ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?

蒼凍 柊一

閑話 守護天使と神

話は、アレンが転生・・・転移したすぐ直後までさかのぼる。


—————


そこは、何もない空間だった。


あえて言い換えるのならば、アレンの転生前に居た、白い部屋とは違い、黒い、どこまでも黒い部屋だった。


そこに突然生じる金色の光が二つ。


それは形を整えていく・・・すると、金髪巨乳美女・・・ラズエルが姿をあらわした。


もう一つの光も年若い、まさしく女の子と呼ぶにふさわしい、幼女に姿を変える。


「おい、神。もとい、クズ。」


ラズエルが、ものすっごく不機嫌な顔をして、その女の子に殺意むき出しで右手でクローを少女の頭にぶちかます。


ぐふっ、と小さく声をあげ、弁明を始める女の子、いや、神様。


「ひぃ!!そんな怒んないでよラズエルちゃん!!ただ死者関連のシステム直すの遅れて、ただの煩悩にまみれた大学生・・・人間一人が異世界に飛ばされちゃっただけじゃない!!」


その言葉に、ラズエルはさらに怒りを増幅させる。自然と右手に力も入るというものだ。


「その処理にどんだけ私の手間かけさせたかわかってんの!?だいたい、あそこはほかの異世界とちがって地球人は転移できない設定になってんじゃなかったの!?どういうこと!?バグは解析しきれないほど発生してるし・・・説明しなさい!!」


「え・・・えと、まず、落ち着こうか!?頭が割れる割れる!!うぁあああああああああああ!!」


絶叫する幼女。力いっぱいクローする大人の女性。犯罪者にしか見えなかった。


「・・・わかったわ。放すから、説明しなさい。今すぐに。」


「・・・・わかったよ・・・実は「遅い!!「えぇ!?今からはなすから!!ちょっと落ち着いて!!ぐわああああああああああああ!!痛い痛い痛い!!」


そんなやり取りを三度ほど繰り返して、ストレスを発散させた守護天使と、満身創痍の幼女。いや、神。


「はぁ・・・・はぁ・・・」


「なんでそんなに疲れてるの?神様?」


「あんたが、私を力でねじ伏せるk「うるさいわね。いいから話しろや」


「はい。」


アレンみたいな幼女は手短に話すことにしたようだ。


「えと、白井源示朗・・・いや今はアレン君・・・が転生じゃなくて、転移になっちゃたのは、間違いなくバグのせいかも。あとであそこのログを確認してみたけど、ログは『無』に消えちゃってたし、確認のしようもなかった。」


言葉を切る幼女。
いきなり報告が終了した。


「それだけ?・・・まだ気になることはあるのよ?クズ。」


「え?」


幼女が冷や汗を流す。


「あの世界で、パワーバランスをめちゃくちゃにさせてたから、私とあんたで、絶滅させたはずの【不死族】の因子反応が、あの白井・・・いや、アレン君から出てきたんだけれど?どういうことかしら・・・?説明しなさい。役立たず。」


「・・・たいがいひどいね・・・ラズエルちゃん・・・まぁ、いいや、それについては、私も原因不明だよ?いまはスキル取得の欄になぜかバグって、行っちゃってるみたいだね。彼もバカじゃないから、得体のしれないスキルなんて触らないでしょ。まぁ、バグのせいで干渉できないからどうしようもないんだけど。」


「・・・あなたは、万が一、という言葉を知らないのかしら?殴るわよ?」


身をすくませる幼女。その眼には確かに恐怖が宿っていた。
涙目になった幼女はまくしたてる


「だってしょうがないじゃないか!!バグのせいで干渉できなくなるなんて、私の【全知全能】に載ってなかったんだもん!!私は無実だ!!決して故意にシステムの修理を遅らせたわけじゃないもん!!なぐさめろ!ばか守護天使!」


「威張るな!!役立たずの、クズがぁっ!!」


綺麗なドロップキックが幼女に決まる。
すごく痛そうだ・・・。


「ぐすん・・・じゃあ、もうこうなったら殺して、いっそのことなかったことにしちゃおうよ?たしか【不死族】って骨だけになっても生きてるんだよね?」


「・・・まぁ、それが妥当ですね・・・。今のところは【不死】ではないようなので、彼と、その周囲の人間すべて消してしまいましょう。彼が女を作る前に・・・!」


「あ~、そういえばそんな設定にしたねぇ・・・【不死族】の原初は一人だけ。だが【夫婦】になり、心が通い合ったもの同士になると、もう片方の【人族】、【獣人族】、【魔人族】・・・種族に「人」がついているものは【不死】になる・・・もうあのゴキブリみたいなのの掃討戦、私は勘弁だよ?下界に行くのダルいし、ラズエルちゃん一人で、やって「私も忙しいんだ。クズ。「ごめんなさい・・・クローしないでぇぇぇぇぇぇええええええ!!いやぁあああああああ!!犯されるぅぅぅうううう!!」


「誰が犯すか!気持ちわるい!!」


吐き捨てるように言うラズエルさん。


「守護天使がこんなのだってしれたら「なんか言ったか?クズ?「ごめんなさい」


すると何かを思いついたようにラズエルが言う


「怪物・・・・いやあの世界では魔物・・・でしたか。あれを出現させましょう。超強いやつをこの天界特権で出現させましょう・・・・城壁都市、あの周辺には大量の冒険者がいます。それらをすべて屠れるほどの魔物にしましょう。」


「あー・・・そうだね。アレン君が死んで、転生したのを確認したら、その魔物だけまた戻せばいいもんね。」


「守護天使とは名ばかりですが、あいにく地球人は好きじゃないので、やっちゃいましょうか。」


「よし、じゃあ設定は・・・うわ、あの世界ちょっとアレン君の影響うけてるよ・・・一か月後のこの日にしか出現設定と帰還設定できないよ・・・しかも半日限定とか・・・守護天使ちゃんと仕事s「うるせぇクズ!さっさとやれ!!「はい。」


しぶしぶといった様子で設定を終える神とラズエル。


ログが更新を続ける。


ー魔物出現設定『特異転移』ー
ー神の山の頂点、『黒炎竜』を対象ー
ー出現時間、暁の月、乖離の時ー
ー出現位置、世界『ラズニエル』内、個人名『アレン』上空ー


「さぁって、あの城壁都市も終わりだねぇ・・・まぁ最近ちょっと活性化しすぎてたし、ちょうどいいかな?」


「世界のコントロールってめんどくさいですね?自動化できないんですか?というかお前が全部やれよ」


「いやだよ、めんどくさい。」


ー準備完了ー
ー設定しますか?-


「はぁ・・・ホントに殺したいけど・・・殺せないんだよねぇ・・・このクズが・・・」


「まぁ、なんにせよ一か月後にはちょうどいいくらいになってるでしょ。あの・・・『黒炎竜』だったらうまくやってくれるでしょ。」


『はい』、『いいえ』と選択肢がでてきた。


『はい』を押す幼女。


守護天使は耳を疑った。いま。あのクズが言葉にしたモノを再確認するために。


「まってください。聞き間違いじゃなければ、あなた、いま、『黒炎竜』・・・アジ・ダハーカを?」


「うん。そうだけど・・・。」


ログが更新を続けている。


ー設定途中にエラー確認ー
ー原因特定・・・不能ー
ー特定失敗により転移設定にエラーが生じましたー
ー転移設定を『×××』に設定ー
ー個人名『アレン』に×××『黒炎竜』×××ー
ー設定完了ー
ー※バグにより、正常に機能しませんー


ー世界破滅コード0001 黒炎竜の転移による人類の抹消-
ー始動ー


黙りこくる守護天使と神。瞬時に神が気付く。己の過ちに。


「しまったあああああああああああああああああああ!!アレ、世界滅んじゃうよ!!どうしようらずえるぅぅぅうぅ!!!」


「どうしたもこうしたもあるか!!さっさと設定変えろ!クズ!!」


あわてて設定画面を見る神。その顔が青ざめる。




ーキャンセル受付ー


ー世界破滅コード 0001 は キャンセルされました。




ほっとする幼女神。だが続いてのログを見たとき。何ともいえない感情がよぎる。


ーバグ発生。アレン、白井源示朗を召喚設定の基準にされているため変更できませんー










ー『黒炎竜』の転移を続行しますー




ー※干渉不可ー














「アレン君の・・・真上に・・・バグ・・・こまれ・・・ちゃった・・」


「・・・え?もう一回言ってください?聞こえないですよ?」


「アレン君の、真上に、設定、したら、バグに、取り込まれて、干渉、できなく、なっちゃったあああああああああああああ」


泣き崩れる神。


「はああああああああああああああああああああああああ!!??」


怒涛の百連撃を神にお見舞いする。
それもそのはず。バグで干渉できないというのはアレンと同じく、神や天使が手を出せない存在になってしまったのだ。世界を破滅に追い込む力のある化け物が。


「だ、大丈夫!この世界破滅コードは解除したから!人はたくさん死ぬけど!大丈夫!!」




神が言った後。


二人は呆然と立ちすくむ。










「私はにげ「最後まで、見届けてもらいますよ?このクソ神。私の今までの苦労を水に流すのですから・・・人々の怨嗟の声まで、しっかりと、見ろよ?このクズ。」










どこまでも冷徹な守護天使の声が、響いた。

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