ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

46話「殺戮ゾンビ」

 まずは、山本・片上といこうか。都合よく2人同じところに立ってくれている。

 山本には、体育の授業、特に球技種目の時に、どさくさに紛れて蹴りやタックルをかましてくれたな。抗議しても、周りのクズどもを味方につけてシラを切ってくれたな。
 数年間積み重ねてきたその陰湿な暴行への報復を、今ここで1億倍にして返す...!

 片上には、1年生の頃からこいつは害だと認識していた。
 このゴミカス野郎は、一定期間、特定の生徒をイジり続けるという胸糞悪い下種習慣を繰り返していたのだ。二学期頃、次の対象を俺にしてきて、俺をイジりにきた。当然俺はそれを良しとせず、クラスメイトどもの前で、胸倉つかんでその行為を止めさせた。
  その翌日以降、あのゴミカス野郎は、俺を敵視してことあるごとに俺に嫌味な態度・言動をとってきて、いつしかそれに同調したゴミどもとつるんで俺へのヘイトを溜めまくることをしていた。
 自分の悦楽のために、俺を不快にさせたこと、ここでも地獄でも後悔させてやろう...!

自分たちに目を向けられていることに気付くと、声を上げて俺から離れようとする。馬鹿が、逃がすわけないだろ。
 数歩で2人の進行方向に回り込み、足元に斬撃を放って両脚を切断する。


 「「ぎゃあああああああああああああああ!!!?」」
 

 2人とも絶叫して倒れる。涙と涎でぐちゃぐちゃのキモい顔だ。
 

 「痛いか?これでも加減してるんだぞ?本気で攻撃したら、お前らなんか簡単に塵にしてしまうからなぁ。緻密な力のコントロールってホントしんどくてな、ここにくるまで魔物やモンストールを相手に練習してきたんだ。お前らを苦しめて苦しめて、絶望を味わってもらうためにっ!!」
 
 そう言って、傷口をやすり状と化したつま先で山本と片上のを交互にグリグリと抉る。むき出しになった神経を直接抉られるような激痛に2人は大泣きしながらのたうち回る。

 「ああああああああああ!!!」
 「痛い痛い痛い痛いいいいいいい!やめてぇえええええ!!!」
 「ぶっははは!こういう展開をずっと待ってた!この為に俺はこの国に戻ってきたんだ!
 てゆーかおいおい、ここで折れたりしないでくれ!?俺はこれ以上の悲惨な目に遭ってきたんだぜ?廃人になったっておかしくないくらいになぁ!まだまだいくぜぇ!!」
 

 その後、両手の全ての指、両耳を切り落とし、拳圧で全身を叩きまくる。
 一撃ごとに悲痛の叫びが上がる。2人が俺に向けている感情は。怒りや憎悪などはなく、恐怖と絶望に染まっていた。俺の時は、痛めつけられながらも憎悪の炎を絶やさなかったというのに、張り合いがねーな。

 「お前らには!学校でもここでもたくさん不快な思いをさせられたなっ!
 体育の時間で、俺を隠れて蹴ったりどついたりして嫌がらせして、しかも上手いこと隠蔽してくれたなぁ、山本ぉ?
 なーにが、何ムキになってんの?こんなのただの遊びだろが。マジになってんじゃねーよ』だよ片上ぃ?テメーは冗談や遊びだと思っててもなぁ、ソレをされた者にとっては深く傷つけられることにもなるし、殺人動機にもなったりもするんだよぉ...今みたいになぁ!!
 しかもテメーら、進級後も俺にちょっかいかけてきたよな? 私物を汚され、殴りにきて、クラスで孤立させられたっけ?
 そしてこの世界では、リンチして、最後は俺が落ちていくのを嗤いながら見学してたりとかなぁ!スゴイわ、ここまで俺に憎悪の念を向けさせるとか!スゲーよお前らは、俺をここまでぶち切れさせたんだからよぉ!だから、俺は今までの分を全てお前らに返してやるよぉ!!」

 ゲラゲラ笑いながら拳圧を飛ばしているうちに、2人とも全身血まみれで虫の息だった。うん、もうここらで殺すか。これ以上小突いたらもう死にそうだし。

 「もう飽きたし、そろそろブチ殺すわ。遺言は言う気ないだろ?ってか聞きたくねぇ。俺にちょっかいをかけて不快にさせたことが、お前らの人生でのいちばんの間違いだ。...死ね」

 最後の言葉は氷のように冷たく言って。手刀を振り下ろす。

 「待っで!謝る!謝って償うから、赦して、殺さないで―
 「ごめんなざい!もう絡まないがら、二度と嫌がらせじないがらっ、見逃じ―

 最期の命乞いの言葉に耳を貸すことなく、心臓を一突きに刺す。ゴポッと赤黒い血を吐いて、二人はただの燃える粗大ゴミと化した。

 「よし、あと3人!」
 
 たった今クラスメイト2人殺したにもかかわらず、俺は爽やかに笑ってみせた。
 気持ちいい!生きている中では一度も味わえなかったこの爽快感!自分で慰める行為の数倍気持ちいいわ―!ムカつくゴミをこうやってぶっ殺すのってこんなにも素晴らしいことだったんだな!!異世界で力を手に入れたことでここまでのことができるんだな!今、俺は異世界に呼ばれて本当に良かったと強く思っている!!!
 さて、感傷に浸るのはここまで。続きは全員殺した後。次は...

 目を向けた先に安藤がいた。たった今気が付いたらしく、俺を見るなり、ヒッと息を詰まらせ、へたり込んだまま後ずさる。
 俺は無言のまま、安藤のところへひとっ飛びで着き、左手に紫色の電気を発生させる。それを見た安藤はさらに悲鳴を上げ、激しく後ずさるが、瓦礫に阻まれ退路が断たれる。絶望の表情を浮かべる彼女に、俺は淡々と話しかける。
 

 「お前には、散々魔法を撃ち込まれまくったっけ。背中や腕が爛れまくってたよ。痛かったなぁ。学校でも大西と一緒になって俺を陥れたりしてくれたなぁ。部活のシューズを切り刻まれた時はさすがに殺害しようかと思ったよ。だけど、今ならそれができる!素晴らしい日だ!さぁ、たっぷり痛めつけたる!」

 意気揚々と喋る俺に安藤は青ざめた顔で話しかける。

 「ねぇ、待ってよ!クラスメイトだよ?しかも女の子の私を殺すっていうの?シューズだって、悪気なくて、甲斐田君に構って欲しくて...」
 「二枚舌で喋るのは勝手だが、もう少しマシな嘘つけよ。相手が女だからといって、楽に死ねると思うな?ただただ、苦しめ。」

 左手に溜めてた電気を放つ。いきなり黒焦げにしてしまえばすぐ殺してしまうので、皮膚がボロボロになる程度に抑える。あー、魔法の加減とかさらに神経つかうんだよなぁ。けど、こいつには魔法で痛めつけたい。あの訓練場でのお返しとして、今度は俺がこいつに魔法を浴びせるのだ!
 電撃、炎、泥弾、風弾など色々魔法を撃ちまくる。一息ついて中断したころには、全身ズタボロ、文字通り血まみれのボロ雑巾になってた。女にとって、肌をボロボロにされるのは屈辱で苦痛だろうな。女の尊厳もズタボロだなw
 もういいか。殺そう。右手で光線魔法を撃つ準備をする。その様子を見た安藤は、必死に醜く泣き叫ぶ。

 「甲斐田く...皇雅様!!これまでのこと、赦して下さい!何でもするから、私の体も好きにしていいから!全部謝る、反省してます!!お願い皇雅君!赦して下さい...!!!」

 彼女の懇願を聞き流して、ゴミを処理するかのように光線を放つ。瞬きした後には、安藤の顔が上半分吹き飛んでいた。

 「あ...か、か、か...。........」
 「アホ通り越して愚かかテメー。誰がテメーみたいな存在ブスを抱くかよ。死んどけ。」

 顔が消滅した安藤の体が力なく倒れる。3人目殺害完了。次は、あいつにするか。レンガ造りの建物で蹲っている鈴木のところへ行く。俺に気付いた鈴木は、涙を流しながらまた命乞いをする。

 「甲斐田君...違うの...。みんなが、あんたをハブりたいって言って、あたしが協力しなきゃ、あたしもハブるって言ったから、仕方無くて。だから、あたしも被害者なの!あたしは甲斐田君を陥れたくはなかったけど、自分の保身を優先して...。とにかくごめんなさい!!」

 この時、俺は白けた目を向けたまま、上着の左ポケットからある物を取り出した。
 それは、マスコミとかが持ち歩いているボイスレコーダーのような小さな機械だ。見た目通り、これは人の声を自動的に録音する“真実の口”というアイテムだ。
 最初に殺したモンストールをゾンビ化させて、モンストールの巣から逃げ帰る途中、特殊なモンストールが現れた。そいつを捕食して手に入れたのが、「真偽判定」という特殊技能だ。文字通りのこの技能に「技能具現化」してみた結果、ボイスレコーダー型のアイテムとなったのだ。
 こいつは、常に他人の声を何でも自動録音するから、咄嗟に告げられた言葉も録音できるという強みがある。ただの技能では咄嗟の発言を判定できない分、アイテム化はとても便利だ。さらに、発言内容が嘘だった場合、このレコーダーが発言者の声色で本当のことを告げるのだ。噓発見器の完全上位互換だ。
 さて、そんな便利アイテムをここで出したということは、今の鈴木の発言かどうかを判定する。ま、使うまでもなくこいつの発言は嘘だろうが、本人の前で自分の本音を暴露したらどんなリアクションをしてくれるか興味あるので、あえて使うぜ。
 ボタンを押せば、最後に発言した奴の言葉を判定する。ここは鈴木のあの言葉だ。さーて、どんな本音が聴けるのかな?俺は愉快気にボタンを押した。

 “この男をハブってやれば、クラスの空気も少しはマシになるよね!こんな空気読まず協調性のない男なんかクラスに必要無いのよ!せいぜいみんなから嫌われて惨めな思いをすればいいのよ!!”

 「......え?」
 「ふーん、これがお前の本音かぁ。ありがとな教えてくれて。さっきの発言が大嘘だってことがよーく分かったぜ?」

 自分の声で自分の本音をわけのわからない機械に暴露されたという事態が理解できていないらしい。慌てて弁明しようとする。
 「ち、ちが...う。そんなこと―」
 「思ってんだろ?無駄だぞ。このレコーダーは、お前の本音を赤裸々に暴露するアイテムでな?いくらホラを吹いても俺を欺くことはできねーんだよ。」
 白けた目で見下して淡々と事実を突きつける。しばらく呆然としていたが、正気に戻ったかと思えば、堰を切ったかのように喚き出す。

 「そうよ...その通りよ!あんたなんか私たちのクラスには不必要だった!消えて欲しかった!輪を乱すゴミよあんたは!!あの時、廃墟の崩落とともに落ちていくあんたを見て、内心喜んでたわよ!!やっとクラスにとって邪魔な奴が消えてくれたって!!誰も、あんたなんか生きてほしいなんて思っていない!!仲間だなんて思っていない!!あんたみたいなクズ―
 ―スパッ
 ガ...が、ガ......」
 「何だよ、ちゃんと本音を言えたじゃん。」

 喚き声があまりにも耳障りだったので、手刀で首を一気に刎ねた。そして飛んだ首を手刀のまま切り刻んだ。顔も見たくねぇ。

 「お前の言葉に一つだけ共感した部分があったよ。俺もクラスメイトの誰一人とも、“仲間”だなんて思っちゃいねーよ。」

 これで4体への復讐を完了した。残りの、いちばん最低最悪のゴミには、とびきりスペシャルな手法で苦しめて殺そうか...。
 瓦礫に埋もれてのびている大西を見やって俺は残酷に嗤ってみせる。


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