なんと、奇怪な……」

「だ、大丈夫だよ、お父さん!」

 長女が今までの経緯を説明しいくうちに、父は落ち着きを取り戻した。
 
 父の名はケイジ。
 35年生きてきたが、動くキノコは見たことも聞いた事もないと言う。

 そして、
 ここら一帯はゴゾンゴ(さっきのブタ)が所有する人間ばかり25人の奴隷集落。
 父親ケイジはゴゾンゴの村にゆき、農作業をするのが日課らしい。 
 奴隷集落は、ここ以外にもたくさんあり、どれもブタ人間が管理している。 
 ブタにとって、人間は労働力になり、食料にもなり、夜の玩具にもなる。
 
 酷い世界だ。
 映画『猿の惑星』みたいに、この世界はブタが支配者『豚の惑星』。
 ノブナガは思った。
 
 ミキがキノコをつんつんする。
 持ち上げて香りを楽しんだり、舐めたり、オモチャだった。
 
「ミキ。キノコを畳におきなさい」

「え? ……はい」

 ミキが残念そうにキノコを下ろすと、父親が小さなキノコに向き直った。 

「お礼を言わせて貰う。本当にありがとう」

 父親が大きな頭を下げた。
 頭を下げてもキノコより大きい。

 ノブナガは《ひらがな50音字》の上を移動して返事をする。

「《気にしないでください》だって!」

 名前もこれで伝える。
 便利だ。

 ミキはノブナガを気に入ったようで、父親と会話が終わるとまた持ち上げてペロペロした。
 
「ミキっ! ノブナガさんが嫌がるから止めなさい」

「う、うん……止まらないの」

「ケンジンノコは媚薬にもなる。ミキは惚れたかな。ふっふっふ」

 囲炉裏の鍋には、毒々しいキノコが煮込まれていた。

「これねー。ゴゾンゴ食べないのよー。美味しいのにね~」

 聞いてもないのにミキが説明した。

「見た目は悪いが味は良い。豚間とんげんが食べないのは害だからだ」
 
 豚間とんげん=ブタ人間。
 なるほど。

「キノコちゃんも食べる~?」

 ミキが箸でつまんで近づける。

 無理だって! 
 口が無いんだけど。 

 避けようとしたノブナガだったが、思いがけない使い道を思いついた。
 このキノコがブタ人間に有害なら、自分が獲得して身体成分に加えれば、ブタ人間に食われたときに道連れにできると。
 
 なにより、ブタに毒なのが良い。
 取込んでおいて損はない。
 ノブナガは根を細くして、煮込んだキノコに何度も突き刺した。
 そうしながら、ステータス表の獲得成分の項目を注目していると、ふっ、と文字が追加された。

 ――――――――――――――

 名称『ノブナガ』

 レベル2
 
 KP 1120

 獲得成分
 ジョロキア 白菜 塩 トレストゲン

 ――――――――――――――
 
 たぶん、この『トレストゲン』がブタ野郎にとっての毒だ。
 他にも余計な成分を獲得したが、損はないだろう。
 
「あ~ん。キノコちゃんがプツプツやってる~っ。かわいい!」

 ノブナガが動くたびミキが喜んだ。
 動くお人形で遊ぶ感覚だろう。

「お姉ちゃんに貸しなさい」

「やーだもん!」



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