最強の勇者ですし魔王も倒したんでパーティーメンバーにセ◯レになってもらおう思います。《フラれました辛い》

吟遊詩人

童貞の心は繊細だから気を付けよう

赤く手形の着いた頬を手で撫でながら歩く。
まだ少し痛い。だが、問題は身体の痛みより心の痛みだ。

「なんで…いや、そうか。
そりゃそうか…」

虚ろな目をしてブツブツとひとり言を呟くその姿は勇者としての旅によって得たカリスマ性も威厳も感じさせず、まるで脱落した貴族の一人息子と言ったところか。
すれ違い様に肩が当たり突っかかってきた酔っぱらいは青ざめ、心ここにあらずと言わんばかりにフラフラと歩く様子に見てはいけないものを見たとでも言うような顔で去っていく。

夜の街。娼婦の宣伝に声を掛ける男たちですらまるで見えないように避けるその人物は失恋に胸を引き裂かれていた。

もっとも、【フラれた】ではなく【怒られた】なのだが、その事に気づく事が出来ないほどにユウシアの心は弱っていた。

「最低…か…なるわけ…ない…か…」

記憶の彼女が攻め立てる。
ずっと一緒にいた。好きだった。愛していた。
だが、
彼女は俺を拒絶した。

いつの間にか、橋の中央にいた。
朝方は馬車が世話しなく通るこの橋も夜になれば夜遊びで来たであろう貴族の馬車ぐらいしか通ることはない。

誰もいない。誰にも止められない。

「ああ、疲れたんだな」

そうだ。そりゃあそうだろ?
三ヶ月。それっぽっちで魔王に対抗できるほどの努力をした。
【魔法使い、サルビア・アズレア】の魔法が暴発し、【騎士、ローズ・ヒップ】を庇い全身大火傷を負ったこともあった。
6本の腕を持つ魔騎士の攻撃からマリーを庇い負った負傷で二度と剣を振れない体になったと聞かされたときはどれ程絶望しただろうか。

…なんで思い出すんだろうな。
橋の下を見つめる。
勇者ではある、だがあくまでも1人の人だ。魔人じゃない。

「落ちたら…死ねるかな?」

身を投げる。それで終わる。世界は救った。
彼女らは自分の好きに、やりたいことをするだろう。
マリーは聖女として、ローズは騎士団の分隊長ってとこかな?
サルビアは…読書が好きだから図書館の館長とか?魔王を倒したメンバーなんだ。何にだって不自由はなくなれるはずだ。ならば…

「もう、勇者はいらないな」
橋から、身を投げる。

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