ゾンビになって生き返ったので 復讐してやる

カイガ

3話「ドラグニア王国」


 「...化け物と戦う?どういうこと?意味分からなすぎる。説明してくれるんだよなぁ?」


 と、やや裏返った声で今話しかけた少女に尋ねたのは大西だ。俺を含むほぼ全員が思っていることを第一に口に出した。
 

 「はい、もちろん説明します。まずは場所を移しましょう。」
 
  少女はそう言うと、隣にいる青年に相槌するとこちらにお辞儀をして、奥のドアへ移動する。そして今度はその青年がまたよく通る声で俺たちに話しかけてきた。
 

  「余はマルス・ドラグニア、ドラグニア王国の王子である!お前たちの戸惑う気持ち察するが、事情はすべて詳細に話す。今は余らの後に続いてくれ。」
 
 
  この青年が王子だとするなら、さっきの少女はお姫さんか何かか?いずれにしろ、王族のようだな。彼の一言にひとまず従うことにし、後に続いた。クラスメイト女子の何人かは、王子についてきゃいきゃいと話している。面食い女どもだなこいつら。

 
  場所は変わり、煌びやかで豪奢な広間に連れられた。床には100万円はありそうな赤く高級そうな絨毯がドア前から敷かれていて、その終着点には、金色の大きな椅子があり、そこには誰かが偉そうに腰かけている。
 

  「全員いるようだな。ミーシャ、マルス。引率ご苦労。そして召喚班にはこの後でここに呼び出すように。たくさん褒美をやらねばな。」
 
  と威厳のある声で椅子に腰かけているオッサンが俺たちを連れて来たあの少女と青年に話した。二人とも無言でオッサンに了承のお辞儀をして、俺たちに向き直る。
 

  「さて、ゴホン!若き者達よ!まずはなんの前触れもなしにこの世界に呼び出したこと、申し訳ない!そしてドラグニア王国へようこそ!我はこの国の王、カドゥラ・ドラグニアと申す。以後、お見知りおきを。」
 
  と王様は俺たちに謝罪と自己紹介を済ます。謝罪とはいうが、その態度は俺たちを椅子から見下すもの。絶対申し訳ないとか思ってねーだろ。
 
  「余のことはさっき紹介した。ミーシャ、お前の番だ。」
 「はい。改めまして、皆さま。私はドラグニア王国の王女、ミーシャ・ドラグニアと申します。」
 
  最初の部屋で話しかけてきたあの少女は本物のお姫さんだった。
 
  「我らの自己紹介が済んだところで、そろそろ説明に入るとしようか。ああ、おぬしたちの自己紹介は後に聞くとしよう。」
 
  王さ...オッサンでいいか。なんか感じ悪いし。オッサンは一息ついてこの状況について話しはじめる。話が無駄に長いので、肝心の内容だけしっかり聞き取り、脳内で大まかに整理した。
 

  ここは俺たちが暮らしていた世界とは別の世界 ―ラノベでよく目にする異世界だ― であり、俺たちはこのドラグニア王国とやらの身勝手により召喚魔法で呼び出されたことになる。
 この世界では人族と数年前から発生した未知なる化け物―「モンストール」というやつらと戦い続けているそうだ。モンストールの持つ力は凄まじく、そして気性が荒いのがほとんどだ。
  その戦闘力は、モンストール1匹と国の精鋭兵士およそ10人で互角といったほどという。この世界の人々も奴らの生体はまだまだ知らないことが多いらしい。
 ここ数年でモンストールによる侵略で人族が暮らす大地はかつての約4割も失われている。人族の中にも強者は世界中に何人かいるが、このままだと人族は終わりを迎えるそうだ。
 人族衰退に対抗すべく、王族の指揮の下、異世界から俺たちみたいな若い人間の召喚を行い、モンストールどもと戦わせることに。

 あとはこの国のくっそどうでもいい歴史を話しだすので、頭の回転を止めボーっとすることに。
 
 退屈そうに王座の方を見つめていると、視界にお姫さんが映った。彼女もちょうどこちらに目が映ったらしく、見つめあう形に。俺が退屈そうにしていることに気付いたのか、可笑しそうに頬を緩ませ笑顔を向けてきた。あれ?なんかデジャヴが...。
 

  「あのー。質問があるんすけど。」
 
  と、手を挙げる奴が。里中優斗、学級委員長でサッカー部だ。男子なのに委員長だ。クラスのまとめ役的存在だが、こいつも俺のこと良くはおもっていない。彼の挙手にオッサンは「何か」と促す。
 
  「この世界のこと、人族の危機、化け物...モンストール?のことは大体理解しました。でも、俺たちはただの学生なんですよ?なんの力も無い俺たちが戦ったってすぐに殺されるだけなんじゃあ...。」
 「彼の言う通りです。何より、大切な生徒たちをそんな危険極まりないところへ送るのは納得いきません!」
 
  里中の質問というより疑問発言に続きオッサンに抗議したのは藤原先生だ。身勝手な召喚に加え、俺たちに化け物と戦わせるという話に憤りの感情をうかべている。
 
  「確かに、私たちがそんな恐ろしいのと戦うなんて...想像できない。」
 
  と高園が呟くように言う。まぁそうだよな。普通そう思うよな。が、こういった展開をラノベでいくつも読んできた俺は、この先が読める。
 

  「ここに召喚された際に、何か特別な力を宿すようになっている、とか?」
 
  思ったことをつい口に出してしまう。クラスの全員が俺の発言に怪訝な物を見るかのような視線を寄越す。
 
  「ほう、察しがいい。その通り。さっき魔法陣の傍にいた召喚班のことだが、彼らの特別な召喚術で呼び出された者には、特別な能力・職業を授かることになっている。おぬしらも例外なく強い能力を持っているに違いない。」
 
  オッサンが俺の予想に首肯し、俺たちは特別召喚の恩恵で色々特別な力があると答えてくれる。お約束展開だね。
 
  「私たちに力があると分かっても、生徒たちを戦わせるなんて...。」
 
  先生はまだ、俺たちが戦地へ赴くのが許容できないようだ。新任してまだ3ヵ月くらいだというのに俺たちのことに一生懸命だな。
 
  「おぬしは彼らの引率者であるようだな。生徒たちを危険な目に遭わせたくない、その心情お察しする。だが、おぬし含む彼らの力なしには人族は敗北の一途をたどることになる。勝手は承知だ。どうか我らに力を貸してはくれないか?」
 
  そう言うと、オッサンは椅子に座ったまま頭を下げる。それに倣ってお姫さんも下げる。マルスとかいう王子も渋々下げる。あいつ俺にとって地雷かもしれない。
 
  「先生、心配しないで下さいよ!俺達には大きな力があるんですよ!最初は混乱したけど、何も今すぐ化け物たちと戦うわけじゃないんだし。この王国で訓練したらすぐ強くなれるって!」
 
  乗り気な大西が先生に言う。大方、自分が人族を化け物から救う姿を見せつけちやほやされることが目的だろう。ありきたりな下心にじませてくれてドーモ。
 
  「初めから一般兵士よりも強い能力があるんでしょ!?ならすぐ化け物にも勝てるじゃん!」
 「やってやろうじゃん!こんだけいれば大丈夫っしょ」
 「この世界の偉い人たちに恩を売れば美味しい想いもできるんじゃない?」
 「じゃー私もやろうかなー」
 
  などと、次々にクラスメイトたちがオッサンの頼みを受け入れる流れになり。先生は困った様子だ。この流れは別に悪いことじゃない。が、まだ解決していない問題が残っている。こういう物語だと答えは予想できるが、聞かずにはいられまい。生徒のざわめきが小さくなる頃を見計らい、再び口を開く。
 

  「化け物たちと戦うこと以前に、あんたら俺たちを元の世界に帰してくれるのか?勝手にここへ召喚されて、戦えだの救ってくれだの要求されてんだ。こちらにも相応の見返り、報酬が無いとは言わせねぇぞ?で、世界が平和になれば、俺たちは帰れるのか?答え次第では、あんたらの頼みを聞く訳にはいかねぇ。」

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