ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

第1話 始まりは突然に

閑散とした村の一角にある宿屋『黒馬』の、ある一室に少女の声が響く。


「ほら、アレン!起きて!」


見目麗しい黒猫美少女は、青年を起こそうとしていた。


「う…うぅん…クロー、ディア?」


アレンと呼ばれたその青年は寝ぼけているようだ。
寝返りをうち、クローディアと呼ばれた猫耳少女の方を向く。


「へ!?ひゃぁっ!?」


アレンはクローディアの腰回りを抱きすくめる。
信じられないだろうけど、コイツ、寝ぼけてるんだぜ…?


「ちょっ!アレン!?またなの!?…んにゃあ///」


布団に引きずり込み、絶妙な手つきでクローディアの体をなで回す。


「やぁ…!んっ、そこっ…ダメぇぇっ///にゃぁぁああん……」


くたっとなるクローディア。何度も言うが、アレンは寝ぼけている。


「おはよ~…アレン…って!?クローディアちゃん!?」


扉を開けて入ってきたのは城壁都市にて仲間になったリリアだ。


「……なんだよ?朝っぱらから、騒がしいな…?って…クローディア!?どうしたんだ!?そんなくたっとして!?」


「……アレンがやったんでしょ!?バカッ!!」


クローディアの服が乱れているのを直視してしまうアレン。


「え?俺が…?道理で下がおさまらないと「死ね!「ぐはあああああ!!」


思いっきりクローディアに腹パンされるアレン。
いたくないけど。


「アレン君…やっぱり小さい子が好きなの!?」


引き気味にリリアが言う。


「誤解だっ!俺は健全な男だぞ!?」




ーーーーーー


あのあと、こってりとリリアとクローディアに怒られたアレン。


宿屋の食堂で朝食をとり、アレンは一人用の部屋に戻り、女性二人は二人部屋へと戻る。


そこで、アレンは自分のステータス確認画面をみて、ため息をつく。


黒炎竜をアレンが倒し、一度は死んだアレン。
不死族となった時の銀色の長髪や体躯はもとに戻り、いまは一般の冒険者として各地を旅している。
まあ旅をし始めたのは4日前からなのだが。
昨日の夜遅くに宿屋を尋ねたアレン達は、部屋が空いているかびくびくしていたが運よく二部屋開いていた。
そして、アレンのパーティーは冒険者だが、一般の冒険者とは違い、一人は家事専門の黒猫さんでもう一人は治癒術士といういかれたパーティーだ。


冒険者は色々な魔物と戦闘をこなさなければならない。
なかには他のことで生計をたてているものもいるが、一般の冒険者は魔物退治を生業としている。


そんな冒険者の一員である3人だったが、能力値が特化しすぎていた。家事特化の黒猫さん…クローディアはとてもじゃないが一人で戦わせられないほどの紙防御力だが、敏捷が高いため攻撃はよけられるみたいだった。
治癒術士さん…リリアは戦闘能力皆無だったが、回復能力に長けていた。


そして、アレンはというと……


(やばすぎだろ?これ……)


名前:アレン
種族:人族 LVー
職業:冒険者Fランク


STR 42859635247
DEF 31968546328
INT 10362952434
SPD 33569287543
TEC 41659278462


体力 32569287462
魔力 12569280632


所持スキル


固有
【異世界言語理解】LVー
【メニュー】LV-
【生命の刻印】LV2659876 ※完全定着済 解除不可
【不死の因子】LVー ※不死族命数0の為、不死化不可
【破滅の因子】LVー ※道具に特殊な使い魔を宿らせます。使用可能数 1
【超越する意志】LVー




ノーマルスキル
【魔力値増加】LV126596
【体力増加】LV269872
【能力値増加】LV985639
【周辺探索】LVー
【軽業】LV2685
【刻印付呪】LVー
【アレン流剣術】LV3600
【アレン流体術】LV2600
【能力隠蔽】LV23584
【自動回復】LV7865
【消耗軽減】LV200




パッシブスキル
【アクロバット】LV2650
【多重思考】LVー
【高速思考】LVー
【空中移動】LV2950 ※浮遊時間:1sec/20魔力
【付呪制限解除】LV98765


アクティブスキル
【日常風景】LV1 ※使用不可
【瞬光剣】LV2650
【闘気】LV6500
【闘神の威圧】LV3000
【絶対障壁】LV5000
【破滅の一撃】LVー ※使用不可
【魔力爆散】LV6350






単純に言えば、化け物だった。
世界に数人しかいない勇者や、聖女、召喚勇者でもこの数値には届かない。一つのステータス数十万が関の山だ。


ちなみに、黒炎竜は数千万の能力値を有していた。
その化け物を相打ちとはいえ、下したのだ。
アレンは黒炎竜を下した直後の能力値より跳ね上がっている能力を見て、思う。


(これは…人間辞めちゃってるな…俺……)


形容しがたい数値を目の前にして呆然とするアレン。
こうなった心当たりは彼には一つしかない。


(やっぱり体に刻印付呪使ったのは正解だったのか…すげぇ痛かったけど、それ以上の効果があった…俺は間違っちゃいなかったんだな……だが、この能力値は…能力隠蔽があるからまだ他の人にはバレてないようだけど…これ、ばれたらどうなるんだ?)


クローディアにはあの日の翌日に話した。
反応は、「えぇと…生きててよかったけど…これはすごいわね…」
とか言われた。ちょっと引き気味だったが、最後はにっこり笑って


「パートナーが強くて、私も強い…これで最強冒険者を目指せるわね!」


と言っていた。とてもうれしくなって、撫で回したのを覚えている。
もちろん体も撫で回した。どさくさに紛れて。
当然、びんたも食らったが。


そんなことを考えていた時、ドアをノックする音が聞こえた。


「はい。……リリアとクローディアか。」


「アレン君。もうすぐこの宿を出ますよね?」


「そうだな……この村には冒険者ギルドがないから、大きい町まで行って今回の報酬を受け取らないと…幸いここから馬車で1日くらいで商業都市に行けるみたいだから、野宿はしなくていいな。」


「そうなの?野宿は野宿で楽しかったわね。アレンの作ったお風呂、気持ちいいから♪」


そう、アレンは付呪によって生活用具を製作していたのだ。
いくらでも入るインベントリを無駄にしてはいけないと、もう使えなさそうなものを引き取り付呪し、本来の用途とは別のものを作り出して、雑貨屋に売って金を稼いでいたのだ。
その途中でアレンのアイデアにより、携帯トイレや、風呂、携帯かまど、洗濯機のようなもの…などなど製作していた。


「あぁ…あれか。水を大量に使うから、この村でも結構水を仕入れないといけないな…」


何はともあれ、今後の方針は決まった。
宿屋をチェックアウトし、村の市場で買い出しに向かう。


—————————


「なあ、アレってなんだ?」


買い出しの途中に、騒がしい音が聞こえた。
音のした方を見ると、武装した豪奢な兵隊が、市民に何か尋ねているようだ。少々荒っぽく。
それを見たアレンは、リリアに尋ねた。


「え?…あぁ…あれは、商業都市の市長『ゲイル』の私兵ですね…あまりいい噂は聞きません。さっさと買い出しを済ませちゃいましょう。」


「いい噂は聞かない?たとえばどんな噂が立ってるいるの?」


不思議そうに聞くクローディア。


「そうですね……よく聞くのは奴隷を無理やり確保したり、女性に乱暴したり…ですかね。とにかく、関わっても百害あって一利なしです。……こっちに来ます。退散しましょう。」


そう言い、リリアはアレンとクローディアの腕を取り、路地裏に退散する。


すると一人の薄汚れたフードをかぶった人が猛然と走ってきて、先頭を歩いていたリリア…ではなくなぜかリリアの前に来ていたアレンにぶつかった。


「え?アレンさん…?今、後ろに…」


「まぁまぁリリア、そんなことはどうでもいいじゃないか。」


ごまかすアレン。
フードをかぶった女性は急いで起き上がり、立ち去ろうとする。


「す、すみません!わ、わたくし、急いでて…!」


上ずった声で謝罪するフードをかぶった女性。


「えっと、何か事情がおありのようで「いたぞ!あそこだ!」


事情を尋ねようとしたアレンの耳に野太い声が聞こえる。
瞬時に先ほどの豪奢な鎧の集団に囲まれた。
人数は10人ほどといったところか。誰もが相当な熟練者であることをうかがわせる。


「おいおいちょっとま「おい!お前ら!その女をよこせ!」


アレンが言いかけたが、荒い息を吐いたいかつい体をした男が傲慢に命令してくる。
アレンの後ろで、リリアとクローディアがむっとしたのが伝わってきた。
フードをかぶった女性はがくがくと震えている。


瞬時に事情を理解したアレン。
追いかける男。追いかけられる女性。この場合、どちらに味方するかは決まっていた。


「事情を聞かない限りは、わたせないねぇ…?」


あえて挑発するアレン。


「アレン君!?こんな見ず知らずの人を助けるなんて!?どうかしてますよ!?」


「リリア。アレンになに言っても無駄よ。この男はそういう男なんだから…。」


クローディアが諦めたようにリリアにつぶやく。そんな…と愕然するリリア。


「その女は我ら、イルガ騎士団のものだ!いいから渡せ!」


一触即発の状態だ。アレンは瞬時に判断する。


「イヤだね?こんないい女の子を男10人で追っかけまわすたぁいい度胸だな?騎士様?」


「そうよ?大の男が十人がかりなんて…なっさけないわね?」


「このっ!渡さないというのならば、実力行使だ!やれ!お前たち!」


一斉に襲い掛かってくる騎士たち。
ひっ、と息をのむリリアとフードの女性。
なぜかクローディアだけすごいやる気だった。それは、アレンを信じているからか、アレンの能力を知っていたからか。


「動くなよ!クローディア、リリア!」


アレンは一番最初に出てきた男の剣を短剣で、十分手加減して斬る。
一瞬で砕ける騎士の剣。後頭部を柄で殴る。
昏倒する騎士。
合わせて9人の男が同時に襲い掛かってきたが、アレンは目にもとまらぬ速さで動き、短剣で巧みに同時に騎士の剣を砕き、一瞬で昏倒させた。


「なっ!?なんだ!?何が起こっている!?クソっどうなってやがる!?」


いきなり周りの仲間が倒されたことに動揺を隠しきれない騎士。
だが、そこは訓練された騎士か。すぐさま襲い掛かってくる。


「はっ…大したことねぇな…」


瞬時にその男も昏倒させる。
目を丸くするリリア。


「え…?わたくし…助かりましたの…?」


呆然としているフードの女性。


「さて、こんな場所で話すのは悪いから、馬車の中で話そうか。」

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