ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

131話「主戦力集結」


 俺の索敵範囲は、13キロや......ではない、せいぜい10㎞以内ってところだ。 10㎞付近まで離れるほど感知力は曖昧になっていき、その場所で気配を遮断されたら全く感知できない。高園は「気配遮断」が使えると考えて良いだろう。さらに「隠密」っていうこれまたピッタリな固有技能も持っているから姿が見えない。カミラが未だ奴を発見できないでいるのはそのせいだ。カミラには高園の捜索は諦めてもらい、そろそろ八俣倭の動向を見てもらえるよう頼んだ。彼女もそれが賢明だと判断してすぐに動いた。

 高園の狙撃タイミングは全く読めない。精度も威力も普通のとは桁違いだ。「危機感知」を常に発動させてギリギリのタイミングで躱す以外対処の仕様がないな。あと誤射も期待しない方が良いだろう。一流の狙撃手の固有技能には「千発千中」という必中スキルがあるらしい。高園の場合それ以上の技能を持ってる可能性がありそうだ。
 狙撃手の弱点はとにかく接近戦に持ち込まれることだ。それをさせない為に敵から遠く離れて姿と気配を消して戦うというやり方を採用しているわけだが。しかも隠れたところから攻撃仕掛けてくる奴はもう一人いる...。

 
 「...!また、体が動かん...」

 米田はまだ感知できてない。考えられることは、俺が知らないうちに幻術をかけられて奴を感知できないようにされていること。呪術師の奴なら幻術も使えると考えて良い。ここに来た時点で術中に陥ってしまってた、なんてことになってるのか今は。カミラがさっき言った通り、米田はここにいると考えて良いはずだ。この周囲のどこかに巧妙に隠れてやがるに違いない...!
 どうやって引きずり出そうかと考えていると――


 「ぬおおおおあああ!!」

 動けない俺に猛然と斬りかかってくる老兵が現れた。火力と斬れ味が足りないせいか、その刃は俺を切断することなくポキッと折れた。

 「くそっ...!」

 奇襲に失敗して悔しそうにする老兵を「鑑定」したところ...ほう?こいつがサント王国の王だったのか。そしてこの連合国軍の総大将でもある。カミラから聞いた話では人族唯一の“戦う国王”と言われている男。
 国王にしてはバリバリの現役戦士レベルだな。昔かなりの凄腕戦士だったのだろう。が、残念だが俺には届かない。米田の呪縛を振り解いて国王と対面する。


 「こうして直接対面するのは初めてだな、カイダコウガ。半年前にクィンを魔獣やモンストール、そして魔人族から守ってくれたことには感謝している。だから残念に思う、こうして貴様を討伐しなければならないことを...!」
 「初めましてだな国王さん。でもさぁ今のあんた、残念だーって顔じゃねーよな?殺す気満々だ。んで?今ので殺せるとおもってるわけ?わざわざ死にに来たのか総大将さんよ?」
 「私如きでは貴様を殺すなど不可能。だが止めることなら可能だ!この老兵の命燃やしてでも、貴様の足止めをする役割を全うする!!」


 などと大層なことを吼えて魔法杖を構える。自分はあくまで周りの雑魚兵と同じ俺の動きを縛る役割だというわけか。その雑魚どもだが、総大将が現れたことで士気が上がっている。で、さっきからこっちに近づいてくる気配は察していたが...

 
 「甲斐田君、ここで終わらせるから...!」

 藤原も到着した。今ここには奴と総大将、曽根と隠れた米田、そして遠いどこかから狙撃する高園。こうして連合国軍の主戦力が集まったってわけだが...

 「......あーもう、邪魔する奴らがたくさんいやがるなぁ...ハァ」

 不機嫌気味の俺は、まず士気を上げた元凶の総大将の首をとりに行った。直後、俺の眼前に曽根の盾が出現。あーもうこれもウザいなー。物理破壊できないわけじゃないけどさぁ。よし、ここは盾をも溶かせる「王毒」で!
 そう思って発動して、盾に当てるが、直前に光の帯が現れ、毒を防いだ。

 「私がいる以上、毒は効かないよ!」

 藤原の毒耐性付与!そうだこれがあったんだった、毒で一掃もできない!


 「あ~~~っ!!鬱・陶・しい・なぁどいつもこいつも!!俺の邪魔ばっかりしやがってよぉ!!策略だと分かっててもムカつくんだよぉ!!」


 有象無象どもの度重なる妨害についにキレた俺は、本気出すことに。もうじっくり苦痛を与えて殺す路線は諦めよう。残りの復讐対象どもはそんなにヘイト溜まってねーし、もうサクッと殺そう!

 「結局物理が最強攻撃ってことだぁ!!おらぁ!!」

 勢いよく殴りつけて盾を一瞬で破壊する。が、その盾がすぐに元通りになった。

 「“回復”」

 マジか!?あいつの回復は盾を修復することもできるのか!だったら修復不可能...完全に消すまでだ!

 「.........もうちまちま甚振って遊ぶのは終いだ!本気のザイ―トの奴と戦った時とほぼ同じ力でいくぞ!?テメーらがそうさせたんだから仕方ねーよなぁ!?脳のリミッター100000%解除ぉ!!」


 完全異に悪役のセリフを吐いてやった。もう全員、即殺路線確定だ。曽根も米田も高園も、邪魔する藤原も総大将も、全員すぐに殺してやる。殺す、殺す...
 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す全員ぶっ殺す...!!

 「魔石摂取!“絶牢壁”散布!!“絶牢結界”展開!!」

 危機を察した曽根がオリジナル魔法で盾を複数展開、さっきよりも頑丈な盾を出現させた。同時にドーム状の防御結界も展開させていた。これで全員奴の盾に守られ...


 「――なんて出来ると思ってんのか!?そんなヘボシールドでぇ!!!」
 
 バガアアアアアアアアアアン!!

 一瞬で今現れた盾と結界の全てを破壊。敵全員が瞬きする間に破壊、破壊破壊。そして同時に宙を舞う雑魚どもの首。
 使うぜ“連繋稼働《リレーアクセル》”!もう出し惜しみは無しだ!手抜きはしない!こいつらに“格”と“絶望”ってやつをしっかり教えてあげよう!!


 「―うあああ”ゴブッ!!」
 “絶拳”で 数百人の腹を消し飛ばし、


 「―ひぃっ!?―あ”っ......」
 恐怖で動けないでいる兵士どもの首をすっ飛ばし、あとは何やかんや...1秒で数百人殺した。そして...



 ――ドスッ...!「う”っ...!ゴフ、ゥ...!」
 
 超音速の左貫手で、曽根の心臓を鎧ごと貫いてやった。その際に、曽根の奴は喀血して俺にもたれかかった。起き上がる力はもう無いようで、今にも死にそうな顔をしている。

 「すまねーなぁ...もう少し苦しめてからテメーを殺すつもりだったんだけど、もう余裕ねーからこれで終いだ」

 冷たく言い放ってズルっと手を引き抜く。が、俺にもたれたまま曽根は俺の袖を未練がましく掴んで離さない。まだそんな力が残ってるとは...生命力が強いのかコイツ。

 「何だ?何か言いたいことあるわけ?」

 周囲に重力魔法を放って雑魚どもの動きを制限させながら死にかけの女に問いかける。せっかくだし最期の恨みごとくらい聞いてやろう。
 曽根はどうにかこちらの目線まで顔を上げて、血と何に対してのか分からない涙を流しながら弱々しく話しかけてくる。


 「お、ぼえて、る?私が、甲斐田に...告白した時...のことを...」
 「ん?.........ああ、あったなそんなこと。テメー男見る目無かったなぁ?くくく...。割とディープなオタク趣味の俺に、勝手に幻滅したんだっけ?テメーは所詮その程度の器だったってことだが」

 俺の返事を聞いた曽根は、何故か微笑む。その目には後悔の念を感じさせた。今さら何に後悔してるのかは、考えない、興味も無い。
 曽根美紀はやがて力尽きて、俺にしがみついたままその生命活動を終えた。ただ...死ぬ間際に、常人なら聞こえないくらい小さな声で紡いだ言葉を、俺は確かに聞き取った......聞き取ってしまった――


 「ば...か、だよ......あんた、は............“――――”」

 「―――――」

 死してなお、俺を離すまいとする曽根をしばらく見つめる。
 最期の言葉は聞かなかったことにして......俺は未だしがみついたままの曽根を適当に放り捨てて、態勢を立て直した。 
 ......はいはい馬鹿で結構ですってね。とりまこれで壁役はいなくなった。お次は......いい加減にあいつを表に引きずり出すか。

 “スーパーノヴァ”

 地面に手を突っ込んで、半年前に戦った巨大モグラモンストールを掘り起こした時と同じやり方を実行。
 これだけ戦場のどこかしこを見て捜しても見つからないっていうのなら、あとはもう下にしか隠れるところはないだろう。大爆発とともにえげつない土砂が降り注ぎ、爆心地に大穴が空く。そして案の定、お目当ての呪術師女がやっと姿を現した。


 「ひっ、ひぃ......」

 小動物みたいにガタガタと震えながら魔法杖を突き出して魔術を発動するが俺は全て跳ね除ける。リミッターが外れた脳に幻術も精神汚染も何も効かない。

 「な、何で...全く通用しないの!?魔石も摂取して強くなってるのに...!!」
 「テメー程度のスペックで今の俺を操れると思うな?散々操ろうとしやがって、厄介な女め。甚振れないことが惜しいが、今すぐに殺す。し――」


 ――グサグサグサ!!

 米田に手刀を振るう動作をしかけた時、脊髄3か所を正確に射抜かれた感触がした。体を即座に回転させながら矢を無理やり引き抜いた。俺の隙をやっと捉えた高園が、このタイミングで狙撃してきた。

 「甘いなぁ。どうせなら首と頭を射抜けよなぁ。この期に及んで殺すことに抵抗あるのかぁ?」

 呆れ混じりに呟きながら飛んでくる矢を弾く。今の俺の速さの数値は5千万以上だ。誰も俺の動きを捉えられることは不可能だ。

 「“炎柱《えんちゅう》”!!」「“絶対零度”!」「“閃光槍《ライトニングピアス》”!!」

 高園の狙撃が止んだ直後、今度は藤原の人間離れした魔法がとんでくる。水の鞭で火柱を消し、溶岩を発生させて氷を全て消して、光の槍を闇色の巨大な口腔で噛み砕いた。

 「米田さんそこから早く離れて!!」

 藤原の指示に従い俺から離れようとするが許さない。すぐに追跡しようとしたら、また狙撃される。しかも今度のは矢じゃなくて弾丸だ。高園の武器は弓矢だけじゃない......狙撃武器全般が奴の武器なんだ。
 今のはライフル銃といったところか。肉が抉れてやがる。その隙に米田が兵士どもに紛れて姿を消した。そんなことしても無駄だというのに。まぁこの二人のせいで追うこともできないみたいだが。
 
 「言ったでしょ?ここで終わらせるって...!」
 
 藤原がこちらを睨んで魔法杖に魔力を溜める。いつでも放てる状態だ。

 『コウガ、ヤマタワタルは未だゾンビ兵に足止めされています。とはいえゾンビ兵の数は、残り3割といったところです。彼がコウガのところに着くのは...5分後だと予測してます』
 「5分...ここを全滅させるには十分だな。カミラ、藤原美羽だが...」
 『はい、動くなら今この時でしょう。確実に...』

 カミラの報告を受けて俺は藤原を警戒する。だが肝心の本人にまだ確認していないことに気付き、彼女に問いかける。

 「藤原、あんたの“回復”だが...治すことの他に、巻き戻し...回帰の能力もあったよな?」
 「...そうよ。欠損した箇所を再生させたり、武器も新品に復元させることもできる...時間を戻すって言った方が分かりやすいかな」

 こんな状況でも問いかけに答えてくれるところ、さすがは先生。それより...今ので確信した。こいつにはマジでくらってはいけない究極の回復魔法を習得している...!

 「予想通りだ、連合国軍の切り札はやっぱりあんただな?回復魔法を極めたであろうあんたならできるんだろうな...」
 
 それは、魔人族をも容易く無力化できる魔術......



 「対象を過去の状態に巻き戻し、ステータスを初期近くまで回帰させる。つまり......対象を弱体化させるという超チート魔術!
 それがあんたが持つ最強の切り札...俺をも殺せ得る世界最強の究極魔術だ...!!」


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