ファンタジー異世界って・・・どういうことだっ!?
第3話 スキル取得
その町の名は、【城壁都市フェレス】。【フェレス公国】の心臓部だ。
城壁都市という名の通り、円状に城壁が町を囲んでいる。
人口は約25万人ほど。東西南北の区画に分かれ、中心部にはこの公国の君主の城が立っている。
このくらいの規模の都市だと商業も盛んだ。いろいろな人やモノが入ってくる。
人がたくさん行き交う街だと、どうしても犯罪というものが起きてしまう。それを防ぐ手段のひとつとして、衛兵が二人一組で東西南北の門で検閲をし、魔術師ギルドから供給された【審議の球】というものを使い、犯罪者を洗い出してゆく。まぁ、普通の犯罪者であれば穴を掘ってなり、城壁を超えるなりして不法侵入してしまうのだが。
そんな町の、西門を見張っている二人組が話をしている。
西門は街道の先には深い森があり、よほどのことがなければ人は通らない門だった。
要するに、彼らは暇だったのだ。
「まったく。【ゴブリン】か、なかなか厄介な相手が近所に現れたもんだ。俺たちに討伐依頼が回ってくるなんてこと、ないよね?」
茶髪、碧眼の優しげな顔をした青年が、隣にいるイカツイ無精ひげを生やした男に話しかける。
「ゴブリンみたいな下級魔物の討伐依頼なんて回ってくるわけがないだろう。まぁ俺ら衛兵は町を守るのが役目だ。最前線には手ごろな冒険者が行って、いずれ殺してくれるだろうさ。ただし、油断は大敵だぞ。しっかり気を張って見張りをするのが俺たちの仕事だ。」
衛兵隊の隊長から先日、近くの森で【ゴブリン】を発見したものがいるので、気を張って見張りをするように、との命令をその男たちは受けていた。
「そうだね。そういえばお昼ごろになんだか男の叫び声が聞こえたんだけど…」
「あぁ、そういえばそんなのが俺にも聞こえたな。まぁどっかの冒険者が何かにやられたんだろう。気の毒だが、よくあることさ。」
二人がそんな世間話をしていると、遠目でよく見えないが、風変わりな服装をした人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「ほら、お前が対応してやれ。俺はみているからな。」
「は、はい!がんばります!」
ようやくやってきた仕事に、茶髪の男は意気込む。
ゆっくりと近づいてくる人影…はっきりその風体が確認できる位置まで「ソイツ」は歩いてきた。
途中でこちらに気が付いたのか嬉しそうな顔をして、よたよたとこちらに歩いてくる。
血まみれで。
とてもじゃないが見れたものではない。変な格好をした男が、手を振りながら笑顔で歩いてくるのだ。血まみれでだ。
気持ちが悪いなんてものではなかった。
「おいっ! お前! いったい何をしている! さては魔物の類か!? 俺が相手になってやる!」
「ぼ、僕も相手してやるぞっ!!」
意気込む二人とは対照的に、血まみれの男はよわよわしく息をつきながら、こう言った。
「た、たすけ、てくれぇ……スキル、が、ぐふっ」
———バタン。
そう言い残して、男はその場で倒れ伏した。
あわてて茶髪の衛兵は男に駆け寄る。
「おい、警戒を忘れるなよ……って聞いちゃいねぇ」
本来であれば道端でいきなり倒れた奴に近寄るのはいただけない行為だ。倒れたふりをして、隙をついて殺しにくる犯罪者もいるかもしれないのだ。
だが今回は杞憂だったようで、茶髪の衛兵が【能力分析】を使い、男の身元を確認する。
「先輩! この人、【一般人】です! 息があります、早く助けないと!」
【一般人】の職種の人々はたくさんいるが、そのどれもがひ弱で、男たち【衛兵】の職種のように強くないし、守られる側の人間だ。だが、労働者として普通にはたらく善性の人間というのが【一般人】なのだ。守るべき対象が倒れた。男たちはその事実だけで助けるのに抵抗はなくなった。
「なんだと!? ちっ、早く俺らの兵舎の医務室にいるカムレンのとこまで運んで行け!」
「わ、わかりました!行ってきます!」
風変わりな恰好をした血まみれの男…アレンは茶髪の衛兵に運ばれていった。
——————
なぜ、アレンが血まみれになっていたのかは、少し時間がさかのぼる。
ゴブリンたちから逃げ帰ってきたアレンは【メニュー】のスキル強化・取得欄をみながらなやんでいた。
「うーん、やっぱりこれ、とってみるか?【刻印付呪】と同じ感じもするけど、チート能力っぽい気もするしな」
相変わらずの独り言である。気持ち悪い。
(なんか今バカにされた気がするが、まぁいい。取得してみるか)
アレンが【×××化】を選択した。次の瞬間。
「ぐぅぅぅうぅうううあああああああああああああああああ!!」
全身が焼けるような痛みが走り、ありとあらゆる場所から血が噴き出したのだ。
街道に飛散る血。かなり出血しているにも関わらず、出血多量で死なないのは不思議な光景だっただろう。
(また、またか!? というか、さっきの痛みの比じゃねぇ……! 死ぬ……のか?)
アレンは、死んだほうがマシと思えるほどの痛みを耐え抜いた、いや、「耐えざるを得なかった」のだ。なぜなら今まで感じたことのない激痛とともにありえない量の血が噴き出しても、端から端から修復されていくのだ。傷ついては治り、傷ついては治り……を数千、数万回繰り返す、想像を絶する痛み。それを経験しているアレンはもはや疲労困憊状態だった。
なんとか数分、最後の力を振り絞り、門の前までよたよたと歩き、衛兵二人に身構えられ、
(やっと人と会えたが……こりゃ、俺死んだな)
アレンは気を、失った。
その時アレンの目に血が入っていなければ見えていたであろうログが、更新を続けていた。
ログ
ースキル【不死化】を取得。SPが強制的に0になります。-
ーエラー、能力値が規定まで達していません。解決方法の検索-
ー3件HIT。成功性が一番高いものから処理を開始ー
ー身体能力、傷害からの回復で微量ながら上昇するのを確認。逆算…5分間で250万回のループ処理を開始ー
ーループ完了。最低限能力値をクリアしましたー
ーエラー 精神状態が不安定 強制治癒しますー
ーエラー スキル前提 種族【不死族】ではありませんー
ーエラー理由検索、成功ー
ーただちに処理を開始します。-
ー種族【不死族】LV- を付与しましたー
ーエラー、処理を終了できませんー
ー【人族】に固有スキル【不死族変化】Lv1を付与ー
ーデフォルトを【人族】に設定ー
ー【不死族】に固有スキル【不死】Lv-を付与ー
ー【人族】に固有スキル【×××】LV-を付与ー
ー【不死族】に固有スキル【×××】Lv-を付与ー
ー【××××】にノーマルスキル【×××××】LV20を付与ー
ー【××××】にノーマルスキル【×××××】LV25を付与ー
ーエラー回避完了。アレン能力適用まで、ーーー時間ー
ー時間算出失敗、能力適用設定…完了。条件【××××××××××】を設定ー
ーログを削除しましたー
城壁都市という名の通り、円状に城壁が町を囲んでいる。
人口は約25万人ほど。東西南北の区画に分かれ、中心部にはこの公国の君主の城が立っている。
このくらいの規模の都市だと商業も盛んだ。いろいろな人やモノが入ってくる。
人がたくさん行き交う街だと、どうしても犯罪というものが起きてしまう。それを防ぐ手段のひとつとして、衛兵が二人一組で東西南北の門で検閲をし、魔術師ギルドから供給された【審議の球】というものを使い、犯罪者を洗い出してゆく。まぁ、普通の犯罪者であれば穴を掘ってなり、城壁を超えるなりして不法侵入してしまうのだが。
そんな町の、西門を見張っている二人組が話をしている。
西門は街道の先には深い森があり、よほどのことがなければ人は通らない門だった。
要するに、彼らは暇だったのだ。
「まったく。【ゴブリン】か、なかなか厄介な相手が近所に現れたもんだ。俺たちに討伐依頼が回ってくるなんてこと、ないよね?」
茶髪、碧眼の優しげな顔をした青年が、隣にいるイカツイ無精ひげを生やした男に話しかける。
「ゴブリンみたいな下級魔物の討伐依頼なんて回ってくるわけがないだろう。まぁ俺ら衛兵は町を守るのが役目だ。最前線には手ごろな冒険者が行って、いずれ殺してくれるだろうさ。ただし、油断は大敵だぞ。しっかり気を張って見張りをするのが俺たちの仕事だ。」
衛兵隊の隊長から先日、近くの森で【ゴブリン】を発見したものがいるので、気を張って見張りをするように、との命令をその男たちは受けていた。
「そうだね。そういえばお昼ごろになんだか男の叫び声が聞こえたんだけど…」
「あぁ、そういえばそんなのが俺にも聞こえたな。まぁどっかの冒険者が何かにやられたんだろう。気の毒だが、よくあることさ。」
二人がそんな世間話をしていると、遠目でよく見えないが、風変わりな服装をした人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「ほら、お前が対応してやれ。俺はみているからな。」
「は、はい!がんばります!」
ようやくやってきた仕事に、茶髪の男は意気込む。
ゆっくりと近づいてくる人影…はっきりその風体が確認できる位置まで「ソイツ」は歩いてきた。
途中でこちらに気が付いたのか嬉しそうな顔をして、よたよたとこちらに歩いてくる。
血まみれで。
とてもじゃないが見れたものではない。変な格好をした男が、手を振りながら笑顔で歩いてくるのだ。血まみれでだ。
気持ちが悪いなんてものではなかった。
「おいっ! お前! いったい何をしている! さては魔物の類か!? 俺が相手になってやる!」
「ぼ、僕も相手してやるぞっ!!」
意気込む二人とは対照的に、血まみれの男はよわよわしく息をつきながら、こう言った。
「た、たすけ、てくれぇ……スキル、が、ぐふっ」
———バタン。
そう言い残して、男はその場で倒れ伏した。
あわてて茶髪の衛兵は男に駆け寄る。
「おい、警戒を忘れるなよ……って聞いちゃいねぇ」
本来であれば道端でいきなり倒れた奴に近寄るのはいただけない行為だ。倒れたふりをして、隙をついて殺しにくる犯罪者もいるかもしれないのだ。
だが今回は杞憂だったようで、茶髪の衛兵が【能力分析】を使い、男の身元を確認する。
「先輩! この人、【一般人】です! 息があります、早く助けないと!」
【一般人】の職種の人々はたくさんいるが、そのどれもがひ弱で、男たち【衛兵】の職種のように強くないし、守られる側の人間だ。だが、労働者として普通にはたらく善性の人間というのが【一般人】なのだ。守るべき対象が倒れた。男たちはその事実だけで助けるのに抵抗はなくなった。
「なんだと!? ちっ、早く俺らの兵舎の医務室にいるカムレンのとこまで運んで行け!」
「わ、わかりました!行ってきます!」
風変わりな恰好をした血まみれの男…アレンは茶髪の衛兵に運ばれていった。
——————
なぜ、アレンが血まみれになっていたのかは、少し時間がさかのぼる。
ゴブリンたちから逃げ帰ってきたアレンは【メニュー】のスキル強化・取得欄をみながらなやんでいた。
「うーん、やっぱりこれ、とってみるか?【刻印付呪】と同じ感じもするけど、チート能力っぽい気もするしな」
相変わらずの独り言である。気持ち悪い。
(なんか今バカにされた気がするが、まぁいい。取得してみるか)
アレンが【×××化】を選択した。次の瞬間。
「ぐぅぅぅうぅうううあああああああああああああああああ!!」
全身が焼けるような痛みが走り、ありとあらゆる場所から血が噴き出したのだ。
街道に飛散る血。かなり出血しているにも関わらず、出血多量で死なないのは不思議な光景だっただろう。
(また、またか!? というか、さっきの痛みの比じゃねぇ……! 死ぬ……のか?)
アレンは、死んだほうがマシと思えるほどの痛みを耐え抜いた、いや、「耐えざるを得なかった」のだ。なぜなら今まで感じたことのない激痛とともにありえない量の血が噴き出しても、端から端から修復されていくのだ。傷ついては治り、傷ついては治り……を数千、数万回繰り返す、想像を絶する痛み。それを経験しているアレンはもはや疲労困憊状態だった。
なんとか数分、最後の力を振り絞り、門の前までよたよたと歩き、衛兵二人に身構えられ、
(やっと人と会えたが……こりゃ、俺死んだな)
アレンは気を、失った。
その時アレンの目に血が入っていなければ見えていたであろうログが、更新を続けていた。
ログ
ースキル【不死化】を取得。SPが強制的に0になります。-
ーエラー、能力値が規定まで達していません。解決方法の検索-
ー3件HIT。成功性が一番高いものから処理を開始ー
ー身体能力、傷害からの回復で微量ながら上昇するのを確認。逆算…5分間で250万回のループ処理を開始ー
ーループ完了。最低限能力値をクリアしましたー
ーエラー 精神状態が不安定 強制治癒しますー
ーエラー スキル前提 種族【不死族】ではありませんー
ーエラー理由検索、成功ー
ーただちに処理を開始します。-
ー種族【不死族】LV- を付与しましたー
ーエラー、処理を終了できませんー
ー【人族】に固有スキル【不死族変化】Lv1を付与ー
ーデフォルトを【人族】に設定ー
ー【不死族】に固有スキル【不死】Lv-を付与ー
ー【人族】に固有スキル【×××】LV-を付与ー
ー【不死族】に固有スキル【×××】Lv-を付与ー
ー【××××】にノーマルスキル【×××××】LV20を付与ー
ー【××××】にノーマルスキル【×××××】LV25を付与ー
ーエラー回避完了。アレン能力適用まで、ーーー時間ー
ー時間算出失敗、能力適用設定…完了。条件【××××××××××】を設定ー
ーログを削除しましたー
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