ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる
41話「鬼族の生き残り」
「俺は甲斐田皇雅だ。冒険者名はオウガで通っている。」
「オウガ...最近人族で有名になってるSランク冒険者か。
んー、妙だな。お前からは“戦気”が感じられない。それどころか生きている人族の気配が感じとれない。他の二人からは普通に感じられるのだが。お前、生きてるのか?」
俺とアレン・クィンを交互に見て、不審そうに尋ねる。
戦気(せんき)とは、魔族にしか感じ取られないもの、戦闘力を示す気配値?的なものらしい。
「俺は、一度死んでる。何でかは分からんが、ゾンビとしてこうして生きてるように過ごしている。」
「ゾンビ...聞かない種族だ。見た目からして人族か。世界にはまだ不可思議なこともあるものだ」
それきり俺のことに触れなくなった。何かサバサバした族長だな。精神年齢も若そうだ。
「アレン・リース。鬼族の生き残り」
「クィン・ローガン。サント王国の兵士です。王の命で、二人とともに行動しています。」
二人も簡単に自己紹介する。エルザレスはアレンを見て、「ほう」と驚いた声をあげる。
「アレンとやら。お前の角...金角鬼か。数年前にモンストールの襲撃で絶滅したと聞いたが、生き残りがいたのか。
鬼がここに来る理由、彼らのことだな?」
族長の問いかけにアレンは頷く。
「全員、今どこにいるの?」
「俺の家だ。20人分の部屋がある屋敷でな。みんな不自由なく過ごしている。」
その言葉を聞き、アレンは安心する。
「鬼族は、魔族によっては隷従させられていると聞いていますが、この国ではそんなことはないようですね」
クィンがそう尋ねてくる。前にもそう説明してたな。
族長はクィンを見てやれやれと息を吐いて答える。
「人族には、魔族が他種族同士が険悪で、いつも争いをしているってイメージがついてしまっているようだな。否定はしない。昔はその通りで、常にどこの魔族も領地争いを続けてきた。俺たち竜人族もかつては鬼族と戦ったことがあったな。
だが、この国に奴隷制度は無い。他種族に対して隷従させることは禁じている。あいつらとは、好敵手として関係を築いてきた。奴隷にするなどとんでもない」
少しクィンを睨んで言う。彼女は失言したと頭を下げて謝罪する。
だが、特に怒った様子は見せずに、話を続ける。
「今の鬼族を殺したり隷従させている魔族といえば、恐らく獣人族か亜人族だな。あいつらは鬼族に辛酸を舐めさせられてきたから、恨みを持っていてもおかしくない。モンストールの襲撃に追従して鬼どもを狩っているかもしれない。
...ただ、あの2国は内戦国としても有名でな。今もそれぞれいくつかの派閥ができて内戦が続いていると聞く。」
魔族は、まるで戦国時代の日本のようだな。各地で戦国大名が領地を広げるべく戦を起こし続けているところとかが。
しかし、獣人族が鬼を、ねぇ。最近までイードにいたのに、獣人族のところに行こうという発想はなかったな。確認で行ってみたらよかったな。
「あんな国だが、中には鬼族の庇護派の連中がいると聞く。用があるならそいつらと会うがいい。
それより、今日は会いに来たのだろう?生き残りのあいつらと。ついてこい。会わせよう。」
そう言って俺たちを家に案内してくれる。アレンは先程から落ち着きなくそわそわしている。仲間と久しぶりの再会だ、無理もない。
「というか、人族の俺とクィンをこうもあっさり通してくれたんだな?いちおうよそ者だぞ?」
前を歩く族長に近づいて声をかける。
「ドリュウが連れてきたということは、お前が実力で奴を負かしたということ。そいつがどんな奴なのか単に興味が湧いた、それだけだ。
それに、竜人族はそんなに排他的でもなければ、鎖国体制でもない。まぁ、そう思ってるのは俺の家族ぐらいだろうが」
そう答えたきり、無言で前を歩く。俺はその後も他の竜人どもに好奇の視線に晒されながら後に続いた。
*
 族長エルザレスの居住地に着いた。家というより、屋敷だ。20人どころか、その倍近くの客を泊めさせることができるくらいだ。
が、よく考えれば、人族よりデカい竜人のこいつらにとっては、これくらいの規模は当たり前か。族長だって俺の身長の1.5倍はあったもんな。ドリュウもそれくらいはありそうだし。
つーか、見間違いかと思ったが、屋敷の後ろに竜の顔が見えた。銅像かと思ったら、身じろぎした。生きてる。
「ペットだ」
と、ドリュウが短く解説する。ペットのレベルを超えてるわあんなの。図鑑で見たことあるあの首の長い恐竜(ブラキオサウルス?)みたいなやつがペットって...。
そのまま屋敷内へお邪魔して、「竜人」が50人は収容できるくらいの広間へ案内され、中央のテーブルの席に着く。
「鬼どもをここに連れてくる。待ってろ。」
族長はそう言って広間から姿を消す。
アレンは、座ってからもずっと落ち着かない様子だった。それをクィンが手を握るなどして宥めている。
「ここは何人家族なんだ?」
隣に座っている竜人―ザレイドという男に聞いてみる。
「10人家族だ。父の番が3人いる。子どもは俺含めて6人だ。
異世界の貴族とか国の長では常識らしい一夫多妻制を存分に堪能しているようで。竜人とはいえ、10人でもこの広さは尋常ではないと思ったのだが、他の竜人がしょっちゅう泊まりに来るからこの屋敷だそうだ。
しばらくして、扉の開く音とともに族長が戻り、その後ろから5人の人物が入ってきた。
「あ...!!」
アレンが席を立ち、驚きと嬉しさが混ざったような声を出す。
「セン!ロン...!ギルスに、ガーデル、ルマンドも!」
名前を呼んで5人の鬼族の男女のもとへ駆ける。彼らはその場で輪になるように抱き合う。アレンは泣きながらよかったと何度も呟き、女性の鬼が涙を浮かべながらアレンの頭を撫でる。男の鬼二人はその様子を笑顔で見守る。その目にも涙が浮かんでいた。
アレンの仲間との感動の再会が果たされた瞬間だった。
クィンがその光景をみて目をうるうるさせていた。俺は何も思うこと無く、ただアレンを黙って見つめていた。
「オウガ...最近人族で有名になってるSランク冒険者か。
んー、妙だな。お前からは“戦気”が感じられない。それどころか生きている人族の気配が感じとれない。他の二人からは普通に感じられるのだが。お前、生きてるのか?」
俺とアレン・クィンを交互に見て、不審そうに尋ねる。
戦気(せんき)とは、魔族にしか感じ取られないもの、戦闘力を示す気配値?的なものらしい。
「俺は、一度死んでる。何でかは分からんが、ゾンビとしてこうして生きてるように過ごしている。」
「ゾンビ...聞かない種族だ。見た目からして人族か。世界にはまだ不可思議なこともあるものだ」
それきり俺のことに触れなくなった。何かサバサバした族長だな。精神年齢も若そうだ。
「アレン・リース。鬼族の生き残り」
「クィン・ローガン。サント王国の兵士です。王の命で、二人とともに行動しています。」
二人も簡単に自己紹介する。エルザレスはアレンを見て、「ほう」と驚いた声をあげる。
「アレンとやら。お前の角...金角鬼か。数年前にモンストールの襲撃で絶滅したと聞いたが、生き残りがいたのか。
鬼がここに来る理由、彼らのことだな?」
族長の問いかけにアレンは頷く。
「全員、今どこにいるの?」
「俺の家だ。20人分の部屋がある屋敷でな。みんな不自由なく過ごしている。」
その言葉を聞き、アレンは安心する。
「鬼族は、魔族によっては隷従させられていると聞いていますが、この国ではそんなことはないようですね」
クィンがそう尋ねてくる。前にもそう説明してたな。
族長はクィンを見てやれやれと息を吐いて答える。
「人族には、魔族が他種族同士が険悪で、いつも争いをしているってイメージがついてしまっているようだな。否定はしない。昔はその通りで、常にどこの魔族も領地争いを続けてきた。俺たち竜人族もかつては鬼族と戦ったことがあったな。
だが、この国に奴隷制度は無い。他種族に対して隷従させることは禁じている。あいつらとは、好敵手として関係を築いてきた。奴隷にするなどとんでもない」
少しクィンを睨んで言う。彼女は失言したと頭を下げて謝罪する。
だが、特に怒った様子は見せずに、話を続ける。
「今の鬼族を殺したり隷従させている魔族といえば、恐らく獣人族か亜人族だな。あいつらは鬼族に辛酸を舐めさせられてきたから、恨みを持っていてもおかしくない。モンストールの襲撃に追従して鬼どもを狩っているかもしれない。
...ただ、あの2国は内戦国としても有名でな。今もそれぞれいくつかの派閥ができて内戦が続いていると聞く。」
魔族は、まるで戦国時代の日本のようだな。各地で戦国大名が領地を広げるべく戦を起こし続けているところとかが。
しかし、獣人族が鬼を、ねぇ。最近までイードにいたのに、獣人族のところに行こうという発想はなかったな。確認で行ってみたらよかったな。
「あんな国だが、中には鬼族の庇護派の連中がいると聞く。用があるならそいつらと会うがいい。
それより、今日は会いに来たのだろう?生き残りのあいつらと。ついてこい。会わせよう。」
そう言って俺たちを家に案内してくれる。アレンは先程から落ち着きなくそわそわしている。仲間と久しぶりの再会だ、無理もない。
「というか、人族の俺とクィンをこうもあっさり通してくれたんだな?いちおうよそ者だぞ?」
前を歩く族長に近づいて声をかける。
「ドリュウが連れてきたということは、お前が実力で奴を負かしたということ。そいつがどんな奴なのか単に興味が湧いた、それだけだ。
それに、竜人族はそんなに排他的でもなければ、鎖国体制でもない。まぁ、そう思ってるのは俺の家族ぐらいだろうが」
そう答えたきり、無言で前を歩く。俺はその後も他の竜人どもに好奇の視線に晒されながら後に続いた。
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 族長エルザレスの居住地に着いた。家というより、屋敷だ。20人どころか、その倍近くの客を泊めさせることができるくらいだ。
が、よく考えれば、人族よりデカい竜人のこいつらにとっては、これくらいの規模は当たり前か。族長だって俺の身長の1.5倍はあったもんな。ドリュウもそれくらいはありそうだし。
つーか、見間違いかと思ったが、屋敷の後ろに竜の顔が見えた。銅像かと思ったら、身じろぎした。生きてる。
「ペットだ」
と、ドリュウが短く解説する。ペットのレベルを超えてるわあんなの。図鑑で見たことあるあの首の長い恐竜(ブラキオサウルス?)みたいなやつがペットって...。
そのまま屋敷内へお邪魔して、「竜人」が50人は収容できるくらいの広間へ案内され、中央のテーブルの席に着く。
「鬼どもをここに連れてくる。待ってろ。」
族長はそう言って広間から姿を消す。
アレンは、座ってからもずっと落ち着かない様子だった。それをクィンが手を握るなどして宥めている。
「ここは何人家族なんだ?」
隣に座っている竜人―ザレイドという男に聞いてみる。
「10人家族だ。父の番が3人いる。子どもは俺含めて6人だ。
異世界の貴族とか国の長では常識らしい一夫多妻制を存分に堪能しているようで。竜人とはいえ、10人でもこの広さは尋常ではないと思ったのだが、他の竜人がしょっちゅう泊まりに来るからこの屋敷だそうだ。
しばらくして、扉の開く音とともに族長が戻り、その後ろから5人の人物が入ってきた。
「あ...!!」
アレンが席を立ち、驚きと嬉しさが混ざったような声を出す。
「セン!ロン...!ギルスに、ガーデル、ルマンドも!」
名前を呼んで5人の鬼族の男女のもとへ駆ける。彼らはその場で輪になるように抱き合う。アレンは泣きながらよかったと何度も呟き、女性の鬼が涙を浮かべながらアレンの頭を撫でる。男の鬼二人はその様子を笑顔で見守る。その目にも涙が浮かんでいた。
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