ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第25話 人妻には手はださない

「なあ…なんで二人ともそんなにぐったりしてるんだ?」


俺は目の前にいる嫁二人を見て、そう問いかける。
リリアの方が疲れてるのはわかる。
なんてことはない。俺が朝から5回も挑んだせいだ。だが、反省はしていない!
案の定、リリアが腰をさすりながら、俺を睨み付ける。なぜか涙目のリリアはとてもかわいい。


「アレンが昨日の夜と、今日の朝と…いっぱいするからじゃないですかっ!?初めての女の子にそこまでしますか!?普通しませんよね!?」


「え?…ああ、でも、リリア…すげぇよさそうだったから…ついつい…」


伊達にHPが桁違いなわけではない。だが、流石にやりすぎはよくない。それだとリリアとクローディアがつぶれてしまう…というか、そこまで乱暴にするつもりも、俺にはない。


「のりのりだったならいいじゃない…私なんて、朝っぱらから新境地を見させられたわよ?アレン…もしかしてリリアにもアレやったの?」


「ああ。勿論じゃないか。しかも、今回は「あー!言わなくていいですから!!」


リリアが俺の口をふさいで来ようとしたので、素早くかわし、ゆっくりと座らせる。


「だめじゃないかリリア……あれだけ激しい運動をしたんだから、安静にしてないと…ところでクローディア。なんでそんなに疲れてるんだ?」


「だ、誰が原因だと思ってるんですか!?」


「ん。俺☆…なぐるなっ!おいっ!ぐほぉっ!?」


俺は床に倒れる。
いいパンチしてやがるぜ…リリア…。


「……言ったでしょ。昨日受付嬢の人と飲んでたのよ…私はジュースだったけれど、あの人の酒癖の悪さは半端な物じゃないわよ…。最後の方なんて酒臭すぎて、私まで酔っぱらったみたいになったもの…」


クローディアさんスルースキルハンパねぇっす。
俺はゆっくりと立ち上がり、クローディアに答える。


「…あー…じゃあ、今日は二人ともゆっくり休んでくれ。俺はガイゼルさんから朝一でコールが入ったから、ヴァイルと合流したあと、そっちへ向かうことにするよ。なに。夜には帰ってくるさ。」


俺は簡潔に要件を伝える。
正直、昨日の今日だから気恥ずかしいのもあり、なんだか話し辛いのだ。


「…ありがとうアレン…正直、今日は動ける気がしないもの…で、ガイゼルさんからのコールって…何の用件だったの?」


クローディアが俺に尋ねてくる。
そりゃそうだ。聞かれるに決まってる。だが、答えるわけにはいかなかった。
なので俺は、初めて嫁に嘘をつく。


「いや…詳しい用件はあってから話をするってさ…なんなんだろうな?」


「そう、ですか…わかりました。ヴァイルさんとアレンが戻ったら、何の依頼があったのかと、ヴァイルさんが持ち帰った情報を話し合いましょうか。それで…クローディア。私たちはどうしましょうか?」


「そうね…正直、部屋に戻って休みたいわ…ガイゼルさんによろしく言っておいて頂戴…。」


嘘をつき、申し訳ない気持ちでいっぱいだが、俺はすでに次の目標を定めていた。


「わかった。じゃあ、二人とも…いい子で待ってるんだぞ?」


宿屋の扉を開け、外に出る。
空を見上げ、俺は一人、呟く。


「さて…時間がない。急がないとな。」




一人の男がその場から姿を消したことに気付くものは誰もいなかった。




―――――――――




アレンが出かけた後、私たちは宿屋で昼過ぎまで寝ていた。
リリアが自分と私に治癒の魔法をかけてくれたので、だいぶ楽になったのだ。


「…ふぅ…だいぶ楽になったわ…ありがとう。リリア。」


「いえ、いいんですよクローディア。…しかし、アレンは激しいですね…クローディアも同じような目にあったんですよね?」


「あー…アレ…ね。でも嫌じゃないわよ?私、もうアレンが大好きだし…。リリアもそうでしょ?」


「うぐ…それを言われたら返す言葉もないです…。」


「ならいいじゃない。愛した男に目いっぱい愛されてるんだから…。本当に、アレンって何者なのかしらね?ドラゴンには勝っちゃうし、あの強い魔力を持った人間にも…源神とかいうのにも勝っちゃって…もう、人間じゃないわよね…?」


私は常々思うのだ。いくら強い力を持っていても、使い方を誤ればひどいことになる、と。
だが、アレンはそうはなってない。
私の知る限りでは…だが。


「そうですよね…まったく…最初にあったころは右も左もわからない人だったのに、いつのまにか逞しくなって……。そんなところが、好きなんですけどね。」


リリアははにかみながらそんなことを言っている。
私も自然と笑顔になってしまった。
もう、二人ともおぼれているのだ。アレンと言う男に。
強くて、優しくて、カッコイイあの男に。
だから私たちは、追いつけるように、並び立てるように…助けになれるように、ならないといけないと思う。


「そういえば、リリア…レベル幾つになった?最近私、自分のメニュー画面開いてなかったのよね…」


「そうですね…そういえば、全然確認してませんでした…って…」


「「え!?」」


私たちは、メニューを使い、自分のステータスを確認するや否や、同時に同じ声を上げる。
それもそうだ…知らない間に、二人はこのようなステータスになっていた。




名前:クローディア
種族:獣人族 LV250 ※不死族覚醒前
職業:冒険者Fランク


STR 6759
DEF 6256
INT 8560
SPD 87560
TEC 95632


体力 6300
魔力 7500


所持スキル


固有
【獣言語理解】LV-
【メニュー】LV-
【不死族化】LV- ※夫:アレンが不死族になると自動的に発動します。
【アレンへの想い】LV-


ノーマルスキル
【家事】LV560
【気配察知】LV70
【気配隠蔽】LV65
【軽業】LV350
【短剣術】LV230
【包丁の扱い:戦闘術】LV-


パッシブスキル
【身軽】LV74
【アクロバット】LV67
【動体視力強化】LV65
【敏捷強化】LV65
【器用強化】LV52


アクティブスキル
【短剣突貫】LV20
【大跳躍】LV300
【猫パンチ】LV250
【他者分析】LV5
【乱斬り】LV-
【いちょう斬り】LV-
【薄斬り】LV-
【千斬り】LV-








名前:リリア
種族:人族 LV286 ※不死族覚醒前
職業:治癒術士(冒険者Fランク)




STR 4647
DEF 4875
INT 145689
SPD 3678
TEC 5320


体力 5800
魔力 96850


所持スキル


固有
【メニュー】LV-
【不死族化】LV- ※夫:アレンが不死族になると自動的に発動します。
【アレンへの想い】LV-


ノーマルスキル
【アレン流杖術】LV235
【治癒術】LV9865
【観察眼】LV53
【デスヒール】LV- ※特定の装備を使うと、ダメージを与える治癒を使えます。


パッシブスキル
【治癒術効果上昇】LV980
【魔力自然回復力上昇】LV680
【魔力強化】LV6980




アクティブスキル
【他者解析】LV90
【急速回復】LV265
【異常回復】LV360
【止血】LV73
【自然回復補助】LV650
【範囲回復】LV460






呆然とする二人。
実は、源神との戦闘で、すさまじい量の経験値を獲得していたのだ。
それも、無意識のうちに。


「…ねえリリア。私たち、聖女になれるんじゃない?」


「そうですね…でも、私の場合、聖女じゃありませんけどね…」


私たちは黙ってしまう。
沈黙を切り裂いたのは、二人のどちらでもなく…




「さて、君達…悪いが少し、眠ってもらうよ?何、悪いことをするわけじゃない。」




全身真っ黒で、痩身の男が、なぜかそこにいた。
とっさのことに反応できないまま、二人は意識がなくなっていく。


「…眠ったか…いやぁ…アレン君もいいスタイルしてるお嫁さんをもらったねぇ…幸い僕は人妻に手を出すつもりはないからね。」


男はブツブツといいながら、魔法で二人を宙に浮かばせる。


「開け。…さて、おしゃべりの時間だ…ここだと、最高神に聞かれてしまうからね。」


男が右手を掲げながら、呟くと、空中に大きな黒い闇が現れた。
そして次の瞬間にはもう、部屋には誰もいなくなっていた。

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