ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?
第12話 アレンの一番長い2日間~前編Ⅱ~
「それで…まぁだいたい事情は把握しました。アレンさん、クローディアさん、冒険者合格、おめでとうございます…で、お二人はパートナー…という事でしたね?アレンさんがクローディアさんに無理強いした訳ではなく?」
リリアが玄関先で卒倒してしまった後、アレンとクローディアでリリアを寝室のベッドまで連れて行った。
数分したあと、ようやく目覚めたリリアに、アレンは必至で説明…いや、弁明していたのだ。
「だから、いくらクローディアが俺の好みドストライクだからって、さらったりはしないぞ!?リリアさん!もう少し俺を信用してくれ!なんなら【審議の球】を使ってもいいんだぞ!?」
必死で訴えるアレン。涙がその眼の端に光る。
そんな様子をちょっと引き気味に見ていたリリアは、ふう。とため息をついた。
「アレンさんがそこまで言うのならそうなのでしょう…。」
「やっと納得したのね。アレンも、日ごろの行いが悪いからこんなに疑われるんでしょう?反省しなさい。」
「うぅぅ…俺、リリアさんの前でそんな疑われるようなことした覚えないんだけどなぁ……。」
「アレンさん。この際だから言っちゃいますけど、買い物の手伝いをしてくれている間、小さい女の子を目で追っていたのはばれてますよ?」
ショックを受けるアレン。やっぱりかと納得するクローディア。
「ちょ、ちが、あれは「アレン。認めなさい。私のこと撫で回した時点であなたはもう有罪よ。……まぁ、私はちょっと嬉しか…なんでもないわよ!?」
クローディアの辛辣な言葉にショックを受けたアレンは最後のほうを聞きそびれたようだ…なんと運のない男か。
「さて、誤解もとけたことですし、夕食に「おーい!アレーン!かえって来たんだってー!?」
リリアが言いかけたところで突然寝室に入ってくる人物。
「カムレンさん!?耳が早いですね…今日のお勤めは終わったんですか?」
「おう!衛兵の救護なんて平和なこの都市じゃ、めったに必要とされないからな!それよりアレン!冒険者になったんだって!?」
「そうなんですよ!やっと冒険者になれたんです!これでやっとカムレンさんとリリアさんにお返しができますね…」
ひとしきりおめでとう、やらお礼なんて気にスンナ、やらごちゃごちゃした寝室だったが、カムレンの一言で悲劇が繰り返される。
「ところでアレン。」
「はい?なんですカムレンさん?」
「この黒猫ちゃんはお前の趣味か?」
その後数十分、リリアにした説明と同じことをカムレンに話すアレン。
なんやかんやで納得したカムレン。
「なんだ、そういうことだったのか!いやぁ、悪いこと言っちまったな。クローディアちゃん。ごめんな。」
「いえ、気にしてませんので大丈夫ですよ。アレン。そろそろ要件を済ませましょう。いつまでも長居してしまったら申し訳ないわよ?」
「あぁ、そうだな…カムレンさん、リリアさん。いままで本当にお世話になりました!今日から俺とクローディアで冒険者のパーティーを組んだので、外の宿を取りたいと思います。」
急な報告にびっくりするカムレンとリリア。
「おいおい、せっかくこうして寄ってってんだ。もう少しくらい、いいじゃねぇか。なぁ、リリア?」
ウィンクしてリリアに言うカムレン。
「えっ、えぇ!ほら、アレン君とクローディアさんの冒険者合格祝いもしたいし!今日一日くらいもうどうってことないから!泊まっていきなさいっ!」
声を上ずらせながらそう言うリリア。
「え、でも「バカアレン!男ならこういう時はびしっと甘えとくもんだ!!わっはっはっは!!」
豪快に笑うカムレン。
「いいじゃないアレン。こうして祝ってくれるって言うんだから、今日くらい皆で一緒にご飯でも食べましょう?私も料理手伝いますよ。リリアさん。」
「助かるわぁ~!クローディアちゃんは家事が得意なんですよねっ!じゃあ…材料は…」
その後、夕飯の買い出しを済ませ、リリアの家で夕飯を作るクローディアとリリア。
「クローディアちゃん。それとってくれる?」
「これね。はい。」
ぱっぱと手際よく料理を進めていくクローディア。
一方、カムレンとアレンはなぜか草むしりをしていた。
「アレンはともかく、なんで俺が…」
「カムレンさんも同罪ですよ!!まったくっ「アレンが先につまみ食いしようとしたんじゃねぇかっ!いいぜ、【治癒】かけまくってオーバーヒールで皮膚をドロドロにしてやろうか…?」
「すんませんした。オーバーヒールはご勘弁をぉぉおお!!」
土下座するアレン。
「こらっ!二人とも、きちんと草むしりしなさい!」
キッチンの窓からリリアが顔を出して二人を叱る。
「ほら、怒られちまったじゃねぇか。さっさとやっちまおうぜ。アレン。」
「はい……」
夕食が出来上がるまでにはリリアの家の庭は綺麗になっていた。
夕飯は豪華なステーキだった。とてもいい部位の肉だったようで、とろけるような味わいだった。
クローディアお手製のグラタンもとてもおいしかった。ちなみに、調理器具はすべてアレンのお手製である。レシピなどはリリアとクローディアに教えたのだ。
「う~ん!おいしかった~!!ホント、アレン君が来てくれて助かったんですよ~…ねぇアレン君。ちょっと相談なんだけど。」
リリアが食事の余韻に浸っているアレンに相談を持ちかける。
「はい?なんですか?」
「あの、お礼のことなんだけど、この調理器具、どこから調達してきたのかわからないけどとてもいい品よね?できれば…譲ってもらいたいな~…なんて…」
アレンはきょとんとした顔をする。調理器具のほとんどがアレンのお手製のため、実質原価はそんなにかかっていないと考えていたアレン。だがこの世界では老朽化防止の付呪や火や水を自在に出せるような器具はとても価値のあるものなのだ。
「え?そんなもんでいいんですか?」
ぶんぶんと首を縦に振るリリア。
「そんなもんなんてとんでもない!これだけの調理器具をそろえるにはかなりのお金がかかっちゃうのよ?というか…ホントにもらっていいのね…?」
リリアの想像では最低でも200Gはするだろうと思っていたので、軽く返してくるアレンに疑心暗鬼になってしまうリリア。
「いえ、それでお礼になるならいくらでも差し上げますよ。カムレンさんもいります?」
「いや、俺は大体リリアの手料理だからな。大丈夫だ」
「というか…2人はどんな関係なの?見たところカムレンさんもリリアさんも同じ職業のようだけれど…」
疑問そうな顔をして言うクローディアに、今更何を言ってるんだというような顔をするカムレン。
「俺はリリアの家でたまに夕飯を食わせてもらうんだ。俺は料理がからっきしでな。金がないときはよく世話になってんだ。んで、リリアはその代わりに俺の下で治癒術師見習いをしているんだ。」
「あ、二人は清い関係だったんですね…てっきり女性同士のアレなのかと…」
「ちがいますよっ!?ちょ、クローディアさん……冗談ですよね?」
疑いの目で見るクローディアをジト目でみるリリア。
「え、俺もリリアさんとカムレンさんってそっちなのかなぁって思ってたけど…違ったんだ…」
ふざけたことを抜かすアレン。それをカムレンが黙っているはずもなかった。
「ほぅ…アレン。いい度胸してやがるな……ツラかせや」
「ひぃっ!?すんませんしたっ!!」
当然。土下座するアレン。
わいのわいのと騒ぐうちに時間はあっという間にすぎ、夜も深くなってきた。
カムレンが退席した後、ふうっと一息つく3人。
その後はクローディアとアレンで洗い物をした後、風呂でさっぱりと汚れを落とした。
クローディアが風呂に入っている間、アレンがとても落ち着きがなかったのは言うまでもない。リリアにジト目で見られていたことも含めて。
リリアの家のリビングでくつろいでいた3人だが、リリアがソファで眠ってしまったので、寝室に運ぶアレン。
「すぅ…すぅ…」
「まったく、幸せそうな顔で寝る人だよ…よっと。」
いわゆるお姫様抱っこというやつか。クローディアがなぜかうらやましそうな顔で見ている…がアレンは気付かない。やさしく寝室のベッドにリリアを寝かせてやると、アレンはクローディアの隣に座る。
アレンがなにか言いかけるがクローディアがそれを止める。何を言おうとしているのかわかっているかのように。
「ねぇ、アレン。ちょっと外に出ましょう。夜風に当たりたい気分なの。」
「あ、あぁ…そうだな。」
ぎこちない返事をするアレン。内心穏やかではない…なぜなら。
(くっそぉっ!!告るタイミング逃した!!…だが、クローディアのあの反応…脈あり…か?)
2人で外に出るアレンとクローディア。町は静かなものだ。みな寝静まったのだろうか。
2人で夜空を見上げる…浮かぶ月が神々しく光り輝いていて幻想的な雰囲気を漂わせる。
空気中の魔力がきらきらと淡い光りを放つ…。
そんな時、アレンは意を決して言った。
「月が、きれいだね…」
渾身の一撃のつもりだった。だがアレンは言ってすぐ気付く。ここは異世界だということに。
案の定、クローディアは笑顔で答える。普通の答えを。
「えぇ…とっても綺麗ね…」
(やっちまった…俺。ここは地球じゃないっての!)
気を取り直してTAKE2。
「あの、さクローディア…」
言いかけるアレン。だが言葉が止まってしまう。隣の少女が月に照らされていて…流れるような黒髪がきらきらと月の光を反射していて、この世のものとは思えないほどの美しさを醸し出していた。それに見惚れてしまっていた。そんなとき、クローディアがアレンのほうを向く。
その眼には涙がたまっていた。
「もう…待ちきれないわ。ねぇ、アレン。私、アレンのこと…」
アレンが言おうとしたことと同じことをクローディアが言うところで、【ソレ】は突然襲い掛かってきた。空高くから降り注ぐ強烈なプレッシャー。思わず腰を抜かしてしまうクローディア。
「なんだ!?」
言いながら、真上を見るアレン。
すると、そこに【ソレ】はいた。
月に照らされた漆黒の鱗、鈍く輝く鉤爪のついた強靭な手足…人を一人であれば余裕でつぶせてしまいそうな大きさだ。そして爬虫類を思わせるような獰猛な顔つき。ぎらぎらと光る紅色の目。そして、漆黒の大きな翼。【ソレ】が、アレンの真上に何の前触れもなく、突如として出現した。
【ソレ】は世界を破滅に追い込むモノ、【黒炎竜】
またの名をアジ・ダハーカといった。
突如アレンのログが更新される
ログ
ー『黒炎竜』、アジ・ダハーカの出現を確認ー
ーサーチ、完了。-
ーアジ・ダハーカの目標、アレンー
ー世界滅亡コードを確認……未実行ー
ーエラーー
ーエラーー
ーエラーー
ーエラーー
ー外部アクセスによりアップデート開始ー
ーアップデート完了。再起動しますー
ー再起動完了 アレンさん よく来てくださいましたー
ーようこそ 世界 『ラズニエル』 へー
リリアが玄関先で卒倒してしまった後、アレンとクローディアでリリアを寝室のベッドまで連れて行った。
数分したあと、ようやく目覚めたリリアに、アレンは必至で説明…いや、弁明していたのだ。
「だから、いくらクローディアが俺の好みドストライクだからって、さらったりはしないぞ!?リリアさん!もう少し俺を信用してくれ!なんなら【審議の球】を使ってもいいんだぞ!?」
必死で訴えるアレン。涙がその眼の端に光る。
そんな様子をちょっと引き気味に見ていたリリアは、ふう。とため息をついた。
「アレンさんがそこまで言うのならそうなのでしょう…。」
「やっと納得したのね。アレンも、日ごろの行いが悪いからこんなに疑われるんでしょう?反省しなさい。」
「うぅぅ…俺、リリアさんの前でそんな疑われるようなことした覚えないんだけどなぁ……。」
「アレンさん。この際だから言っちゃいますけど、買い物の手伝いをしてくれている間、小さい女の子を目で追っていたのはばれてますよ?」
ショックを受けるアレン。やっぱりかと納得するクローディア。
「ちょ、ちが、あれは「アレン。認めなさい。私のこと撫で回した時点であなたはもう有罪よ。……まぁ、私はちょっと嬉しか…なんでもないわよ!?」
クローディアの辛辣な言葉にショックを受けたアレンは最後のほうを聞きそびれたようだ…なんと運のない男か。
「さて、誤解もとけたことですし、夕食に「おーい!アレーン!かえって来たんだってー!?」
リリアが言いかけたところで突然寝室に入ってくる人物。
「カムレンさん!?耳が早いですね…今日のお勤めは終わったんですか?」
「おう!衛兵の救護なんて平和なこの都市じゃ、めったに必要とされないからな!それよりアレン!冒険者になったんだって!?」
「そうなんですよ!やっと冒険者になれたんです!これでやっとカムレンさんとリリアさんにお返しができますね…」
ひとしきりおめでとう、やらお礼なんて気にスンナ、やらごちゃごちゃした寝室だったが、カムレンの一言で悲劇が繰り返される。
「ところでアレン。」
「はい?なんですカムレンさん?」
「この黒猫ちゃんはお前の趣味か?」
その後数十分、リリアにした説明と同じことをカムレンに話すアレン。
なんやかんやで納得したカムレン。
「なんだ、そういうことだったのか!いやぁ、悪いこと言っちまったな。クローディアちゃん。ごめんな。」
「いえ、気にしてませんので大丈夫ですよ。アレン。そろそろ要件を済ませましょう。いつまでも長居してしまったら申し訳ないわよ?」
「あぁ、そうだな…カムレンさん、リリアさん。いままで本当にお世話になりました!今日から俺とクローディアで冒険者のパーティーを組んだので、外の宿を取りたいと思います。」
急な報告にびっくりするカムレンとリリア。
「おいおい、せっかくこうして寄ってってんだ。もう少しくらい、いいじゃねぇか。なぁ、リリア?」
ウィンクしてリリアに言うカムレン。
「えっ、えぇ!ほら、アレン君とクローディアさんの冒険者合格祝いもしたいし!今日一日くらいもうどうってことないから!泊まっていきなさいっ!」
声を上ずらせながらそう言うリリア。
「え、でも「バカアレン!男ならこういう時はびしっと甘えとくもんだ!!わっはっはっは!!」
豪快に笑うカムレン。
「いいじゃないアレン。こうして祝ってくれるって言うんだから、今日くらい皆で一緒にご飯でも食べましょう?私も料理手伝いますよ。リリアさん。」
「助かるわぁ~!クローディアちゃんは家事が得意なんですよねっ!じゃあ…材料は…」
その後、夕飯の買い出しを済ませ、リリアの家で夕飯を作るクローディアとリリア。
「クローディアちゃん。それとってくれる?」
「これね。はい。」
ぱっぱと手際よく料理を進めていくクローディア。
一方、カムレンとアレンはなぜか草むしりをしていた。
「アレンはともかく、なんで俺が…」
「カムレンさんも同罪ですよ!!まったくっ「アレンが先につまみ食いしようとしたんじゃねぇかっ!いいぜ、【治癒】かけまくってオーバーヒールで皮膚をドロドロにしてやろうか…?」
「すんませんした。オーバーヒールはご勘弁をぉぉおお!!」
土下座するアレン。
「こらっ!二人とも、きちんと草むしりしなさい!」
キッチンの窓からリリアが顔を出して二人を叱る。
「ほら、怒られちまったじゃねぇか。さっさとやっちまおうぜ。アレン。」
「はい……」
夕食が出来上がるまでにはリリアの家の庭は綺麗になっていた。
夕飯は豪華なステーキだった。とてもいい部位の肉だったようで、とろけるような味わいだった。
クローディアお手製のグラタンもとてもおいしかった。ちなみに、調理器具はすべてアレンのお手製である。レシピなどはリリアとクローディアに教えたのだ。
「う~ん!おいしかった~!!ホント、アレン君が来てくれて助かったんですよ~…ねぇアレン君。ちょっと相談なんだけど。」
リリアが食事の余韻に浸っているアレンに相談を持ちかける。
「はい?なんですか?」
「あの、お礼のことなんだけど、この調理器具、どこから調達してきたのかわからないけどとてもいい品よね?できれば…譲ってもらいたいな~…なんて…」
アレンはきょとんとした顔をする。調理器具のほとんどがアレンのお手製のため、実質原価はそんなにかかっていないと考えていたアレン。だがこの世界では老朽化防止の付呪や火や水を自在に出せるような器具はとても価値のあるものなのだ。
「え?そんなもんでいいんですか?」
ぶんぶんと首を縦に振るリリア。
「そんなもんなんてとんでもない!これだけの調理器具をそろえるにはかなりのお金がかかっちゃうのよ?というか…ホントにもらっていいのね…?」
リリアの想像では最低でも200Gはするだろうと思っていたので、軽く返してくるアレンに疑心暗鬼になってしまうリリア。
「いえ、それでお礼になるならいくらでも差し上げますよ。カムレンさんもいります?」
「いや、俺は大体リリアの手料理だからな。大丈夫だ」
「というか…2人はどんな関係なの?見たところカムレンさんもリリアさんも同じ職業のようだけれど…」
疑問そうな顔をして言うクローディアに、今更何を言ってるんだというような顔をするカムレン。
「俺はリリアの家でたまに夕飯を食わせてもらうんだ。俺は料理がからっきしでな。金がないときはよく世話になってんだ。んで、リリアはその代わりに俺の下で治癒術師見習いをしているんだ。」
「あ、二人は清い関係だったんですね…てっきり女性同士のアレなのかと…」
「ちがいますよっ!?ちょ、クローディアさん……冗談ですよね?」
疑いの目で見るクローディアをジト目でみるリリア。
「え、俺もリリアさんとカムレンさんってそっちなのかなぁって思ってたけど…違ったんだ…」
ふざけたことを抜かすアレン。それをカムレンが黙っているはずもなかった。
「ほぅ…アレン。いい度胸してやがるな……ツラかせや」
「ひぃっ!?すんませんしたっ!!」
当然。土下座するアレン。
わいのわいのと騒ぐうちに時間はあっという間にすぎ、夜も深くなってきた。
カムレンが退席した後、ふうっと一息つく3人。
その後はクローディアとアレンで洗い物をした後、風呂でさっぱりと汚れを落とした。
クローディアが風呂に入っている間、アレンがとても落ち着きがなかったのは言うまでもない。リリアにジト目で見られていたことも含めて。
リリアの家のリビングでくつろいでいた3人だが、リリアがソファで眠ってしまったので、寝室に運ぶアレン。
「すぅ…すぅ…」
「まったく、幸せそうな顔で寝る人だよ…よっと。」
いわゆるお姫様抱っこというやつか。クローディアがなぜかうらやましそうな顔で見ている…がアレンは気付かない。やさしく寝室のベッドにリリアを寝かせてやると、アレンはクローディアの隣に座る。
アレンがなにか言いかけるがクローディアがそれを止める。何を言おうとしているのかわかっているかのように。
「ねぇ、アレン。ちょっと外に出ましょう。夜風に当たりたい気分なの。」
「あ、あぁ…そうだな。」
ぎこちない返事をするアレン。内心穏やかではない…なぜなら。
(くっそぉっ!!告るタイミング逃した!!…だが、クローディアのあの反応…脈あり…か?)
2人で外に出るアレンとクローディア。町は静かなものだ。みな寝静まったのだろうか。
2人で夜空を見上げる…浮かぶ月が神々しく光り輝いていて幻想的な雰囲気を漂わせる。
空気中の魔力がきらきらと淡い光りを放つ…。
そんな時、アレンは意を決して言った。
「月が、きれいだね…」
渾身の一撃のつもりだった。だがアレンは言ってすぐ気付く。ここは異世界だということに。
案の定、クローディアは笑顔で答える。普通の答えを。
「えぇ…とっても綺麗ね…」
(やっちまった…俺。ここは地球じゃないっての!)
気を取り直してTAKE2。
「あの、さクローディア…」
言いかけるアレン。だが言葉が止まってしまう。隣の少女が月に照らされていて…流れるような黒髪がきらきらと月の光を反射していて、この世のものとは思えないほどの美しさを醸し出していた。それに見惚れてしまっていた。そんなとき、クローディアがアレンのほうを向く。
その眼には涙がたまっていた。
「もう…待ちきれないわ。ねぇ、アレン。私、アレンのこと…」
アレンが言おうとしたことと同じことをクローディアが言うところで、【ソレ】は突然襲い掛かってきた。空高くから降り注ぐ強烈なプレッシャー。思わず腰を抜かしてしまうクローディア。
「なんだ!?」
言いながら、真上を見るアレン。
すると、そこに【ソレ】はいた。
月に照らされた漆黒の鱗、鈍く輝く鉤爪のついた強靭な手足…人を一人であれば余裕でつぶせてしまいそうな大きさだ。そして爬虫類を思わせるような獰猛な顔つき。ぎらぎらと光る紅色の目。そして、漆黒の大きな翼。【ソレ】が、アレンの真上に何の前触れもなく、突如として出現した。
【ソレ】は世界を破滅に追い込むモノ、【黒炎竜】
またの名をアジ・ダハーカといった。
突如アレンのログが更新される
ログ
ー『黒炎竜』、アジ・ダハーカの出現を確認ー
ーサーチ、完了。-
ーアジ・ダハーカの目標、アレンー
ー世界滅亡コードを確認……未実行ー
ーエラーー
ーエラーー
ーエラーー
ーエラーー
ー外部アクセスによりアップデート開始ー
ーアップデート完了。再起動しますー
ー再起動完了 アレンさん よく来てくださいましたー
ーようこそ 世界 『ラズニエル』 へー
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