ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

96話「鬼族の侵攻」

*注意 
一部、作し...主人公の行き過ぎた偏見が書かれているところがあります。それを了承したうえでお読み下さい。




 王宮へ向かう間、すれ違う獣人どもは皆、アレンたちを見るなり戦慄し、恐怖し、憎々し気な視線を寄越したりしてきた。負の視線を向けるだけなら無視したが、直接害を為す雑魚には生死問わない制裁を与えた...アレンたちが。
 俺は今回手をなるべく出さない方針で行く。これはアレンが為すべきことであり復讐だ。何より俺が出張れば一瞬で何もかも終わる。この世界で魔人族に勝る軍などいないだろうし、あの魔人族の親玉に比べればどんな敵勢も鼻くそ以下だ。
 鬼族の為にアレンやスーロンたちが戦ってるんだ、手出しは無粋だ。ホントにピンチになった時のみ動くとしよう。
 前方から戦闘装備した獣どもが現れた。騒ぎを聞きつけた奴らと言ったところか。あの驚き満ちた顔からして違いない。

 「おい、鬼どもはあそこにいるのではなかったのか?しかもあんなに身なりも整えられているし」
 「信じがたいがこいつらは外にいる生き残りだ。まさかまだ鬼が外にうろついていたとはな。で、鬼がのこのこ獣人様の国に何のようだ?奴隷願望でもあるのかぁ?」

 狐種の兵士が嘲り含んだ視線と態度でアレンたちに敵意を向ける。武器も構えた態勢だ。

 「というか待て。入国するには必然門兵と出くわすはずだ。まさかやられたのか!?」
 「あいつらはそれなりに戦闘慣れしているはずだが、破ったってのか!?腐っても鬼―」


 「誰が腐ってるって?」

 
 冷たい声とともにアレンが狐の顔面目掛けて爪切り裂きをくらわした。度重なる鬼族への侮辱発言に、アレンがついに切れた。
 その顔には憤怒に満ちている。その目には、復讐の炎が灯っている。自分だけでなく種族そのものを馬鹿にし不快な思いをさせたのだ。手を出す方が普通だ。

 「ぎゃああああああ!?目が!頭があああ!!」
 突然顔を引き裂かれた狐は痛みで無様に転げまわるいやホント無様だ。本当に兵士?

 「貴様!!鬼が我ら獣人に手を上げて、覚悟できてるのだろな!?」
 「それは、お前が死ぬ覚悟で良い?」

 もう一匹の犬が激昂するも、アレンの不意打ち蹴りでアバラを折られる。対応する間もなく真横に吹き飛ばされる。

 「ぐっ、くそ、がぁ!!」

 まだ動けるらしい犬が爪と牙を向き出しにして突っ込んでくる。その間にスーロンが割って入り、「剛力」発動した右拳を思い切りぶつけた。犬の首から上が吹き飛んで、対象物は絶命した。

 俺、犬は不快で忌々しく思っているクソ動物って認識してるんだよねー。あいつらって躾しても大概が無駄にデカい声で吠えて糞垂らすだけのクソ害獣じゃん。しかも家畜の雑魚動物の分際で、何も危害加えてない俺に威嚇するように吠えつけてくるし。こっちからしたら突然至近距離でデカい音を浴びせられる仕打ちを受けてるもんだぞ?そら殺したくなるでしょ?
 実際元の世界では、そういったクソ犬を外で思い切り蹴り飛ばして内臓を破壊してやった。それに腹を立てて切れてきたゴミ飼い主も躾怠慢・監督不行き届きの罪としてボロ雑巾になるまでズタボロにした。当然の報いだ、俺は間違っていない!
 それくらいに俺は犬を嫌悪している。だから今みたいにクソ犬が顔面潰れた様を見て凄く気分を良くした。ナイスだスーロン!

 あっという間に兵士二人を殺したアレンとスーロンを、獣どもは呆然と、戦慄・恐怖に彩られた表情で見ていた。やがて悲鳴が響き渡る。
 ふと上を見ると、屋根を伝って王宮へ駆ける兎兵士の姿が。今の光景を見て、急ぎ王に報告しに行く最中か。まぁアレはあえて追わない。わざとこちらの動向を、猿山の大将にでも伝えてやろう。その方が手っ取り早いだろうから。
 再び進むと、周囲から獣どもが大量に湧いて出てきた。全員兵士ではないが武器になりそうなものを手にしている。ただの国民とはいえ、獣人としてのスペックは人族の数倍はある。兵士でなくとも多少は戦える。

 「鬼が獣人の国で勝手してんじゃねぇ!また捕えて奴隷にさせてやる!!」
 と、息まいてアレンたちを捕らえようとする。が、所詮は戦い方をロクに学んでいない雑魚集団。すぐに殺せる。
 向かって来る獣どもを圧倒的武力を見せつけながら殺して回って先を進んだ。進んで行くにつれて、獣どもが俺たちを見て恐怖に引きつった顔をするようになり、攻撃しにくる奴が減っていった。どいつもこいつも鬼が来た、あの時の侵攻が再びだだのと叫んで逃げて行った。国民を殺して回るのは初めてだったなー。なんか新鮮な気分だ。

 などと狂気じみた回想をしながら進むと、今度はさっきと格が違う兵士が現れる。熊種と猿種、馬種など体格がゴツめの獣どもが数匹俺たちを囲む。実力アベレージはB~Aランクってところか。見た感じ10数匹はいるようだから、総合的に災害レベルはあるか。

 「鬼族め...!容赦はしない、ここで殺す!」

 熊の兵士がいきり立って巨大な腕を振り上げてその場で勢いよく振り下ろした。直後、斬撃がくる気配がして奴のいる位置から横に逸れる。キシリトも勘付いたようで、アレンたちを守るようにやや広めに「魔力障壁」を出した。
 同時に斬撃がぶつかる音がして、障壁にヒビが走った。ギリギリ見えない斬撃を防ぎきった。

 「俺の爪技を防ぐか...魔防が高い鬼までいるとは厄介だ。かつて獣人を苦しめただけはあるな」

 斬撃を防がれるのを見て熊兵士が苦い顔をする。だがすぐに攻勢に出て、四足姿勢に入る。

 「獣人族があの姿勢になったら厄介だ。全力で攻撃する時は皆ああいう体勢になる」

 キシリトが警戒込めた目で熊を睨みながら忠告する。本気モードが四足状態か、そういうところは獣なんだなーと思った。
 
 「五体バラバラに引き裂いてくれる!!」

 熊と、猿も四足体勢のままこちらに飛び出した。スピードは、初期の俺の半分くらいとはタメ張れるくらいだ。素早さ実数値は5桁いくかどうか、速い方だな。
 特にこの熊が集団の中でずば抜けて強い。災害レベルの実力を持ってる。熊の超スピードをアレンはどうにか捉えて、亜音速の蹴りを放つ。それに対して熊は腕を交差させてギリギリ防ぐ。
 が、アレンの超火力に耐えることができず、勢いよく吹き飛ばされる。残心しているアレンの後ろから、猿や馬、狼などが爪・牙を立てて襲い掛かってきた。
 アレンに肉薄する寸前、横からもの凄い勢いで拳が飛んでくる。ソーンがやや肥大化した腕で獣どもを殴りつけた。不意を突かれて転倒する猿たちにさらに追撃にかかる。

 「『神速』からの、『金剛力』!!」

 瞬時に獣どものところに接近し、何倍も強化された物理技をくらわせる。獣どもは咄嗟に守り体勢に入るも、簡単に地面にめり込む形となった。
 そして、スーロンが発達した爪で、動けなくなった獣どもの首を刎ねた。集団の半数を一気に排除した。
 躊躇いなく数人の獣人を殺したスーロンを見た俺は感心した。先程俺が言ったことをしっかり理解し実践できている。さっきの犬もそうだし、殺しに躊躇いは完全に消えている。
 ではあとの二人はどうか?ソーンは首が無い獣の死体を見ても割と平然としている。亜人どもとあの危険地帯で戦ってきた経験が、こういう惨状に対する耐性をつけてくれたのだろう。顔つきも歴戦の戦士みたいだ。年齢と見た目が一致しないな...。
 一方のキシリトは、獣5匹と対峙していて、圧倒的魔力を持って圧倒していた。右手からは灼熱の炎、左手からは色濃い雷を放出して獣どもを焦がしていく。

 「ちくしょう!忌々しい鬼のくせに、こんな、一方的に...!」
 「何だよこの高魔力は!?これが吸血鬼種の力、か...」

 獣どもは悔しさや恐怖を滲ませた声を出しながらキシリトの魔法の餌食となる。あいつも獣人を殺すのに躊躇いが無いな。全員大丈夫だ、と俺は改めて確信した。
 
 「くそ...!同胞が、あんな一方的に...!?」

 少し離れたところで、体がひと回りデカくなった熊兵士が戦慄した表情で苦言する。あれは「限定進化」か。それができるくらいの実力持ちとは、やるなアイツ。アレンは進化してはいない。「雷電鎧」を纏っているくらいだ。

 「鬼族どもが、また我ら獣人族の領地を犯しにくるというのか!?モンストールが発生したとはいえ、お前らが滅んでくれたお陰で多少の領地を確保できた!それをまたお前らが奪いにきた、というのか!?獣人族にとってお前らは、モンストールと同じ悪の種族だ!!」

 熊兵士が冷静欠いた様子でアレンに向かって鬼族への恨み言を喚き散らす。あいつらにとっての鬼族は、今のアレンたちが抱いているものと同じなのだろう。お互いに憎み合っている関係、それがアレンたちと獣人族のそれなのだろう。

 「勝手言わないで。戦争で敗れて領地を奪われただけでしょ?私たちは土地を奪ってもお前たちそのものを虐げたり殺したりはしなかった。だけどお前たちは違う!みんなを虐げている!そこが私たちとお前たちとの悪い違い!だからこうして乗り込んできた!仲間を助ける為に...!」(そして復讐の為に!!)
 最後の言葉は声に出さないで心の中で叫んだ。

 「き、さまあああああ!!」

 逆上した熊兵士はその場で手足をやたらに振り回して、さっきよりも鋭利で大きな斬撃を飛ばしてきた。あの斬撃はGランクモンストールを屠るくらいの威力はある。
 その斬撃を、アレンは冷静に対処する。「見切り」で斬撃を見極め巧みな技術で捌いて受け流し、防ぐ。斬撃の次は、濃縮した炎熱属性の魔力光線が飛んできた。直撃すれば俺でも体に傷がつくレベルだ。
 対するアレンは、「咆哮」に雷電を乗せて空気砲状の遠距離技をとばす。しかしそれでは魔力光線を相殺することはできず、あっさり破られる。だが威力は弱体化している。それを見逃さないアレンではなかった。鎧を纏ったまま「金剛力」を発動。
 その場で力を溜める。その姿勢は、腰を沈めて下半身にも力を入れて...ってあれは俺がやってるやつと同じ...!身体を軽く撓ませて、魔力光線が接近したところで一気に力を解き放って、渾身の一撃を放つ!

 「剛閃!」

 バリバリ!っと音と打撃音が響き、魔力光線を粉々に分散させて消し飛ばした。
 今のアレンの攻撃技は、俺がやった姿勢と似ていた。まさか、真似されるとは。驚かされた。というか、俺以上にきれいな姿勢でのストレート突きだった。あれには学ぶべきところがたくさんあるなぁ。よく見ておくべきだ。

 「俺の、フルパワーを拳一つで...」

 熊兵士が呆気に取られている。その隙を見たアレンは真っすぐ駆ける。すぐに我に返った熊は応戦するも、さっきの大技連発でだいぶ体力を消費したようでアレンに一方的に殴られている。
 四足で距離を取ろうにもあっさり追いつかれ、鬼族拳闘術を何度もくらい、終いには雷電纏った貫手で胸を貫かれ終了した。

 「こ、くおう様...鬼族を、こ、ろ......」


 最期まで鬼族への憎悪を向けたまま、熊兵士は死んだ。これで少し強い兵集団との戦闘は終えた。ここから先はさらにレベルが上がって行くだろうな。まるでゲームだ。戦闘終えたみんなを軽く労って、歩を進める。王国の中心地はすぐそこだ。

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