ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

66話「瞬殺」


お母様とコウガさんから十分に距離とってから(どこへ逃げてもあまり変わらないかもしれないけれども、そうすることしかできない)、特殊な眼鏡をかけることで発現する固有技能「遠見」で、コウガさんと災害レベルのモンストール群との争いを見ていた。

 その光景は、常軌を逸していた。人族の範疇を大きく凌駕する身体能力を発揮して、膨大で濃密な魔力を放出して巨大なモンストールを圧倒していた。

 あんな魔力光線を人族が放つことなど不可能だ。それをやってのけたコウガさんは、本当に人族ではなくなってしまったのだろうか?

 そんなコウガさんが、一瞬の隙を突かれて、死んだと思われたモンストールに拘束されてしまう。それを好機と言わんばかりに、残りのモンストールが一斉に攻撃した。それを見た私は思わず悲鳴が漏れた。Sランクモンストール4体もの攻撃をあれだけくらって生きてられるとは思えない。

 ...普通の人族なら。「彼」は違った。普通は考えもつかないような技で、あの猛攻を凌いで見せた。

 私は、ただただ呆然とその光景を見ているだけだった。あそこに少しでも近づけば、私は塵と化していただろう。

 そう思いながら、全身黒く染まったコウガさんがさっきよりもさらに速く動いて、さらに凄まじい膂力で4体ものSランクモンストールを圧倒しているのを見ていた...。





 500%を超える「制限解除」は初めてかもしれない。体のどこかがミシリと音を立てた。負担が半端じゃない。生きている人間がこんなことすれば、死ぬか廃人化のどちらかだっただろう。

 リスクを冒してる今、短期決戦が最善だ。目の前にいる4体の敵を睨み、全身凶器と化した体を使って、攻勢に出る!

 まずは、片腕がもがれて苦しそうにしているゴリラ鬼に的を絞る。

 今なら100mを1~2秒程で走られそうだ。5歩で的のところに着いて、肘に付けた推進機で加速した左腕の全力ストレートを奴の脳天に叩き込む。

 パンと音を立てて、中身をぶちまけてゴリラ鬼は絶命した。

 が、さっきのTレックスのことがあったので、魔力をたくさん込めた光属性の魔力光線を放って塵にするという過激な死体蹴りをやってやった。

 跡形も残らず消えたのを確認してから、さっき怪獣の光線をくらって墜落した翼竜に一瞬で接近して、軽く上へ跳んで、狙い先をまたも脳天に定めて、左脚を大きく上に上げたまま急降下して、思い切りかかと落としをおみまいしてやった。

 もの凄い爆発音が辺りに鳴り響き、同時に翼竜の血と脳みそも飛び散った。

 そしてこいつにも、魔力光線を放ち、骨も残さず消した。


 魔力光線を放ったその一瞬の隙を突いて、ペガサスがまた突進してきた。

 こいつはただ単に突進しているわけじゃない。自分の進路、標的の周囲限定で重力魔法をかけて拘束してきている。これで躱すことを封じて、確実に一撃必殺を決めにくるのだ。

 ペガサスの角には、全属性魔法をも付与することが可能らしく、今はその角には光属性が付与されていた。

 蒸気機関車みたいに鼻息を荒げさせながらまっすぐこっちに突っ込んでくる。俺は無表情で受け止める姿勢を取り、ペガサスの突進を角を掴んで受け止めた。光魔法による光熱にも「硬化」した手なら耐えられる。

 素手で止められて狼狽気味に声を上げるペガサスの首を食いちぎり、ペガサスの技能を「略奪」した。どんな技能が奪えたのかは後で確認するとして、首から勢いよく出血して悶え苦しんでいるペガサスに炎熱魔法を放つ。




 「炎の渦フレイム・プリズン

 ごうごうと巨大な炎の渦巻きが発生して、ペガサスを飲み込む。悲鳴を上げる間もなく、ペガサスは焼き消えた。

 これで4体殺した。あとは火を吹く怪獣型のみだ。瞬間移動の如く、最後の標的の真後ろに回り込む。

 危険を察知したのか、怪獣は背中の甲羅から鋭利な棘を生やして咄嗟に防御態勢に入った。よく見ると、こいつ亀を素体とした怪獣か。特撮で見たことあるな。

 棘だらけの甲羅にもお構いなしに、俺はゴリラ鬼の時と同じ要領でストレートを叩き込む。

 ドゴッという衝撃音とバキバキッと棘を破壊する音が同時に鳴り響く中、俺はその甲羅を砕けずにいた。固いな。どうやらこの怪獣だけ他の4体より強いみたいだ。

 が、強いといっても「少しだけ」だ。体の頑丈さが優れているみたいだが、さっきのを何発も入れればどうなるかな?

 「というわけで、連続全力ラッシュ」

 休む間もなく、甲羅に連続攻撃...するはずもなく、またも回り込んで、今度は怪獣の腹に、さっきのストレートを数十発、僅か3秒で叩き込んだ。

 もの凄い破裂音が何回か響いたあと、ミンチになった怪獣の死骸がそこにあった。そして俺の口には、怪獣の肉があった。殴っている途中でちゃっかり捕食し、奴の技能の何かを「略奪」した。

 例によって魔力光線で死骸を消し去り、5体ものSランクモンストールを全員殺した。
 だが、今までのは前哨戦。ここからが、本場だ。

 「よぉ、テメーの下僕どもぶっ殺したぜ?あとはテメーだけだ」

 挑発するように言ったが、人型はなおも愉快気な笑みを張り付けたままでいる。

 「下僕じゃない、同胞だ。それにしてもあいつらをああも苦労せずに葬るとは。俺の技能を存分に振るって殺してくれやがって...」


 ここで、初めて人型から殺気が感じられた。いよいよ動くか。


 「ま、俺もお前のかつての同胞を殺してからここに来たからな。お相子といったところだ」

 「...何?」

 「ここに来る途中の街でお前と同じ年頃の人族3人が俺に攻撃してきたから、軽く捻ってやった。そしたら死んでしまったよ、くく...」

 こいつ、まさか俺の復讐対象対象を!?あの時、鈴木や井原をはじめとする元クラスメイトどもの中にはいなかった奴らのうち3人に違いない。名前は完全に忘れたが。

 「そいつらは、俺が殺すつもりだったゴミどもだったのに、人の復讐対象殺しやがって...」

 こいつに対する恨みポイントが加算された。殺す理由ができたな。

 「なんだ、仲間ではなかったか。まぁいい。じゃあそろそろ俺が相手してやろう。この国とこの大陸を完全に落とす前にお前を消すとしよう」

 人型が放っている殺気がまた濃くなった。俺も戦闘態勢に入る。


 「そういえばまだ名乗ってなかったな。


 俺はザイ―ト。お前らの言う全てのモンストールの頂点に君臨する者だ」
 「俺は甲斐田皇雅。異世界人だ」
 「何...?」

 人型モンストール改め、ザイ―トが俺の発言に疑問の声を上げていたが、スルーして走りだす。

 様子見はしない。ヤバい奴だってことはもう分かっている。

 リミッター解除率はさっきのまま...いや、さらに50%上乗せだ。体が壊れる前に決着をつけなければならない。

 推進機の出力を魔力で数倍にはね上げる。走る速度も殴る速度も、音速を超える領域に入った。

 手の形を手刀にして、奴を真っ二つに斬りつけるイメージを描く。よし、いける。

 駆ける。そして奴に手が届く間合いに入る2~3歩のところで左腕を前に構えて勢いよく手刀を振るう!

 

 先手必勝―!これで行動不能にして―



















 「俺の技能で、俺を殺せるかよ」




 ―振るおうとした直後、首に違和感が。というか、あれ?何で俺の体だけが下に―?








  瞬間、目の前が真っ暗と化した同時に意識が暗転―



コメント

  • カイガ

    ご指摘ありがとうございます!

    0
  • 熊猫

    テメーの(下)僕ども
    下が抜けてる?

    0
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品