ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

第6章後編 126話「連合国軍の新たなる切り札」

*第6章後編開始





 現在ベーサ大陸では、二箇所で大規模な争いが起ころうとしている。
 一つは故カイドウ王国。皇雅によってつくられたゾンビ兵士と連合国軍の兵士が激突している。数は後者側が多いことが有利となり、連合国軍側が優勢になっている。 
 その中で戦力がずば抜けた者たちが4名いる。
 甲斐田皇雅(分裂体)と八俣倭・アレンとクィン・ローガン。それぞれハイレベルな戦いを繰り広げていた。

 そしてもう一つは...サント王国である――。




 (“分裂”...そんな固有技能を得たのですね。これはかなり使える技能です!コウガ程の戦力なら、2~3人分裂しても問題はないはず。ただ...ヤマタワタルやフジワラミワの二人と遭遇した場合は、なるべくアレンといた状態で戦ったほうが良いですね。それもオリジナル体じゃない方で戦うとなれば尚更です!)

 カミラの助言通り、オリジナルの俺は八俣とクィンから離れて行き、分裂体を残して彼らと戦わせる。八俣のスペックを考えて、最大7割の力までを発揮できるレベルの分裂体を相手させることにした。その程度だと、本気出したあいつに負けることになるかもしれないが別にいい。足止めになれればそれで良い。

 因みにオリジナルの俺は、攻撃力や耐久力、魔力が数割低下したがあまり気にならない。脳のリミッターを強制解除できるからいくらでも強化できる。本来の数値を下回るが、今回の復讐対象はどれも雑魚ばかりだし問題無い。
 ザイ―トどころか普通の魔人相手すら一人で討伐出来ないゴミ5人など、何の脅威にもならない。存分に痛めつけて苦しめて、殺す...!!


 『コウガ、サント王国では既に盤石の布陣が敷かれています。どうやら連合国軍の全兵士は、コウガと戦うつもりのようですね。数万はいます』
 「邪魔するってか、雑兵共も...下らない仲間意識を持ってて、お友達が数万いるから怖くないってか?......馬鹿だなぁ、っくく!数なんて意味無いってこと教えてやんよ...」
 『そして、その中に、救世団らしき人物も確認できました。変わった武器を持っているので恐らく彼らがそうかと』
 「...どんな武器を持ってる?性別は?」
 『大きな砲筒を持った男性一人、プリースト特有の杖を持った女性、そして、っ!フジワラミワです...!」


 途中言葉を途切れさせながら最後に最も警戒している藤原の名前が返ってきた。そして他の2名だが...男の方は一人は堂丸勇也、もう一人は...プリーストだから中西晴美で間違いないだろう。
 藤原がいるのは面倒だが、残りの二人がいるってのはラッキーだ!あの二人は特に殺したいと思ってるゴミカスどもだから、最初はあの二人に復讐するぞ...!

 カミラの報告を聞いた俺はそう決意し、殺意を全開に漲らせて駆けていった。そして数十分程したところで、戦場となるサント王国の平地に着いた。そこで俺が最初に目にしたのが...

 「うん?これはこれは...!?」
 


 前方見渡す限り、武装した兵士がいっぱい。人、人、人!うぇえキモぉ!!何コレ?元の世界にある夢の国とか大型連休時のデパートとか混雑時の食堂とか比べ物にならない規模の人口密度!まじキモい!!吐きそうな気分!

 人が数万集まれば、ここまでキモい絵面になるんだ。黒光りG虫の群れを見てる感じだわ。あ、ヤバい。気持ち悪くなってきたわ本当に。まさか、コレが俺対策の(精神への)攻撃法だとするなら、その作戦は成功したと言えるだろう...。あそこに魔人族がいたら俺の首は刎ねられていたな。
 今回はそんなレベルの戦士はいない。藤原たちはかなり後方にいるみたいだし、すぐには攻撃できまい。...あ、やっと俺の存在に気付いたみたいだ、数人から十、百と俺に気付く数が増えていき、武器を構えて殺気を放ってきた。
 とりあえず...このキモい光景を、消そう。惨たらしく!!


 「お姫さんの奴、随分な嫌がらせをしてくれたなぁ。仕返しにこいつらには、えげつない死に方をしてもらおう......“王毒”」

 直後、劇毒の波が雑魚兵どもを飲み込み、飲み込まれた兵士どもの断末魔の叫びがあちこちから響いた。

 「「「「「「ぎゃあああああああああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」」」」」

 溶け死ぬ者、窒息死する者、爛れ死ぬ者...色んな死に方をして消えていく兵士どもを見て俺はほくそ笑んだ。

 「よし、今ので数千は死んだか?次は空から毒を落とすか。魔力光線も良いけど、毒で一掃するのも悪くねーな」

 もはや倫理など完全に消え去り、人の死など何とも思わなくなった俺は、面白がって跳躍してそこから「王毒」の雨を降らせた。これでさらに数千、いや1万は死ぬだろうと残酷に笑いながら眺めていると...

 「ん、あれ?」

 雨の範囲に入っていた兵士どもに、何か光のベールが覆いだした。そして俺の毒を防いでみせたのだ。障壁をも溶かす世界一強い毒なのだが、いったいこれは...?

 『コウガ、これはフジワラミワの仕業です。彼女の“全状態異常耐性”が付与されたベールでコウガの毒を防いでます!まさか、これ程とは...!』
 「藤原...厄介だなぁ。この毒をも防ぐかぁ。しかもあんな大勢の雑魚どもを守りきるし」

 やっぱり来るか藤原。流石は超一流の回復術師、なら魔法系での攻めは無理か。

 「ここからは直接攻撃でいくわ。搦め手でいくのは失敗するみたいだしなぁ」
 『なら...“分裂”は解除した方が良いのでは?いつ彼女の、確定していませんが予想したあの魔術がくるか分からない以上は...』
 「かもな。八俣をここまで来させることになりそうだが仕方ねー。動物ゾンビ兵たちに足止めしてもらおう......“解除”!!」

 「分裂」の解除と同時に、脳のリミッターも解除した。そして動物ゾンビ兵全員に八俣の足止めを優先するようにも命じた。
 準備を整えた俺はクラウチングスタートの姿勢をとり、スタートを切る。いざ侵攻開始...!

 軍勢の中に入る直前、走った勢いのまま空気を思い切り殴りつけた。当たらずとも衝撃波が周りの奴らを襲う。今の拳の速度はマッハ4桁はいってるので、当たらずとも雑魚は死ぬ。一瞬でたくさんの兵士どもの体が裂けて、弾け飛んで、血のスプリンクラーが生じた。
 次に光の速さ4分の1に達する速さの拳と蹴りを放ち続け、雑魚どもを消しまくった。少しは減らせたか?さらに一万は殺したのではと思いながら駆けて行くと...


 ――ドギュゥンンンンンン!!「―お?」

 真上からいくつもの弾丸が襲い掛かってきたので腕をクロスさせて防いだ。が、腕から煙がシュウウと噴いて出て少し溶けた。これは、カミラ率いる兵団が使ってた“聖水”か!この軍勢もやっぱ同じ対策をしてきたな...油断ならない。
 そして、この拙い射撃は...。

 『コウガ、今の射撃は...』
 「ああ。だが高園じゃない。あいつだ...!」


 「よし、効いてる!聖水効果もあるだろうが、俺の弾丸の威力がスゲー上がってるぜ!甲斐田ぁ!!お前はここで終わりだ!!」


 堂丸勇也...!あいつはガンシューターだっけ?無駄にデカい砲筒で射撃してきやがったが。

 「高園の下位互換が!射撃はできても狙撃はできない雑魚がぁ!!随分粋がってんじゃねーの!?」
 「お前、高園も殺す気らしいな!?絶対させるかよ!お前みたいな最悪糞野郎に殺させてたまるか!!」

 俺の挑発にあっさり乗った堂丸が額に青筋立てて殺意を漲らせて急降下してきた。こいつも...クィン程じゃないがステータスが普通じゃない。初期のステータスを見たことあるだけにこの成長率はおかしいからな。何かあるな...。


ドウマルユウヤ 18才 人族 レベル75
職業 ガンシューター
体力 100000
攻撃 500000
防御 100000
魔力 100000
魔防 100000
速さ 100000
固有技能 全言語翻訳可能 気配感知(+索敵) 炎熱魔法レベル8 精密射撃 限定強化


 ...と言っても一般的な人族の場合なんだけどな!?俺から見たら雑魚同然~!

 「砕けろ!!」

 急降下しながら砲筒を大槌のように振り下ろした。というか大槌になってた。近距離武器に変形するらしい。躱す必要無いがあえて躱した。地面が大きく陥没して数十メートルの大穴ができた。

 「その威力、“限定強化”のお陰だけじゃないな?ついさっきも人族にしてはあり得ない能力値の奴と遭遇したんだが、テメーも似たクチか?」
 「“限定強化”を知ってるのか...ああそうだよ!倭さんからもらった新しい強化素材だ!
 “魔石”を細かく砕いてつくったドーピング粉末を摂って、俺たちはもの凄く強くなったんだよ!!」

 堂丸から発した魔石という単語に、俺は驚きのあまりに目を見開いた...。




 ~回想~

 (魔石って、今の魔人族がああなった原因で、瘴気が発生した源でもあるあの...!?)

 ミーシャが指を少し震わせながらテーブルにある魔石を指して発言した。倭がたった今取り出した“魔石”と呼ばれる幻の鉱石。魔人族を今の魔人族にたらしめた全ての元凶であり、屍族《モンストール》の発生の源でもあるという、人族と他の魔族たちにとって悪魔の鉱石だ。そんな物を倭がいきなり取り出したのだから、皆驚くのも無理はない。

 (鍛錬で使ってたある洞窟地下深くでこいつを見つけて拾った。さらに言うと、討伐した魔人族の中にも破片として埋まってたんで、それも採取しておいた。魔石は何も魔人族だけを強くする物じゃあるまい?他の魔族も強くできるだろうし、当然...俺たちも強化できるはずだ)
 (八俣殿、まさか...!?)

 ガビルの問いかけに倭は頷いて告げた。

 (こいつで俺たちも大幅に強化する。これ以外で甲斐田に対抗できる術はもうないだろう。“限定強化”を持たないこの世界の人間ならなおさらな)
 (ですが!半年前に遭遇した魔人族のトップだった男が言うには、魔石の摂取には大きなリスクがつくとされていて、過去に魔人族はそのせいで何人も副作用に耐え切れず死んだと聞きました。これはあまりに危険過ぎるのでは...!?)

 ミーシャが過去の事例を引き出して倭に意見し、それを聞いた縁佳たちは戦慄した。

 (案ずるな。そんな危ない賭けなど今回はしない。こいつを砕いて粉末状にして摂取する。それだけでも強化できるってのは確認済だ。あとは時間を限定させることだな。長時間魔石の強化を持続させると体に悪い。切りのいいところで強化を解く必要がある。そのやり方は追々話すとして―)
 (ま、待って下さい!ワタルさん、試したのですか、その石での強化を!?そんな危険を、誰にも相談しないで冒していたのですか!?)

 倭の言葉を遮ったクィンが、焦燥にかられながら倭に詰め寄った。だが当の本人はあっけらかんとした態度のまま答えた。

 (誰かが試さねば、こんなドーピング法は見つからなかった。それに魔石の副作用に耐えうる強い奴が必要とくる。俺以外に相応しい奴はいるまい?というか、これくらいのリスクを踏まなければ、次の戦争で...負けるぞ?)

 倭の有無を言わさない発言に、誰も反論できずにいた。全部彼の言う通りだと認めているからだ。

 (致死量の副作用が発症しない程度の量で摂取しろ。そしてこれは限定的な強化に過ぎない。使いどころは各自で判断して、くれぐれも長時間の使用は控えろ。人によっては能力値を数十倍、数百倍にも跳ね上げられることができ、魔法も強化できる。これを有効に使って、勝つぞ...!)




 
 そして現在――

 「...!ドーピングした仲間は大勢いる!お前がこの戦争に勝てる可能性なんて万に一つも『――ドガァン!!』―っがぁ!?」

 堂丸が吠えながら再度大槌を振るってくるが、それより速く俺が奴の顔面を掴んで勢いよく地面に叩きつけた。堂丸は無様にも喀血して体を麻痺させていた。


 「魔石強化?それでこの程度か?つーかテメーの自慢話はどうでもいい。

 俺は...テメーも殺しにきたんだからよぉ。今からもの凄く痛くて苦しい思いをさせるから覚悟しろよぉ?ふふ、ははははははは!!」


 堂丸勇也......まずはテメーの汚い血をまき散らせることで、俺の復讐を再開するとしよう!!



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品