ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

70話「チートにはチート」

 以前のクエストで見た通りの「限定進化」で体がひと回り大きくなったアレン。その彼女の後から遅れて2人ここに来た。
 竜人族のドリュウ。アレンの護衛か、ただの案内か。で、もう一人が...

 「コウガさん...!」
 サント王国の兵士さん...クィンが、そこにいた。エルザレスの屋敷前で醒めることのない催眠魔法をかけたのだが、やっぱり解けてたか。ザイ―トの攻撃で意識刈り取られた時に魔法が解けたな。
 クィンと話すつもりはない俺は、塵が集まって身体が再生するのを待ちながらザイ―トの動きを警戒する。俺の再生現場を見て、クィンもドリュウも目を瞠っているがどうでもいい。
 そして、アレンは...

 「人型の、モンストール...!!」

 いつの間にか戻ってきたザイ―トを睨んでいる。その顔は怒り...というより憎悪といっていい感情で染まっている。その顔をする奴の理由は、よく知っている。俺もそうだったからな......復讐に囚われている奴の、顔だ...。
 アレンの様子を見て、思い出した。アレンと初めて会った時と竜人族の屋敷で聞いた話...過去にモンストールどもに鬼族を滅ぼされ、家族が殺された、ということを。
 まさか、あいつがアレンの里を滅ぼした犯人だったのか?
 自分を睨んでいるアレンに気付いたザイ―トは、アレンの姿と角を見て、意外そうに声を上げる。

 「金角鬼か。戦争していた頃、お前たちには手を焼かされた。今はほとんどいなくなったと聞いたが...こんなところで遭うとはな」

 その言動にアレンは敵意むき出しに口を開く。

 「私たちの里を、家族を殺しておいて、よくそんなふうに言えるな...!絶対に、殺す!」

 アレンの憎悪に燃える様子に、ザイ―トは訝し気に顔をしかめる。

 「随分恨まれているようだな...。お前の里?家族...?」
 まるで、覚えがないといった様子だ。だがすぐに、納得いったように頷いた。

 「そうか、同胞...ああ、俺と同じ魔人族な?その一人が魔族の1つの種族を消してやったと自慢していたが、お前の同胞だったのか、鬼族。
 残念だが、俺はお前の復讐対象ではない。別の魔人族がやったのだろうな...」

 一人納得した様子でいるザイ―トに、アレンは変わらず敵意に満ちた眼で睨む。

 「関係無い。里と家族を殺した奴の仲間で、コウガを傷つけたお前は敵だ...!ここで殺す!」

 戦意と殺気を滾らせて戦闘態勢に入る。だが、ダメだ...。

 「アレン。分かってるだろ?あいつの戦力。前よりだいぶ強くなったアレンでも、あいつに食い下がるのは不可能だ。それどころかワンパンで終わらされるくらいだ。誰も、あいつに張り合える奴はいねーんだよ
 ...俺以外は」
 「...コウガ」

 アレンは振り返って俺を見つめる。悔しさを滲ませているのを見るからに、自分とザイ―トとの格差を実感できてはいるみたいだ。だからこそ、敵わない自分に悔しがらずにはいられない様子だ。

 「コウガの言う通り、私では無理、殺されるだけ。あいつ、次元が違い過ぎる。戦うことすらできないくらいに...」
 ザイ―トを睨んでそう言うアレンと俺のところにミーシャが話に入ってくる。

 「あの強さにもはやランクなど無意味かもしれませんが、あえてつけるとするなら、あれは幻とされている“Ⅹランク”に値、あるいはそれ以上の大災害レベルと言っていいでしょう...」
 「...Ⅹランク...!」

 クィンが戦慄した様子でいる。ドリュウも戦闘態勢でいるが、腕が震えている。ここにいる誰もが、ザイ―トに勝てないと悟っている。
 俺しかいない、奴をどうにかできるのは、ゾンビの、俺だけだ。
 ようやく全身が元に戻り、立ち上がって軽く体操する。

 「カイダ...お前はまだ戦うというのか?あれだけ力の差を見せつけられておきながら、それでも俺に立ちはだかるか?」

 ザイ―トは俺に問う。俺以外の奴らに興味が無い様子だ。敵認定すらしていない。

 「確かに今の俺なら、絶対勝てねーだろなぁ。だから、俺はチートを使って、テメーを超えることにするわ」

 言い終えると同時に、脳のリミッター1000%をあらかじめ解除した状態での「瞬足」で、完全に不意をついてザイ―トの身体を食いちぎり、“捕食”した―!

 わずか1秒。ザイ―トから約30mは離れていたその距離間、俺は奴に接近して肉を喰らって、元の定位置に戻った。
 往復60m。攻撃も含めての今の行動を、1秒程度で完遂。最短記録だ。
 同時に、体が崩壊した。1000%解除の負担はやっぱり凄まじいものだった。全身の骨が砕けて、脳が破裂する感触がした。ミーシャやクィンからにしてみれば、1秒で俺が血まみれになっているような状況みたいで、短く悲鳴を上げる。

 「コウガさん!?どうして血まみれに...!?」
 「チートな力の代償だ。気にするな、すぐ元通りだ」
 
 短く返事して肉を飲み込む。同時に、身体がまた変化した。全身から赤い瘴気が漏れ出して、肌が変色していく。自分が別の種族になっていく感覚だった。
 赤紫がかった線がはしる筋肉質の身体。そんなに見た目は変わっていないが、中身が大きく強く変化したのが分かる。

 「また、俺の肉を...!やってくれたなぁ」
 ザイ―トはそんな俺に若干怒気がはらんだ声をかける。

 「テメーのマズイ肉を喰ってでも、俺は無限に、急速に強くなってみせる。チートは俺一人で十分だ!
 さて、能力値はどうなったかなっと...」

 獰猛に笑ってみせる俺に、ザイ―トは俺のステータスプレートを見て、また声をかける。
 「そのステータスプレート。もとは魔人族の技術によって生み出された物だ。魔力を込めた世界一頑丈な鉱石を素体にしているから、壊れることはない。
 だが、そのプレートは随分安っぽい素材でつくったようだな?お前、自分の種族が屍族だってこと知らなかったのだろ?もしかして、復活してから、そのプレートに己の血を流していないのではないか?」

 ここでまたザイ―トが新事実を明かす。ミーシャとクィンが驚いている中、俺はプレートを見る。そこには種族が人族、職業がゾンビと、変わらず記されている。
 だが、それが正しくない表記だとすれば、このプレートが俺のステータスを正確に計っていないのだとしたら?
 ザイ―トが言った内容を思い出して、俺はプレートに自分の血を垂らす。するとプレートが淡く輝き、色々内容が書き換えられていった。すぐに、俺の正しいステータスが、映し出される。


カイダコウガ 17才 屍族 レベル600
職業 片手剣士
体力 1/88800
攻撃 66500(7589000)
防御 53000(6729000)
魔力 50000(6576800)
魔防 51200(6615700)
速さ 78700(9960000)
固有技能 全言語翻訳可能 逆境超強化 五感遮断 自動高速再生 過剰略奪《オーバードーズ》 制限完全解除 瞬神速 身体武装硬化 魔力防障壁 迷彩(+認識阻害、擬態) 複眼 夜目 危機感知 気配感知(+索敵) 早食い 鑑定 見切り 剛撃 炎熱魔法レベルⅩ 嵐魔法レベルⅩ 水魔法レベルⅩ 重力魔法レベルⅩ 大地魔法レベルⅩ 暗黒魔法レベルⅩ 魔力光線全属性使用可 武芸百般 技能具現化
 
 とうとう人間卒業、俺は屍族となった。レベルもかなり上がり、能力値も固有技能も色々変わった。
 まず「逆境超強化」。超という文字があるだけに、能力値に大きく変化が見られた。
 今までの逆境強化では、能力値が10数倍くらい強化される仕様だったのだが、今では、数100倍も上昇している。今の俺の能力値は7桁台になってしまっている。

 次に「過剰略奪」。その性能も大きく強化されていた。
 従来の「略奪」は、相手の固有技能をその性能のまま奪うものだったが、今のこいつは、奪った技能の性能を強化して書き換えることができる。奪って強くさせる、なんてせこい技能だ。

 さらに「制限完全解除」。今までは1000%までが、リミッター解除の限界値だったが、これでさらに数倍、数十倍へと強化できるようになった。

 強い。まだまだ強くなれる。ここからでもさらに強くできる。
 あいつの肉を、全部喰えば、もっと強くできる。

 「...凄い。コウガ、とても強くなってる」
 「こ、こんなステータス、初めてみました...!7桁台の能力値なんて...前代未聞です...」
 「次元が違い過ぎる...ここまで強化されるなんて...」

 おい。アレンはともかく、何クィンやお姫さんまでプレートを覗いてんだ。馴れ馴れしく顔近づけてんじゃねーよ。馬鹿なのかこいつら。

 「これは...!族長をも軽く凌駕している。異次元の強さだな...」

 ドリュウも見てたんかい。どいつもこいつも...。

 「よし、これならテメーに食い下がるくらいはできるだろう。テメーの肉もっと喰って、さっさとテメーを凌駕する戦力を手に入れてやんよ!」

 「調子に乗るな...今度は細切れにして瓶詰にしてやろう」


 両者ともに闘志・殺意全開にして、飛び出す。
 ラスボスであろうクソチートに、再び挑む―!

コメント

  • カイガ

    是非見させていただきます☆

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  • 水野真紀

    おもしろいじゃねーかーだか俺も負けてられねーだから見てくれー

    0
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