ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第3話 お嬢様は言った

ぶつかったその青年はひょろっとして、とても強そうには見えなかった。


だが、エルのその認識はそのあとすぐに変わることになる。


なんと、襲い掛かってきた9人、10人の手練れの騎士を瞬く間に無力化したのだ。


(なんですの、いまの動きは!?早すぎてみえませんでしたの…)


唖然とするエル。


「え…?わたくし、助かりましたの…?」


青年はにっこりと笑って言う。


「さて、こんな場所で話すのは悪いから、馬車の中で話そうか。」


「ちょ、ちょっとまってアレン君!今のはなに!?」


小柄でエルより胸の大きな女性が、困惑した表情で言う。


(この人、アレンっていうんですの?)


「まぁまぁ、おいおい話すよリリア。クローディア、後で事情を説明してやってくれ。」


「いいのね?」


「ああ。いいんだ。」


見つめ合う黒猫少女と、青年。


(この方、ロリコンですの…?)


一瞬身の危険を感じたエルだったが、すぐさま助けてもらった事実に気付く。


「あ、ありがとうございました…ですの。」


その語尾を聞いた瞬間。アレンが飛び上がった。


「金髪ですの巨乳美少女キタあああああああ!!」


あまりの大声にビビるエル。


「ひぃっ!?」


「「ふん!!」」


すかさず、アレンを殴りつけるクローディアとリリア。


青年は痛い痛いといいながらちっとも痛そうじゃなかった。




——————————




その後、騎士団をその場に放置し、【商業都市イルガ】までの馬車に乗るエルとアレン達。


「ねぇ、君、そろっと名前、教えてくれない?…あぁ!言えないんだったらいいんだけど!」


両手を目の前でふりながら目を泳がせるアレンと呼ばれた青年。


エルは自分が名乗ってないことに気が付く。


じーっとアレンを見つめるエル。


「な、なに?俺の顔になんかついてる?」


「あの、アレンさんでいいんですのね?」


「ああ…できれば呼び捨てで!お嬢様には呼び捨てにされたぃ「落ち着きなさいっ!「ひでぶぅっ!!」


リリアという女性に殴られるアレンをみて、エルは


「ふふふっ…」


久しぶりに、笑いが込み上げてきた。
まさに夫婦漫才だなぁ、とか思ったエルは、アレンへの警戒度を下げた。というかゼロにした。


「えっと、助けていただいたのに、名前も名乗らず失礼いたしました。わたくし、【商業都市イルガ】に住んでおります。エル・フロウライト、と申しますの。気軽にエルと呼んでくださいですの。」


「え?フロウライトって……あのフロウライトですかっ!?」


驚いた様子のリリア。


「フロウライト?聞いたことないわね…」


「フロウライト家といえばゲイル市長の家、ヴァリオン家と対をなすといわれてる超、お金持ちさんですよぉ!?」


(お金持ちって…やっぱり貴族ってそういうイメージですの…?まぁ、間違ってはいないですの。)


「そうですの。リリアさんの想像している…フロウライトですの。…ですが、わたくしはまだ15歳…。フロウライトの名前を名乗るにはまだまだ未熟ですの。」


「それで…エルはなんで追われてたりしたの?」


黒猫美少女…クローディアがエルに問いかける。


エルはアレン達にさらわれたことや、騎士団の連中がヴァリオン家の『ゲイル市長』の私兵だということも、すべて話した。


「え?なんでその…ヴァリオン家が君を狙うんだ?」


不思議そうに聞くアレン。


「それは…きっとわたくしをダシにお父様を脅迫しようとしたと思われますの。」


「脅迫?穏やかじゃないわね?」


「でも、エルさんをさらって、エルさんのお父様に何をさせようとしたのでしょう?」


「さぁ…そこまでは分からないですの。というより、あなた方は何者ですの?見たところ…冒険者…という風でもないですの…。」


全て知っている情報を話し終えたエルはアレン達に尋ねることにした。


なぜか落ち込んでいるアレン。


(え?わたくし、何かへんなことを聞きましたの…?)


もしかして、この人たちもヴァリオン家の側かと疑い始めたとき、アレンが声を上げる。


「えっと、俺たち、その…冒険者なんだよ。」


「え…?だって、「見てもらった方が早いわ。ほら!これをみなさい!」


メニュー画面のステータスをエルに見せるクローディアとリリア。


名前:クローディア
種族:獣人族 LV4
職業:冒険者Fランク


STR 18
DEF 12
INT 68
SPD 256
TEC 290


体力 96
魔力 75


所持スキル


固有
【獣言語理解】LV-
【メニュー】LV-


ノーマルスキル
【家事】LV36
【気配察知】LV22
【気配隠蔽】LV12
【軽業】LV35
【短剣術】LV12


パッシブスキル
【身軽】LV8
【アクロバット】LV12
【動体視力強化】LV11
【敏捷強化】LV23
【器用強化】LV28


アクティブスキル
【短剣突貫】LV2
【大跳躍】LV3
【猫パンチ】LV2
【他者分析】LV5








名前:リリア
種族:人族 LV10
職業:治癒術士(冒険者Fランク)




STR 35
DEF 36
INT 450
SPD 25
TEC 140


体力 135
魔力 980


所持スキル


固有
【メニュー】LV-


ノーマルスキル
【杖術】LV16
【治癒術】LV60
【観察眼】LV25


パッシブスキル
【治癒術効果上昇】LV20
【魔力自然回復力上昇】LV20
【魔力強化】LV10




アクティブスキル
【他者解析】LV5
【急速回復】LV15
【異常回復】LV15
【止血】LV10
【自然回復補助】LV15






「え…?あなた…冒険者なのですの?」


「そうよ!アレンとリリアと私の最強パーティーよっ!!」


胸を張るクローディア。


「この、能力値で…?」


エルは震える声で尋ねる。


「ですよねーどう考えても「アレンがなんでもするって言ったんじゃない。「…そうだったな…」


アレンが言いかけ、何か小声でささやいているクローディア。


「え…えぇ。まぁ、成り立てですけどね…。」


小さい声でつぶやくリリア。


(なんですの?このとがった能力値は?これじゃSTRとDEFが一般人より低いじゃないですの…?)


「で、アレン…さんは?」


(先ほどの動き、只者ではありませんの。どうせこの方が女性たちを侍らせて…)


エルの視線の先に、クローディアにじゃれ付こうとして思いっきり腹パンを食らうアレンがいた。


(わけがわかりませんの…)


のろのろとした動きでアレンがステータスを開示する。


「これ…だ。」


名前:アレン
種族:人族 LVー
職業:冒険者Fランク


STR ×××××××××××
DEF ×××××××××××
INT ×××××××××××
SPD ×××××××××××
TEC ×××××××××××


体力 ×××××××××××
魔力 ×××××××××××


所持スキル


固有
×××××××××××


ノーマルスキル
×××××××××××


パッシブスキル
×××××××××××


アクティブスキル
×××××××××××




「アレンさん?これ、ステータス値が見えませんの。」


不思議に思うエル。彼女はこれまで【能力値隠蔽】を使っている人を見たことがなかったのだ。


すさまじい勢いで汗をかいているアレン。


「あー…なにか、わけありですの?」


こくん、とうなずくアレン。
はーっとため息をつくエル。


(なにを隠しているんですの?やはり…いえ、この方は悪い人じゃなさそうですの…)


思考するエル。


「ねぇ、エル。」


そこへ、クローディアが話しかけてきた。


「アレンの秘密、知りたい?」


(え…いきなりそんなこと言われても困りますの…。ですが、あの動きはまさしくSSSランク級の英雄に匹敵する動きでしたの…)


まさか、新たな勇者ではないか?という考えがエルの頭をよぎる。


(勇者…ということでしたら納得いきますの…あまりここで詮索しても失礼になりますし、わたくしの中で勇者ということにしておきますの。)


しばし考えた後、エルは答えをだした。


「いえ、恩人の秘密を探るようなことはしませんの。もし、悪い人たちだったらこの場で私を抑えることもできますの。でも、あなた方は今それをしない…それでいいですの。」


「そう……面白くなりそうだったのに…」


「あー…ごめんな、エル…。それよりこれからどうするんだ?家までだったら俺たちが送っていくぜ?」


「私を救ってくれたお礼もさせていただきたいですの。わたくしの家に、『招待』いたしますの。」


「え!?フロウライト家の中に入れるんですか!?」


驚いた様子のリリア。


「ええ。わたくしを救って頂いたんですの…。今夜はわたくしの家に泊まっていただきますの。」


そうエルが言ったとき、馬車が商業都市についた。
御者が降りる音が聞こえてきた。


ドアを開け放ったその瞬間。


「エルウウウウウウ!!アイタカッタヨォオォオオォ!!」


ロマンスグレーの頭髪をして、きっちりとしたロングコートを着こんでいた壮齢の男性が、気持ち悪い叫び声をあげながら飛び込んできた。


がしっ!と抱きつかれるエル。


「お父様…!?」

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