ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

87話「王毒」

*本編の前に、大幅修正報告!
 30話の解説部分を修正しました。具体的には「海棲族」を鬼族と同様滅亡した、という設定に変えました。ご確認ください。




 俺は蛇のもとへ、アレンはデカ口化け物の方へ。あいつは数日前ザイ―トを運んで逃げた個体だ。そのステータスはSランクだけあって高い。だがここはアレン一人に任せるとする。彼女なら奴にも互角に渡り合えるだろう。
 今気づいたのだが、3匹目のモグラがいない。モグラらしく地中に潜って様子と隙を伺う姿勢に入ったようだ。アレンを狙ってきたら厄介だな。モグラの動向に注意しつつ蛇を倒すか。
 目の前にいる蛇モンストールの全体図がここであらわになる。まるでメデューサやゴルゴーンを思い出されるフォルムをしている。頭部が大きく発達してそこに蛇がうじゃうじゃいる。首から下は人間の形をした身体をしていて胸に目が一つ、腹に口が付いている。完全に化け物じゃねーか、ホントSランクはこんな奴ばっかだな。
 しかもこいつら、「鑑定」で見たのだが、平均能力値10000を超えている。相手に不足...俺はありかなぁ?
 だがこの蛇には、特殊な技能がある...毒属性の固有技能だ。初めて見る。


王毒おうどく」 毒属性。溶解系、気化系、汚染系、薬系、即死系 全性質をそなえた毒。発現直前に希望する毒を思い浮かべるとその性質の毒が出る。使用本体にはこの毒は無効。


 凄い毒だ。というか毒にこんなにも種類があったのが驚きだ。毒で体を溶かされると隙が生じるな。舐めてかからない方が良い。
 蛇が炎熱の光線を吐く。「魔力防障壁」で防ぎ、展開したまま走る。その間いくつもの魔力光線が浴びせられ、闇属性の光線で割れた。こちらも魔力光線を放って応戦する。蛇の光線が切れるまでこちらも放ち続ける。
 10秒程で、ようやっと光線攻めが止んだ。その隙に武装化した左手を構えて、手刀で蛇どもの首を刎ねようとすると、腹の口から毒霧が広範囲に撒かれた。
 毒霧の中に突っ込みそのまま手刀を放とうとしたのだが...

 「―っ!?体が動かない...?」

 空中で突然体の自由が利かなくなり、その場から落下する。全身が思うように動かせない状態...痺れ毒だ。

 「不死の体でも、こういうのは効くんだな...知らなかった」

 毒耐性がついていない俺の体は、いとも簡単に毒に冒されてしまったようだ。この症状からして、筋肉や神経の機能を奪う毒か?
 身動きできなくなった俺を好機と見た蛇どもが再度魔力光線を大量に放ってくる。さっきの形態では壊されるから、範囲を最小限...身体に纏わせるくらいにする。そうすることで、耐久性がグンと上がる。
 炎、氷、雷、光、闇など多属性の光線を浴びて衝撃が走るも体は何とも無い。転がされながらも反撃の機会をうかがう。毒が切れるまであと5...4...3......よし、切れた!すぐに立ち上がって障壁を纏ったまま再度駆ける。こうしていれば毒霧も防げるしな。

 「その固有技能、良いな...絶対喰らって奪ってやろう!」

 脳のリミッター2500%解除。そしてオリジナル技「連繋稼働《リレーアクセル》」を展開。
 右脚前・左脚後ろにした三点スタートの体勢を取り力を秒で溜める。
 溜まったと同時にスタートする。蛇の位置から数十mあった距離を1秒未満で0にしてそのまま思い切り突進する。そこから「リレー技」に繋げようとしたその時、奴の腹にある口から大量の液状の何かが放出される。障壁を纏ったままなので効くまいと思っていたのだが...障壁が、溶けていってる!?

 「これは...溶解液か!」
 液体が地面にふれた瞬間、ジュウウゥと音と煙を立ててるのを見て戦慄する。障壁が溶かされてしまいそのまま体も溶かされていく。あっという間に骨がむき出しになりその骨も溶ける。もの凄い溶解力の毒だ!
 すぐに後退する...が、途中でまた倒れる。痺れたからではない。足が溶けていたからだ。液体踏んでたからな...。
 こちらの身体機能を奪ってくる相手...今まで戦ったこと無いタイプだよホント。不死ゾンビでもこれだけ手間取らせる敵だ。しかも即死性の毒も持ってる。俺は死なないから無効だが、アレンだったら終わってた。真っ先にコイツを相手にしてて良かったわー。
 足が無い俺に蛇どもはまたも...いや、今度は全ての首を束ねて一斉に魔力光線を放ってきた。超極太の、カオスな色をした光線がこちらに真っすぐ向かってくる。

 「俺は魔力も膨大!テメーら蛇が何体にもなって光線吐こうが俺に劣るんだよぉ!!」

 叫びながら手を前に突き出して蛇どものよりもさらに一回り大きい魔力光線を放ってやった。属性は炎熱。だがこれで終わりではない。
 もう片方の手からは嵐魔法を放つ。狙いは蛇ではなく自分の魔力光線。かき消すのではなく炎の勢いを助長させる。
 さらに勢いが増した炎熱の魔力光線は、蛇どもの魔力光線を容易く焼き尽くして、そのまま蛇の首をも焼き消した...!
 同時に両足も再生したので、「瞬神速」で奴の胴体のもとへ。
 腹の口が胎動するのを見てまた毒を吐くようだ。

 「させるかよ」

 「瞬神速」のまま超音速のつま先蹴りを下から叩き込む。それにより強引に口が閉じられてうめき声を上げる...声出るんだ。
 その隙に、再度「連繋稼働」を展開。今度は決める!
 右足に体重を乗せて軸を通す。右腕→腰→体幹→左腕へと繋げていき力を増加・加速させていく。最後に左手を貫手にして、相手の胴体に力いっぱい突き刺す!

 「絶槍《ぜつそう》」

 以前放った「絶拳」の貫手版だ。あえてこれにした理由は、拳だとこいつの体が跡形も無く消えて即死させてしまうおそれがあったから。貫手なら攻撃範囲が狭く、はじけ飛ばさずに済む。俺の目的は最初決めた通り...
 
 「過剰略奪オーバードーズ

 こいつの肉を喰らい、固有技能を奪うこと!いちばん血が出る箇所を食い千切られ、メデューサだかゴルゴーンだか分からない化け物は、絶命した。「早食い」で全体の7割程喰ったところで、残りは灰も残らないよう消し去った。
 厄介な相手だった。毒をもつ敵がここまで面倒で手強いとは。ま、これでその厄介だった固有技能は俺のものになったが。手に入れた技能は、
「王毒」に「毒耐性」 これで俺に毒攻撃が効かなくなった!
 毒は復讐に使えるかもしれない。気化系に薬系、汚染系...どれも相手を苦しめられる最高のアイテムだ!有効活用するぞー!
 
 と、戦利品で喜ぶのはその辺にしといて...残り2匹。辺りを見回すが、アレンとデカ口以外何も無い。あのモグラまだ地中にいるのか。大方、どちらかが弱ったところを刺すといったところか。浅知恵働かせやがって。そっちがその気なら、強引に地上へ引っ張り上げるまでだ!

 大地魔法で俺も地中へ潜る。中にモグラは見当たらない、想定内だ。ああいうちょろちょろ動き回って引きこもるモグラには地上へ出て行ってもらおうか。両側に軽く空間をつくってその中に手を突っ込む。両手には炎熱と重力の複合魔法。巨大な火の玉を出してその外側に重力の膜を張る。そのまま圧縮して火の玉を手のひらサイズにまで縮める。ギリギリと音を立てて今にも飛び出しそうだがまだ溜める。限界まで重力で縛ること約5秒。限界ギリギリで火の玉を左右に放つ。
 その直後、粉塵爆発など目じゃない規模の超爆発が起こった。

 “スーパーノヴァ”

 火の玉を重力の膜で圧縮して飛ばし、その反動で通常の何倍もの威力を発揮するオリジナル魔法だ。ゲームの知識でどんどんオリジナル魔法がつくれるね!

 で、超爆発の効果はというと...地上へ出て上から見ると凄い光景だった。
 俺の周りの地が砂漠と化していた。地中の土が大量に出てきた影響だろう。地面にはさっきの余熱が残っているみたいだ。陽炎が漂っている。で、肝心のモグラは...いた。丸焦げになってるな。腕一本消し飛んでる。
 隙だらけだったので急降下して、「身体武装硬化」で日本刀化した右腕を振るってモグラを細切れに斬り刻んだ。はい、2匹目終了。

 死体を消去してアレンの方を見る。見る限りでは...「限定進化」した状態で戦っている。それでもあのモンストールを倒すには至らない。むしろまだ苦戦しているみたいだ。デカ口のあいつは、能力値平均1万数千と言ったところ。確かにキツイかもな。もう少し近づいて戦況見て、ヤバくなったら加勢しよう。


 アレンのもとへ俺は駆けつける。その背を遠くから見つめる視線には気付かずに...。




コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品