今日から俺は四天王!
1章 2話 うわあ恥ずかしい
光が消えていき、周りの景色がはっきりしてくる。
ああ、俗に言う『異世界召喚』されてしまったのだな。
俺は今、どこかの宮殿にいるようだ。
足元に描かれた魔法陣の先には、赤い絨毯と大きな椅子。そして、そこに座っている男。
彼が、魔王軍のリーダーの魔王なのだろうか。それにしてはあまりにも....
「ちっさいなーコイツ。」
「口を慎めよ小僧。」
あっ口に出てしまった。うわうわめっちゃ睨んでくる!怖い!!!
「....さて、よく来た勇者よ。これで、我が魔王軍に勝利の兆しが見えてきた。さあ、『光の結晶』があるだろう?それを渡せ。もう不要な物だ。」
「光の結晶....?黄色いペンダントの事か?それなら、俺は持ってないぞ。」
「....どう言う意味だ。」
あれっ。て言うか俺、間違いで異世界にきちゃったんだよな?それの説明をまずしないと...。
バタンッ!と荒々しく、扉を開ける音。
「報告します!!王国軍に勇者が召喚されました!!...ってありゃ?」
それってもしかしてユージンの事か!
まずいぞ。嫌な予感がする。
「...おい!お前どう言う事だ!お前は誰だ!どっちが本物だ!」
そう声を荒げたのはちっこい魔王ではなく、その側近だろうか。3人いるうちの1人、フードを被った男(?)である。顔は、何故かよく見えない。
「えーっと、2人召喚されちゃって、俺は黒崎海斗。....あと、あっちが本物じゃないかな。」
俺はとりあえず冷静に答えて、それからニコッと笑った。ああやっばいどうしよ。
「なんて事だ...!クロサキカイト、だったか。よくも我が国、『アズフィルア』を侮辱してくれたな。」
フードの男は怒りを俺にぶつける。取り返しがつかない。俺はどうなってしまうんだ。
「...私の前で声を荒げるとはな。随分と偉くなったものだ。なあ、『クローバー』よ。」
「申し訳ありません魔王様。ですが、もうこの男に用などありません。俺が排除を...!」
フードの男が近づいてくる。
「本当に、偉くなったものだ。戻れ、私にはまだ話すことがある。」
「っ!....こんな偽物になんの用が?」
「四天王の席、『スペード』が空いてるだろう。」
なんか話がどんどん進んでるな...。四天王になれるっぽい?
「そこは元々勇者が入るはずの席では?それに、ただ魔力が大きいだけで、使い方を知りません。戦力には...。」
ここでやっと俺が話す。
「え?俺って魔力あんの?普通の人間だよ?」
フードの男はやれやれ、と言いながら軽い説明をした。
「ニンゲンと言う種族は、魔力だけならバカデカイのさ。どの種族よりもね。ただ、魔法を使える奴が本当に少ないんだ。お前も今は使えないみたいだし...。」
マジかよ、俺って魔力があったのね。
「ああそうだ。コイツはまだ使えない。だが、『スペードの証』は昔から魔力保有量から考えてニンゲンが向いてる。いつまでも四天王が3人、と言うのもおかしい話。国民も不安がるだろう。」
この魔王様、俺をそんな大事なポジションに置こうとしてんのかよ。
3人のうちの...いや四天王の一人のいい感じにダンディな老人が静かに、
「クローバー。下がりなさい。もう話はないはずでしょう。」
と言った。
「...はい。失礼しました。」
魔王は、咳払いをし、キリッとしてから最終的な状況を述べた。やっぱり小さい。
「異世界召喚された、とされるクロサキカイトを四天王の『スペード』に仮任命する。ただし、『スペードの証』は働き次第、または実力が分かり次第に与えるものとする。世話は四天王でする事。以上、解散。」
世話って俺はペットか!!!
どっちかと言えばおめーのほうがペットくらいのガキンチョだろ!
「おい...行くぞ。部屋に案内する。」
「おっおう、案内して下さいですクローバーくんちゃんさん」
「てめー舐めてんのか」
「あっいえその...」
なんでこんなヤンキーみたいな奴と居なきゃ行けないんだ...。
「えーと、クローバー...ちゃん?くん?」
「....。」
あーめっちゃ見てるこっち見てるよおい。
「...クローバーは役職の名前であって本名ではない。」
「部長とか社長とかそんなんと一緒か。」
「ああそうだ。...本名は『ブロー・シェイト』。好きに呼んでくれ。」
好きに呼ぶ、ねぇ......せっかくだしあだ名とかでもいいかな。ブロー...ぶろお...ぶー...........これだ!
「よろしくぶーちゃん」
「そうか分かったお前とはここでサヨナラだ!」
「うわーっごめんなさい!」
馴染めると思ったのに!
「ここがお前の部屋だ。まあ四天王の部屋だし、特に不自由はないと思うが、何かあったら言ってくれ。白の地図は渡したな?明日の朝9時に歓談の間に集合で。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさーい。」
バタンッ
おやすみなさいって事は今は夜なのね。全然窓を見てなかったな。
「...ふう。さて、色々あったな今日。」
ベットに腰掛ける。
「ぅうわフッカフカ、しょんべん臭い布団とはワケが違いますよ。にしても大丈夫かこんな感じで進んで...。正直パニックで驚くようなことに全く驚けなかった。」
一人ぶつぶつ話す。一人になっちゃうと話し始めちゃうタイプなのだ俺は。」
あーどんどん口に出るな今日は。
「つーか、あっちの国にユージン(あいつ)が来てるのか。....あれっもしかして対立しちゃうんじゃないかなこれ!非常にまずいっっっ!」
ドキドキする。焦りが止まらない。すぐに厨二病チックなイメージが浮かぶ。
–––––周りは火の海。血で髪を染めた悠仁が立ちはだかる。
『もう止めるんだユージン!こんな事しても意味ないだろっ!話しあってもいいじゃないか!』
『煩いっっっ!ここまで来たらもう止められないんだ!うおおおおおお!』
『クソッッ!!!!!!!!!!!俺が止めてみせる!!!!!ぬるゔおおおおおおおおおおおおおおおん"ん"ん"!!!」
バゴンっ!!!!
突然壁に穴が出来た。穴からは強く握った拳と、どこがで見たことのある服がニョッキリ出ている。
「ウルセェなぁオイ...!しょんべんクセェ布がないと寝れないなら豚小屋でどうだ...!」
「あっやあブロー。となりのへやだったんだねっ」
壁薄いのね。
まずい。
恥ずかしい。
初日はこのまま気絶するようにして終わった。
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