ドタバタ異世界ライフ~兄よ、ストレス解消に暴れる妹のケツを叩け~

にしまつ

 序章 第六天魔の囁きに

 街中でたまに見かける古い建物。旧武家屋敷とか色々言われる
  そんな家が、俺の住む家である。

 中々の家柄であり、遡れば、かの有名な織田の信長さんに深く関わり
  のあるお家らしい。だが、今のご時世、それは何の意味もなく。

 ついでに言うなら家名も代わりに変わって、血統も何もあったものじゃない。
  
 それはそれとして、
  俺と妹は二人して古い物置というか蔵の掃除をさせられている。

  「うわー…めんどくせぇ」
  「埃だらけじゃない…」

 何か古い槍やら刀やら、本やら陶器やら、
  鑑定に出せばそれなりに値がつきそうな骨董品がゴロゴロと。

  「兄貴知ってた? 刀やら槍より弓のが強かったって」
  「ん~? ああ、まぁ距離詰められなければ…だろ。
    それに火縄銃もあったろうし、弓も微妙じゃね?」
  「そいえば、そだねぇ」

 見たところ、蔵の中に火縄銃は無く、近接武器のみである。
  そんな中の一本、とりわけ古ぼけた刀が目に付いた。

  「何か一本だけ奉られている感じしね?」
  「あ、ほんとだー。…何て読むのこれ」
  「ぶたにがわきりあつ? 意味わかんね…」

 部谷川切圧と書かれ、神棚に奉られていた一本の刀。
  それも埃を取り払おうと、妹が手に取った。

  「んや? 何か変じゃない?」
  「おいおい、何か…何だ!?」

 二人して幻覚でも見ているのか、視界が歪み、そのまま停止する。

 歪んだ景色が灰色一色に留まり、俺達二人はそこで戸惑う。
  此処は何処? 何が起こった? 互いに距離を近づけ警戒する中、
  そこにいる筈の無い、誰かの野太い声が聞こえる。

  「久方ぶりに、人がそれを手に持つかと思えば、
    なんとも若い者達よな」
  「だ…誰だ?」
  「我が名は他化自在天、どれ、汝等が願いでも聞いてやろうか」

 他化自在天? 何か聞いた事ある気がするが…。

  「はいはーい! どこでもイイから暴れたいでーす!
    最近ストレス溜まってるんだよネー」
  「ちょおま!?」

 すると更に空間が歪みも一種のワームホールのようなものが生み出され、
  俺達はそれに成す術無く飲み込まれるのだが…。
 もしかして、妹の変な願いが聞き届けられて?

  「良かろう。今の世では少々不便故、異世界にて存分に力に溺れるが良い」
  「お~太っ腹~!」
  「いやおま!! ちょっとまてぇぇぇぇええっ!!」

 物事に動じない妹の胆力もさることながら、こんなひでぇ願い聞き届けるコイツは。
  渦に飲み込まれる最中、思い出す。

 他化自在天。人間の願いを叶えてくれる神だったような。
  それもアカン方向に…なんだっけ。

 然し時既に遅く、俺達は手にした刀ごし、何処とも知れない異世界へと。

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