隣の席の天宮さん

小鷹 心

番外

今日、僕はかねてより思いを馳せていたと結婚式をすることができ、親父やおばさん、光に背中を押されるように告白をし、高校三年の大晦日から丸一年かけて付き合い、結婚しないかと思いきって告白した結果がこれなわけだ。

「何してるのあなた。もしかして緊張してるの?」
「ははは……そりゃあ緊張もするさ。だって相手と結婚することができるんだから」
「ばか……これから結婚してあたしを妻に迎い入れるんだからあなたはどしっと構えてればいいのよ」
「そういうものなのか?」
「そういうものよ」

ふふっと僕に向けて微笑む。
こういう笑顔も、怒った顔も含めて全部可愛いし惚れたし結婚しようと思ったんだ。

「ほら、呼んでるわ。行きましょう?」
「……ああ」

衣装に着替え終わった僕と嫁(仮)は、準備ができたとのことで係りの人が呼びにきてくれて一歩、また一歩と会場へ足を運んだ。

「へぇ〜。ずいぶん立派に見えるんだな」
「いらんこと言わんでいいっ!」
「あべしっ」
「ほら、さっさと行った!  ……一応、父親っていう設定なんだから」

そう。
実際のところ、僕と千夏は親父と呼ぶ男の血は流れていなかった。
姉と呼んでいた千紘さんも義理でもなんでもない血すら流れていない赤の他人だった。

母さんと結婚した男は飛び降り自殺したとか夜逃げしたとかで母さんを捨て、その当時、まだ小さかった僕とまだ母さんのお腹の中にいた千夏のことを考え、母さんは小学校の頃からずっと親交のあるおばさんに相談し、母さんも含めて仲良くしてた父親、天宮良輔ととりあえず席を持って落ち着こうということになったらしい。

そんなこともあって事実婚をしたんだということを親父の口から直接聞いた。
血が繋がってないにしろ。僕と千夏にとってはだらしなくても父親であることは間違いないし、千紘さんのことを今でも本当の姉のように慕ってる。

バージンロードが祭壇へと続く扉が開き、本当に結婚するのだと自覚する。

涙ぐむ千紘さんや千夏が見える。
ああ、二人にも心配かけた。
でも、もう大丈夫。

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