生まれながらにして凶運の持ち主の俺はファンタジー異世界への転生ボーナスがガチャだった時の絶望感を忘れない。

蒼凍 柊一

ガチャ一発目

「くそ…いちいち腹立たしいな…あの白井は…!」


俺は憎い奴の顔を思い浮かべ、脳内で飛び膝蹴りを食らわした。
奴の体はくの字に折れ、血反吐をぶちまける様が目に浮かびちょっとは気が晴れた。


「…はぁ…なんか暑いし、喉も乾いたし…ガチャ回してとっとと街の方へ行こうかな?」


先ほどのスキル発動の仕方を思い出す。
ただただ、思い浮かべればいいと書いてあったので、俺はその通りにした。
すると…


ログ
―アクティブスキル【神装宝庫】起動―


「うわっ!?」


急に自分の周りを蒼い線が飛び交った。
それは徐々に螺旋を描き、俺の体全体を包み込む。


「失敗か!?失敗なのか!?幸運値がなさ過ぎてガチャすら引けないのか!?俺は!!」


一人叫び、絶望に打ちひしがれる俺。
ここまでひどいとは思わなかったが、それもそれでしょうがないのか…?とか思い始めたその時。


螺旋の先端部分が俺の右手のあたりを包み込み始めた。
それはまばゆい輝きを放ち、徐々に俺の右手に収束し始めた。


気が付くと…俺の右手の中には…
異世界に似つかわしくない、黒い四角いフォルム
ボタンは下部に一つ大きな丸が。
側面にはプラスとマイナスの表記がなされたボタンが配置。
右上には、これまた細長いボタンがあった。


何処かで見慣れたソレは…生前俺が愛用していたアレにそっくりだった。


「っていうか……これ、携帯電話じゃねぇか!!というよりipho○eだよ!これ!?」


いろいろアウトなものがそこにあった。


「ま、まぁいい…わかりやすくて助かるな。これは…」


慣れた手つきで起動させる俺。
すると、画面にこう表示された。


―初回限定!R以上確定キャンペーン実施中!運のないキミも、これで異世界ライフを楽しめるぞ!…初回限定の一回だけで何ができるかっていったら、お前には何もできないと思うがな!!―
―何が出るかは運次第。最高神の神装宝庫へようこそ―


「…ダメだ。白井への殺意しか湧いてこない」


俺が今日何度目になるか分からない白井への憎しみを感じた時、携帯じゃないほうの画面が更新された。


ログ
―【神装宝庫】起動確認―
―アクティブスキル【無限収納】を覚えました―


「…これまたわかりやすい名前を付けたな…どうせあれだろ?アイテムボックスみたいな感じの奴だろ?」


驚きはそんなにない。というより、異世界を旅するならこれくらいのアドバンテージは欲しかったところだ。
【無限収納】と頭の中で思い浮かべると、それは出現した。
俺の左手に、突如として財布が現れた。しかも黒革。


「…は?…財布…?」


全然重くないことから、まったくの空財布だろう。
俺は…嫌な予感しかしなかった。


「後回しだな。これは…どういう使い方なのかさっぱりわからないし、なんか早くガチャやってみたいし…」


一人呟き、財布をズボンのポケットに入れた。
再び携帯電話もどきを見た俺は、おもむろにPUSHと書いてあるところをタップした。


「うわっ!?」


いきなり青い光の球が俺の眼の前に打ちあがった。
そして、弾けたかと思うと、紋章のような形に姿を変えた。


『汝、力を求めしものか?』


「…手、手が込んでるなぁ…」


頭の中にいきなり聞こえてきたその声は、間違いなくアイツの声だが、抑揚が全くない。
リアルタイムで言ってるのではなく、きっと録音か何かしたものだろうと、俺はあたりをつけた。
それにしても…恥ずかしい男だ。
こんなもの、俺だったら恥ずかしすぎて死ねるレベルの黒歴史だ。
だが、転生ボーナスに胸は高鳴る。
どんなに悪いモノでも、ただで手に入るものほどうれしいものはない。


「あれ?」


だが、いつまでたっても紋章は俺の目の前にあるままだ。
どうやら、何かをしないといけないらしい。


「…もしかして、声に答えなきゃいけないのか…?」


そう思うと、ヘルプ画面が俺の視界の端に映った。


ヘルプ
―【神装宝庫】は問いかけに答えなければ力を貸してはくれないぞ?お前の思うがままに祈るといい。グッドラック。せいぜい恥ずかしい言葉を一人で叫ぶことだ。by白井―


「またお前か!!…くそっ…なんか余計に恥ずかしくなってきたじゃないか…!」


顔が自然と赤くなるのがわかるが、ガチャを回さなければこの先生きていけないかもしれないのも事実。
それは…わかっているのだが…わかっているのだが…!


「くぅ……仕方ない…」


俺は覚悟を決めた。
どうせ周りには誰もいない。
居たとしても動物とか、植物とか、青空とかだけだろう。


「…俺は力が欲しい!この世界を生き抜くための力が!」












紋章が、その声に答えるかのように銀色に光り輝き、弾けた。
同時に俺は自分が叫んだことに対して、穴に隠れたいくらいに恥ずかしくなった。


「ヴヴヴ!」


携帯電話が振動したので、そちらを見た俺は、自分の眼を疑った。
そこには、こう書いてあったのだ。








―おめでとうございます!SSR・・・が当たりました!―


―以下の英霊を獲得しました―


名前:【最高神】アレン
ランク:-
必要魔力:0~9999999999999




「は?」


木々の間を、俺の声が通り抜けた…気がした。


ログ
―アクティブスキル【英霊召喚】が追加されました―

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