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1も始まらない魔王の世界征服

Leiren Storathijs

第1話 魔王覚醒

魔王城と言う名の古代遺跡にただ一人住む「魔王」は、世界が魔王の存在を完全に忘れ、街の外には家畜が放し飼いされ、長閑な平和が続く世界に今、覚醒する。

「……ハッ!?あー……やっべ……目瞑って考えてたら寝てたわ……」

彼の名はヴェルトロス・レクス世界を征服する筈だった存在。漆黒の鎧を全身に纏い、周囲には炎、氷、風、雷の四属性の魔王の部下。四天王を仕えさせ、その空間は、とても暖かい空気に包まれていた。

全身を灼熱の炎で包み、鍛えぬかれた強靭な体から一撃で村を破壊する拳を持つ大猿獣おおさる。フロガは、気だるそうに寝転ぶ。

「なぁ〜魔王ぉ〜暇だぁ……」

歩く道は絶対に溶けぬ氷と化かし、口から吐かれる息吹は滝さえも一瞬で凍らせる力を持つ大狼おおおおかみグレイは、冷気も出ない欠伸をする。

「ふわぁ〜あ……魔王よ……いつまでそうしているつもりだ……」

火山ある巨大な島でも大空を片翼で暗闇に覆い、一度羽ばたけば、竜巻により街が一瞬にして滅ぶ力を持つ凶鳥。アエトスは、天の陽を浴びながら羽を休める。

「今日はいい天気だな……魔王」

茶色の整えられた毛並みでその体を持ち、人の目では捉えられない速さで走る神速の馬。エクウスは、魔王城の外で草原を貪る。

「あぁ〜草美味えええ」

そして、銀色に輝く体毛を持ち、誰の心も癒す円らな瞳を持つ魔王の愛犬。ウルフは、魔王のすぐ隣に座り、足で体を掻いては偶に欠伸をし、安らかに眠る。

「ワフッ……フゥ……スピー……」

そんな空気に痺れを切らした魔王は、溜め込んだ息を一気に吐く。

「あぁああッ!!お前らもちょっとは考えろよ!俺たちは世界を征服しなくちゃならねぇんだぞ!俺らまで平和になってどうする!?」

その魔王の怒りにフロガが苛つきを混じらせた声で答える。

「だからそこら辺の村を襲撃すりゃいいんだろうが……」

「いや、駄目だ。あくまで平和的に征服するんだ……」

「平和にやれ。考えろ。襲撃は駄目だ。ったく俺らの魔王は何でこうもこんなに平和主義なんだ!」

そうこの魔王は無二の平和主義者であり、殺戮や襲撃を嫌う。しかし、幾ら考えても、平和的に征服という方法が誰も思い付かないのが現状だ。

グレイはため息混じりに口を開く。

「落ち着けフロガよ。頭を冷やしてやろうか?」

「凍るわ!」

実はこの魔王が本当の覚醒を起こしてからこの会議は五時間以上が経っている。

魔王が世界を征服しようと言い、仲間が襲撃しようと提案するが、魔王はそれを断る。

そんな状況で魔王が唯一頭から捻り出す案は、『平和的交渉による領地拡大』。一見なかなか良さそうな計画ではあるが、例え魔物や魔王の存在を忘れた世界の住人達でもこの異形な魔王や魔物を受け入れてくれるだろうか?と、頭を抱えるが、そこでまた一つの問題が現れる。

もう一度言おう。魔王は至って平和主義者なのだ。つまり村人達の家畜殺しが嫌いなのだ。

しかしそれは、生きるための致し方無い行為。

だが何度も言う。魔王は動物をこよなく愛し現にウルフに溺愛している。もうこれ以外に策が無いと分かって置きながらも悩み続ける魔王とその四天王だった。

「「「うーん……」」」

「ワン!」

魔王、フロガ、グレイこの場にいる全員が頭を抱えて悩んでいる所だった。

ウルフは突然体を起こし、玉座に座る魔王の両膝に手を乗せて、飯をくれとせがむ。

「あーウルフ……済まないが背もたれにドッグフード入ってるから適当に食ってくれ……」

「ワフッ」

ウルフは魔王の背中に回り、玉座の背もたれに手を掛けると、ハッチの様に背もたれが開き、その中からて出てきたドッグフードをガツガツと貪る。

「魔王……何でウルフにだけはいつの間にそんなハイテク餌装置作ってんだ……」

「仕方がねぇだろ……コイツは俺の相棒なんだからよぉ」

そこで魔王の部下、第二の相棒と呼ばれているトロールが魔王に一つの提案をする。

「魔王、お前は耳と目を塞いでろ。このままうだうだ言ってと、物語が進まねぇだろうが」

更に魔王の手下、何故か平和主義のゴブリンがトロールの発言を促す。

「そうですよ魔王様。何このクソ小説と言われても良いんですか?」

「あいあい分かったよ……」

すると、魔王は耳栓を付け、両手で両目を塞ぎ、石像の様に停止した。

「よし、ゴブリン。近くの村まで魔王を運べ」

「了解しました!」

トロールに命令されたゴブリンは数匹同族の仲間を呼び、石となった魔王をせっせと魔王城の外へ運ぶ。

「ワンワン!へっへ……!」

それに続いてウルフは運ばれて行く魔王を追いかけの腹の上に乗る。

トロールはフロガとグレイに説明してから行く。

「これから村の襲撃に向かう。これはフロガもグレイも出る場面は無い。任せてくれ」

「おうよ!行ってこい!」

「これが魔王の初陣か……」

こうして、魔王、ウルフ、トロール、ゴブリン数匹で近くの村へ襲撃にしに行った。

三十分後、村に到着。村に入ろうとすると、村長と思わしき六十代の男が魔王達を歓迎した。

「これはこれは、見ない顔ですな?こんな辺境の村へようこそおいでくださるとは」

ここでトロールに一つ疑問が浮かぶ。何故受け入れてくれた?

トロールの思う通りに襲撃に来た魔王一行は、なんの変装はしておらず、トロールは青色の巨体に一つ目、ゴブリンは赤い体に頭に小さな角が生えている。どう見ても人間では無い。

「いや、俺たちはお前らを襲撃しに来たんだが……」

「ほほぉ……襲撃に?面白い事を言う方ですな!ハッハッハ!」

寧ろ笑っている。辺境の地だからこそ魔物という生き物に面識がないのだろうかとトロールは考える。

すると、隣にいたゴブリンは、魔王を地面に立たせると、空かさず片手に持つ棍棒で壺を叩き割る。

「トロールさん!ぼのぼのしてる暇なんてありませんよ!村を恐怖に落とし入れないと!」

トロールは本来の目的を忘れていたのか、ゴブリンの言葉にはっと気付き、ゴブリンに命令する。

「そうだったな!ゴブリン共!人は絶対に殺すな!?兎に角壊しまくれ!」

トロール自身は特に人間を殺す事に躊躇いは無いが、殺す事で後でどうなるか分かっていた。

それは約数年前、魔王の世界征服計画の下、現在と同じ様な計画を立てていた。

その際、魔王は部下の手懐けがしっかり出来ておらず、一集落大虐殺を起こしてしまい、結果的に村を恐怖に落とし入れたものの、魔王はその結果に大激怒する。

その激怒に部下達は首を傾げていたが、魔王はその後、自ら壊滅した村へ赴き、全ての殺した人間を弔い、墓を作った。

余りの真逆な行為に村の生き残りは最初は逆に魔王を罵倒し、嘆いたが、魔王の必死に一人一人丁寧に弔う姿を見て、村の生き残りは魔王と和解した。そのおかげで魔王の世界征服計画は振り出しに戻った。

これをトロールは知っているからこそ、絶対に人は殺すなとゴブリンに命令するのであった。

「分かりましたああぁ!グギャアアアッ!!」

その命令によって死者無しの村を完全に数分で壊滅させた。

しかしこの行動は村の者にとっては効果余り無かった。

「相当、鬱憤が溜まっていたんですね……もう壊れてしまいましたが……どうぞお休みになって下さい」

その優しい表情で休めと促す村長の姿にゴブリンやトロールは呆れと一緒に一気に冷める。

「トロールさん……駄目っすねこの村……」

「あぁ、訳が分からない。魔物の存在すら忘れられるというのはこれ程までに厳しい事なのか……」

「クゥン……」

しばらくして魔王が耳栓を外して戻る。魔王はその村の光景を見ながら、のんびりと寛ぐ部下を見る。

「お前ら何してんの?」

「戻ったか魔王。失敗だ。また村との友好関係を持ってしまった……」

「魔王様ぁ……この村の有様全部私達がやった事何ですが……皆さん何一つ悪く思って無くて……寧ろ可哀想だと思われちゃいましたよ!」

その報告に魔王は満足気になり、トロールとゴブリンの輪に入ると、ゴロゴロと寝転がるウルフの腹を撫でながら次の作戦を考えようとする。

「いや、平和的に征服する計画として、これは第一歩だろ!良くやったな!お前ら!」

その変わらぬ反応にトロールとゴブリンは大きく溜息を吐いた。

「駄目なのは、こりゃ村じゃなくて魔王だな……」

「そうっすねー……」

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