ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第13話 アテネと…



「おいおい、二人とも…悪かったって…ごめんな?」


俺は二人を撫でながら謝り続ける。
小さな嗚咽をもらしていたクローディアとリリアも次第に落ち着いてきた。


「…あ!そういえば…アレン!ハデスとヴァイルが天使たちと…多分最高神たちとも戦ってるから、早く助けないといけないわ!!」


クローディアがいきなり顔を上げ、俺に驚愕の事実を告げた。
リリアもそうなんです!早く助けないと!と、あわて始めたので、俺は手早く済ませることにした。


え?何をって?


それは、壁際にいる幼女のことだ。
俺はもはや笑みすら浮かべている幼女に近づき、声を掛けた。
クローディアとリリアは俺の後ろでいつでも攻撃できるように控えていた。


「…さて、アテネ…だったか。君、どうする?俺と戦うのか?」


「………。はは…。ねえ、アレン君。わたしにはもう戦う気力なんてないよ。」


苦しいような、ほっとしたような表情…なぜか俺には苦悶する表情にしか見えなかったが、幼女は淡々と告げる。


「わたしは、あなたとは戦わない。あなたが戦うべき相手は、最高神のはずだよ。」


「アレン!こいつ私たちを騙そうとしているわ!!…実の父親と殺し合いに行けなんていう奴がいると思ってるの!?」


アテネの言葉に、クローディアが憤慨する。


「なっ!?お前、あいつの娘だったのか!?…ゼウスって…父だったんだな…。」


「…アレン。何を言ってるか分かりませんが、今はふざけている場合じゃありません。早くヴァイルとハデスを助けに行かないと…!さっさと殺っちゃってください!!」


今にもとびかかりそうなクローディアとリリア。
しかし、俺はそんな二人を手で制した。
二人の顔は驚愕の色で染まった。


「どうしたのアレン!?」


「早く、助けに…!」


「まぁ、待てよ…あいつらならまだ大丈夫だろう…。おいアテネ。ある人物から、お前は敵じゃないと聞いた…。一体どういう事なんだ?悪いが、答えてくれ。」


そう告げると、次第にアテネの肩が震え始めた。
そして、震える手で槍を構えたのだ。
後ろの二人が飛び出そうとするのを、俺は絶対障壁で止める。


「お前が勝算のない戦いをするとは思えないんだが…。」


俺の言葉に、瞬時にアテネが槍を振るって来た。
それは、アテネにしてはとても遅い槍裁きだ…。俺はそれに何か別のものを感じた…何かは分からないが、その槍には、殺気は全く籠ってなかった…代わりに、別のものが籠っている気がしたのだ。
仕方がないので、俺は自分の剣を瞬時に出現させ、その槍を軽く受ける。


ーキィィィン!!


すると、目の前をログが流れた。


ー風氷の因子への干渉を確認ー


ー風氷の因子使用可能になりましたー


俺の剣が一瞬緑と白銀の光に包まれるが、それはすぐに消えた。
「なんだ!?」


ー共鳴確認、対象、ファフニールー


ー因子を自動で引き渡します。-


ー譲渡完了。-


すると、なんという事だろうか…アテネの体の周囲に、緑と白銀の魔力の層が出来上がっていたのだ。




そして、彼女はまるで子供のような笑顔になり、同時に…


涙した。




「お、おい!?」


「…ありがとう…ありがとう…私は本当に…あなたたちと戦わないよ…。」


ありがとう。感謝される意味が分からない。だが、彼女も彼女で、何かを達成したことが、俺には分かる。
徐々に、アテネの姿が消えていく。


「に、逃げる気!?」


「違うよ…クローディア。違う。倒すべき相手は、アテネじゃない。……最高神だ。」


アテネのその安らかな表情は、もう戦闘の意欲など微塵も感じさせないものだったので、俺は消えゆくアテネを放置し、二人を強引に引きずる。


「アレン!?何を…」


「リリア。クローディア。大丈夫だ。奴は敵じゃない…。それより、早くヴァイルを助けに行かないとな…」








――――――








とても楽しく、美しい戦いをわたしたちはしたね。


永久に続くといいと…わたしは思ってたんだよ?


『そうか…。』


瞬時に、わたしの頭の中に響く…彼の声。


大変だったんだよ?


貴方が解放されるように、目の前にいるアレンを利用すると考え付いたのは、彼がこの世界に来て、アジ・ダハーカを倒したときからだったんだ…。


最高神を倒せるほどの力を身に着けた彼なら、アジ・ダハーカを復活させた彼ならば…。あなたを救えると、思った。


だけど…次の駒には、あなたを使うしかなかった。わたしのことになるとバカになっちゃうあなたを利用するのは、本当に心が痛んだ。血を吐くかとも思ったんだよ…。


それでも、計画は成功した。


アレンが光り輝く剣で、あなたを斬ったとき…わたしはまともに見れていなかった。
このまま、あえなかったらどうしよう…そんなことばかり思っていたんだ。


『最高神を出し抜くためとはいえ…よくそこまでやるな……。』


声はあきれた色を帯びるが、どこまでも優しい声だった。
さらに、わたしは涙してしまう。


最後…源神をゼウスがけしかけるように仕向けるのは、あっさりと成功した。
貴方より強い人間が、あの世界…ラズニエルに居ますよ…と、私がそう提言しただけで、あの正真正銘の馬鹿は、それだけで自分の劣化分身である…源神をアレンにけしかけた。


源神を倒すため…神殺を発動させるために、自分の因子を僅かばかりだが、アレンに渡しもした。


そしてもくろみ通り、計画は無事に成功した。


あとはもう、流れに任せるだけ。


勇者が現れ、魔王が現れ…最高神が姿を見せる。


全てはわたしの筋書き通りだった、だけど…あのドームの部屋で、わたしとラズエルが取り残されそうになったとき、ハデスが助けてくれたのは、予想外だったよ…。あいつ、全部わかってたんだよ?信じられないよね。


『はは…。流石我のリーダーだな…お前も、惚れたか?奴に。』


そんな訳ないじゃないか…わたしにはあなたしかいないんだから…


アレンを使って、あなたを自由にする計画は、ここに、成功した。


権利、鍵、神の体の一部…すべてをこの男に集約させ、最高神の居城に忍び込ませる。
同時に、あなたの因子をアレンの剣に埋め込ませる。


そして、最高神との決戦…アレンはきっと一回は負けてしまうだろうという予測も、当たった。


きっとアレンは天界の牢獄に捕らわれる。


そこで、助けに向かうであろうあの嫁と…事実上3人で、洗脳されたアレンを助けだした。
最高神に怪しまれないように…攻撃するふりをしながら。




やっと…成功した。剣を経由して、あなたの因子を手に入れて…。


計画は全部完遂した…


だから、




ねぇ…


早く…


姿を見せて…『ファフニール』…


その瞬間、わたしの目の前に…それは現れた。


どこまでも真っ白い空間の中、吹き荒れる緑と白銀の魔力。


そして、わたしと彼はやっと…安らかな気持ちで向き合うことが…できた。


「待たせちゃって…ごめんね…」


「なに…待つのも男の甲斐性よ…。……アテネ。これで我らは自由なのか?」


残念だが、まだ完全に自由ではない。


まだ、残っているのだ。


…最高神が。


彼が死ぬことで、わたしの…わたしたちの計画はやっと達成される。
それを伝えると、ファフニールはわたしを抱きしめ、こういった。




「見守ろうではないか…。アテネ。よく頑張ったな…。」




わたしが泣きやむのは、いつになるのか…。






「……もう絶対、離れないよ…。」

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