ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第1話 戦いとはいったい

これで2回目だろうか?
どこか来たことのあるような空間…どこまでも白く、何もない空間に俺は立っていた。
魔王に一撃を与えた直後、ここに転移してきたのだ。
油断はしない。どこからでも攻撃が来てもいいように、俺は身構えた。


「…。」


気を張り詰めさせ、周囲の気配を探る。


『お前がアレンか。』


突如、圧倒的な威圧感を放つ声が頭の中に直接響いてきた。
だが、こんなことは想定内。
ここがどこか見当もついている。


「そういうお前は、最高神…だな!?」


俺は誰もいない空間に向かって叫ぶ。
それが気に食わなかったのか、先ほどよりも大きい声が、頭の中に響く。


『うるさいぞ!ただでさえ二日酔いで頭が痛いのだ!今そちらに顔を出すから、おとなしく待っておれ!!』


「…は?」


意味が分からない。
二日酔い?…二日酔いって、あの二日酔いだよな?
しかも待ってろって?こいつなんなの?バカなの?わざわざ殺しに行くから待ってろって…。
疑問が次々にわいてくるが、ここは敵の本拠地なのだと改めて認識すると、俺は全力で剣を振るった。


「誰が待つかっ!!さっさと俺を殺しにこいよっ!!逆に俺がお前を殺してやる!」


全力の殺気と威圧を放てば


『ちょ、まて…!朕が貴様を殺す…?いったいなんのことだ…?』


そんなことを言いながら、筋骨隆々のひげもじゃのおっさんが俺の目の前に現れた。


全裸で。


吐き気のするような体だ。胸毛はもしゃもしゃ。
わき毛ももしゃもしゃ。生理的に受け付けない感じの男が、俺の目の前にいた。


そんな気持ち悪い男に向けて、俺は再び剣を構える。


「騙されないぞっ!最高神!!」


「なっ!?なんだこ、この力はっ!?え、ちょっ…まて!!」


両手を必死に伸ばし、俺の気を防ぐ最高神だと思われる男。


「お、落ち着いて、ちょっと話をしようではないか!?あ、見た目が気に入らなかったのかっ!?…神といったらこんな感じかと思ったが…最近の若者はめんどくさいのう…」


そして、みるみるうちに男の姿が変わる。
ひげもじゃのキモイ顔はかなり整った女性の顔に…彫刻のような美しさだ。
筋骨隆々だった体は、男ならだれもが欲情してしまうような妖艶な体つきに。
張りのあるソレを思わず凝視してしまった俺は、拳を俺の頭に打ちつける。


「こ、これでど、どうかな!?いい感じじゃね!?」


「…話だけなら、聞いてやろうか…。」


「そ、そう…やっとその気になってくれたかぁ…あ、服着ていい?…そ、そんなに見つめないでよ…照れちゃうから…。」


「知らねぇよそんなもん!勝手にしやがれ!」


瞬時に服を着る、元男。
なぜか制服だった。しかも日本の女子高生の制服だ。
いわゆる…セーラー服か。
そして何事か元男が呟くとどこからともなくソファが出現した。


「はっ!?」


「いいから、ほら、座ろう?あ、一応いっとくけど、罠なんか張ってないから。」


「…信用できん。まずお前、名を名乗れ。」


俺はとてもじゃないが目の前の奴が信じられない。
最高神とか言っておきながら、違う奴でした、では話にならないからだ。


「えと、私は正真正銘、全知全能の神にして最高神の…ゼウスだよ。君の元いた世界では、男…っていう設定だったと思うけど、ちょうどあの地球っていう世界では男の姿を取ってただけだから、あんまり気にしないで。」


「証拠は?」


「私が私であることの証拠?本当に人間はめんどくさいことを言うんだね…。でも、君に信じてもらえないのはいやかな。アレン君。君は神たちの中で誰か知ってるのはいる?」


なんか思ったよりもフレンドリーで拍子抜けしながら、俺は神様の知り合いに思いを馳せる。
そういえば、いたな。3人ほど…。


「あー、ラズエル、アテネ、ハデス…あたりか?」


「そういえばラズエルが君のバグを担当したんだったっけ…アテネもこの件に関与してたのか…。そして…ハデス…か。まだあのこと根に持ってるのかなぁ…?ま、どうでもいいや。手近なところでラズエルを召喚するよ?あー、一度殺されそうになってるんだっけ?じゃあ天使専用の拘束縄で拘束してから召喚するから、ちょっと待ってね…。」


矢継ぎ早に独り言のようで独り言でないようなことを言うと、ゼウスはぶつぶつと何事か呟き、両手を天に向けた。
その瞬間…どさっ、という音と共にM字開脚したまま縛られたこれまた全裸のラズエルが現れた。
頬は紅潮しており、恐ろしいほどまでに白い肌の中にある大きな二つのふくらみの頂点にある薄いピンクのソレがピンと立っていた。足の間にある秘所は、とっても淡いピンク色で…すごい湿っぽそうだった…。どことは言わないが。
要するに、ものすごいエロい顔をして、ものすっごいエロい恰好をしているのだ。この天使は。


「んううぅううぅ…///最高神様ぁ……はっ!?わ、私は何を!?」


「おい。」


「あー…ごめんラズエルちゃん…もしかして自〇中だった?ごめんね~?」


ものすごい気のない謝罪をするゼウスを見て、俺を順番に見たラズエルは…


「rxctvfyぎじょkmpl、。(・3・)」


なんかわけのわからない言語を話し出した。
ゼウスが途端に爆笑し始める。


(なんだこれ…俺は何しに来たんだ?…帰りたい。)


もはや顔色が蒼白になっているラズエルがそろっと可哀想になってきたので、俺はゼウスの頭を小突く。


「おい、服位着せてやれ。」


「いたっ…こういうの嫌い?」


「嫌いじゃないが、今は話をするんだろう?ほら、早くラズエルにゼウスが最高神かどうか聞かなきゃいけないんだ。さっさと服を着せろ。」


俺の言葉にゼウスはむくれる。


「む~…しょーがないな~…ほい。」


瞬く間に拘束の縄が解かれ、露出度過多な天衣を纏うラズエル。
なんというか、裸でもあんまり変わらないような恰好だ。
ちょくちょく肝心な部分を隠してるが、うっすら透けて見えるのがこれまたエロい。
なんか今から悪魔に堕とされそうな格好をしている天使様だった。


(なんだこれ?唐突なサービスシーンって…意味わからんぞ?)


「こほん…失礼しました。最高神様…わたくしめに何か御用ですか…?こやつを仕留めそこなったので、また、あの罰を…?」


「あ~…うんそれとは別件でね。いまこのアレン君に私が最高神だって説明をしてたんだけど、なかなか信じてもらえなくて…よかったらラズエル。君が説明してよ…いたた…二日酔いなのに騒ぐもんじゃないね…おぇ…。」


言いながらゴミ袋のような袋を出して、れろれろと何かを吐き出しているゼウス。
なんかもう、神とかそういうのじゃない気がしてならない。


悪い夢だろう。


うん。きっとそうだ。


そんなことを思っていると、ラズエルが容赦なく俺に告げる。


「この方は間違いなく、現在最高神の地位についておられる、ゼウス様で相違ありません。」


「その真偽はどうやって証明される?」


「こうすればいいんだよ。ラズエル。君は今から私の言うことを聞け。いいかい…?君はアレン君からの質問に絶対に嘘をついてはいけない。つけば、死ぬ。」


ゼウスが魔力を込めて、ラズエルに魔法をかけると…ラズエルの首に重厚な黒い首輪がつけられた。


「これでいくつか質問してみて?絶対に嘘はつけないから。好きなだけ質問するといいよ?」


そんなことが可能なのか…じゃあ…。


俺は質問する。


「昨日のパンツは何色を履いた?どんな奴で、それを履いてどんなことをしてた?」


「黒です。あだるてぃな色っぽいやつで、ゼウス様を思いながら自〇してました。」


淡々としゃべるラズエル。言葉の抑揚とは裏腹にものすごい殺意のこもった目で俺を見ている。


「性交の経験は?」


「セッ〇スはまだしたことがありません。処女です。」


もうラズエルは恥ずかしさからか涙を流し始めた。
隣でゼウスがうわぁ…とか言ってる。かなり引いてるみたいだが、俺にはそんなことどうでもいい。


「俺のことが嫌いか?」


「鈍器で頭をかち割ってやりたいくらいに嫌いです。死んで!!」


もうラズエルの目がうつろになっている。


「も、もうやめてあげて…ね?アレン君?ほら、もう人格すら変わりそうだから、やめてあげて?」


ゼウスですら俺を止めに入るのか…これからがいいところなのに…まぁ、いいか。


「こいつは本当に俺を殺そうとした張本人で、最高神か?」


「はい。」


ラズエルはもうやけになっていたが、質問が終わったことに気付くと、顔を下に向け、泣き始めた。


「うぅ…こ、こいつは酷い奴です!最高神様!私がコイツをコロシ…」


「あ、もう帰っていいよ~…ごめんねラズエルちゃん。今はこの人とお話しするのが先だから。」


あっと言う間にラズエルが姿を消した。
すると俺の方を見て、ゼウスが俺の頭を小突く。


「女の子にあんなキツイ質問しちゃだめでしょ?まぁ、面白かったからいいけど。」


「いいのかよ…。まぁ、あいつには前に借りもあったからな。すっきりしたよ…。」


「ほら…はやくそのだらしなく屹立した君のジュニアを早く萎ませるんだ…。」


「ああ……ちょっと待ってくれ…」


とんでもなく微妙な空気になったが、これでこいつが最高神であることが判明した。
あ、あとラズエルたんが処女だったことも判明した。

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