今日から俺は四天王!

ノベルバユーザー358273

1章11話 動き出す国と民













「実は、僕の親友が魔王軍に囚われている可能性がある」


「へえ、勇者様の親友ねぇ、そいつは大変だな。」


 黒崎海斗の親友、朝田悠仁は今サンライトの勇者をしている。幼少の頃から鍛錬を重ねた彼にとっては、機械魔兵の撃破などを召喚されてからすぐにこなし市民からの絶大な支持を受けていた。召喚から半年が経った頃、自分以外にもう一人、機械魔兵から市民を守る勇者がいるという噂を聞いた。だが、その勇者というのはどうやら敵国、アズフィルアにいるとの事。そしてそれは、黒崎海斗が間違えて召喚された先と一致しているのだ。




「ああ、あいつの事だ。あいつが勇者になっているのは想像に難くないが、何か酷い仕打ちをされてないだろうか。魔王軍は悪い噂が絶えないからな。...なあヴァン、僕が魔王軍に行き、彼に会いたいと言ったらどうなる?」


「あんたの一言で国が動くだろうな。それに、偉大なる勇者様の親友、しかもそれもまた、勇者様ときたわけだ。」


悠仁が今話しかけている赤い天パの男の名は『ヴァン・フレイビア』だ。サンライトの中で一番悠仁と親しく、剣の腕もサンライトの中で一、二を争う。


「なら、今会うわけにはいかないな。四天王の奴らや魔王を討つには覚悟がいるだろう。...くそ、僕の所為だ。あいつがこの世界に来る必要なんてなかったのに...」


「焦ってるな勇者様。...覚悟なら、あんたがきた時点で国民はしてるぜ。『勇者様がこの国に来た。戦争の勝利は我らサンライトのものだ。』ってね。口を揃えてみんな言う。」


「そうか...なら今年中には動くだろうな、この国は。」


「ああ、もう攻める理由できちゃったしな。『親友サマ』の為に殺し合いだ。」


「...二週間後だ。目的は我が親友、黒崎海斗の保護だ」


「保護、ね。名目に過ぎんだろうな。...王様に伝えてくるよ、『戦争が終わります』ってな。」














一方アズフィルア。


「お、おい。お前ブロー...?」


「どうしたカイト?何か私に付いてるか?」


「強いて言うなら、胸が。」


「デリカシーもクソもないな。」


「あら?カイトもブローの顔観れるようになったの?」


「ブラッディはずっと見えてたのか?」


「アタシは、ブローが変装能力を使う前から知ってるからずっと見えてるわ!」


「素顔を見られたら、能力が無効化されるんだ。古くからの馴染みには通用しないのさ。この技はね。」


「にしても、なんで女に変装?なんか、違和感があるっつーか...」


「照れるか?」


「な訳!」


「なら目を見て話せよ」


「そんなニヤニヤした顔、見る気もない!」


「ほほ、今日も元気ですな。」


「キンライさん!偵察は終わったの?」


「ええ。少し、重要な話を。...どうやらサンライトは本格的にこちらに攻めに来るそうです。」


「なっ...!」


「動き出したか。」


「ついに、ね。」


「二週間後、こちらに。トド国は相変わらず戦争を放棄するよう呼びかけてはいますが...」


「...トド国を通らないとこっちに来れないんだろ?空路は禁止。海路も制限されてんのに、一体どうやって?」


「メカトロニカ国が海路の制限を解除しました。どうやら戦争の終結を望んでいるのは我々だけではないようですね。」


「ふん、やっぱりあの国は信用できないな。...私は部隊のみんなに報告して来る。ブラッディとキンライも伝えるだろう?」


「ええ勿論。」


「な、なあ。本当に戦争が始まっちゃうのか?なんで、こんな急に...」


「カイト様。...サンライト国は貴方を拉致するつもりです。少し、辛い言い方をしますが、今回の目的はどうやら貴方のようです。」


「んな馬鹿な...!なんの目的があってそんな事.........!」
(まさか、ユージン!?)


「目的は分かりませんが必ずお守りします。ご安心ください。」


「待ってくれって!俺も戦うよ!目的は俺なんだろ?...多分、俺の命までは取ろうとしない筈、前線に俺がたてば相手もやりづらいんじゃ...」






「人を殺せるか?カイト。」


「え?」
「命を奪う覚悟はあるか?今までお前は機械魔兵という、魔力の塊を相手にしてきた。というか、私達がそうさせてきた。だが、お前はまだ一人も命を奪ってないだろう?お前は人を殺める覚悟はあるのか?」


「ひ、人を殺さなくたって、何かしら解決する方法はあるだろ?」


「カイト。この戦争は現魔王、28代目様が先代サンライト王の殺害の疑いから始まってるのを知ってる?魔王様も何故かこれを否定してないの。言ってしまえば、アタシ達が始めた戦争よ。それをアタシ達が『人を殺すのはやめましょう』なんて言えるかしらね?」


「そんなの開き直ってるだけだ!」


「じゃあ、どうしろって?おとなしく私達が殺されるのをカイトは見てるのか?...謝罪して、魔王の首を差し出してハイ終わり。だったら戦争こんなことなんてしないさ。こっちだってサンライトに恨みがないわけじゃない」


「カイト様。貴方がここに召喚された理由は戦争の終結の為。そろそろ覚悟が必要ですぞ。」


「...私は部隊に行ってくる。じゃあな、カイト」


「アタシも伝えなきゃ。また後でね!」


「私も失礼します。」






















「人を殺す...ね。」
(悠仁、俺はお前に剣は向けられないよ...。お前と会って話をしなくちゃいけない。)




二週間後、その時が来る。

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