ルクフェイシア城の城下町 黒衣の青年と猫の少女はまったりと仕事しながら日常を生きる。
まったりそのよん:ギルドショップで出会いがあった
ヴェルムは現在、冒険者が集うギルドショップへ足を運んでいた。
理由は単純だ。
ミルレイに朝方、「お店に冒険者ギルドの人がたくさん来るから、うちのお店も役に立つもの売りたいの~」などと言われ、その上ココアに「お仕事しなさい」と迫られたからだ。
曖昧なターゲットに、曖昧な依頼。
いつもよりも数段難しい任務を課せられ、ヴェルムは商品陳列棚の前で途方に暮れていた。
「役に立つものというか、宿屋で物販してどうすんだよミルレイさん……ギルドショップに任せれば全部そろうっての……はぁ」
ため息を吐いたその時だった。
「あの……」
「ん? あぁ邪魔だったか。すまん」
横から声をかけてきたのは女性だった。
ヴェルムは目の前にある商品――使い捨ての火の魔石――をとりたいのかと思い、その眼鏡をかけた知的な少女に場所を譲った。
「あの、その……」
「え、なんだ?」
だが、少女はヴェルムがどいた分、ヴェルムの方へ接近してきたのだ。
どうやら用があるのはこちらの方らしい。
「俺に何か用なのか?」
「す、すみません。貴方は冒険者さんですか?」
おずおずと聞いてくる少女は、どこか自信なさそうにこちらに問いを投げかけてきた。
どういうつもりなのだろうか。
改めて、ヴェルムは少女に視線を向ける。
そこで始めてヴェルムは少女に違和感を覚えた。
ここは冒険者のギルドショップだ。当然、武器や防具、サバイバルに必要な魔石やら何やらを取り扱ってはいるが、基本的には冒険者向けのショップなのだ。
なのに、彼女は――冒険者らしくない。
ひ弱そうな体は藍色の腰ぐらいまでの短めのローブのようなもので包まれており、腰ベルトには魔術学院の生徒である証の魔導書が一つ。
明らかに魔術師だ。
確かに、冒険者の中には魔術師がいることもあるが、そのような人間は軒並み武術を修めているものだ。
なぜかって?
それは、魔術しか修めていない者にはもっと高給な職があるからだ。大体の魔術師が王宮魔導士や研究者になるものがほとんどだ。
冒険者から魔術師を目指すものもいなくはないが、そういう者は魔術学院には通わずに冒険者をやりながら魔術を勉強することになる。よって、魔術師を目指す冒険者はいても、冒険者を目指す魔術師はいないのだ。
「冒険者、と言えばそれっぽいことはしちゃいるが、君みたいな魔術師がここで何してるんだ?」
「冒険者さんなんですね!? あの、わ、わ、私を冒険者にしてください!!」
90度の見事な礼を披露した少女は、意味不明な言葉を口にした。
「……は?」
「お願いします! 私を冒険者にしてください!」
「……見たところ、君は魔術師だろう? なんで冒険者になんかになろうとしているんだ? 若気の至りか? それとも自殺志願者なのか?」
ヴェルムが言うと彼女は上体を起こし、意を決したようにこちらを見た。
「魔術師が冒険者を目指しちゃダメなんですか!?」
思ったよりも大きい声で少女が言うので、思わずヴェルムは一歩後ずさってしまう。
「いや、ダメじゃないけどさ……魔術師は魔術師として生きるから、そんなことしないなって思っただけだ」
「一般的な魔術師はそうかもしれませんが、わ、私は違うのです! お願いします!」
「いやいや、なんで俺なんだよ……冒険者ギルドでも行って相棒と呼べる人間を見つけてくればいいじゃないか……」
「もう冒険者ギルドに入って、登録もすませたのですが……初心者の、しかもサポートがかなり必要な魔術師オンリーの私みたいなのとは誰も組んでくれなくて――」
そこで、ヴェルムは思う。
ああ、面倒事が舞い込んできちまった。と。
理由は単純だ。
ミルレイに朝方、「お店に冒険者ギルドの人がたくさん来るから、うちのお店も役に立つもの売りたいの~」などと言われ、その上ココアに「お仕事しなさい」と迫られたからだ。
曖昧なターゲットに、曖昧な依頼。
いつもよりも数段難しい任務を課せられ、ヴェルムは商品陳列棚の前で途方に暮れていた。
「役に立つものというか、宿屋で物販してどうすんだよミルレイさん……ギルドショップに任せれば全部そろうっての……はぁ」
ため息を吐いたその時だった。
「あの……」
「ん? あぁ邪魔だったか。すまん」
横から声をかけてきたのは女性だった。
ヴェルムは目の前にある商品――使い捨ての火の魔石――をとりたいのかと思い、その眼鏡をかけた知的な少女に場所を譲った。
「あの、その……」
「え、なんだ?」
だが、少女はヴェルムがどいた分、ヴェルムの方へ接近してきたのだ。
どうやら用があるのはこちらの方らしい。
「俺に何か用なのか?」
「す、すみません。貴方は冒険者さんですか?」
おずおずと聞いてくる少女は、どこか自信なさそうにこちらに問いを投げかけてきた。
どういうつもりなのだろうか。
改めて、ヴェルムは少女に視線を向ける。
そこで始めてヴェルムは少女に違和感を覚えた。
ここは冒険者のギルドショップだ。当然、武器や防具、サバイバルに必要な魔石やら何やらを取り扱ってはいるが、基本的には冒険者向けのショップなのだ。
なのに、彼女は――冒険者らしくない。
ひ弱そうな体は藍色の腰ぐらいまでの短めのローブのようなもので包まれており、腰ベルトには魔術学院の生徒である証の魔導書が一つ。
明らかに魔術師だ。
確かに、冒険者の中には魔術師がいることもあるが、そのような人間は軒並み武術を修めているものだ。
なぜかって?
それは、魔術しか修めていない者にはもっと高給な職があるからだ。大体の魔術師が王宮魔導士や研究者になるものがほとんどだ。
冒険者から魔術師を目指すものもいなくはないが、そういう者は魔術学院には通わずに冒険者をやりながら魔術を勉強することになる。よって、魔術師を目指す冒険者はいても、冒険者を目指す魔術師はいないのだ。
「冒険者、と言えばそれっぽいことはしちゃいるが、君みたいな魔術師がここで何してるんだ?」
「冒険者さんなんですね!? あの、わ、わ、私を冒険者にしてください!!」
90度の見事な礼を披露した少女は、意味不明な言葉を口にした。
「……は?」
「お願いします! 私を冒険者にしてください!」
「……見たところ、君は魔術師だろう? なんで冒険者になんかになろうとしているんだ? 若気の至りか? それとも自殺志願者なのか?」
ヴェルムが言うと彼女は上体を起こし、意を決したようにこちらを見た。
「魔術師が冒険者を目指しちゃダメなんですか!?」
思ったよりも大きい声で少女が言うので、思わずヴェルムは一歩後ずさってしまう。
「いや、ダメじゃないけどさ……魔術師は魔術師として生きるから、そんなことしないなって思っただけだ」
「一般的な魔術師はそうかもしれませんが、わ、私は違うのです! お願いします!」
「いやいや、なんで俺なんだよ……冒険者ギルドでも行って相棒と呼べる人間を見つけてくればいいじゃないか……」
「もう冒険者ギルドに入って、登録もすませたのですが……初心者の、しかもサポートがかなり必要な魔術師オンリーの私みたいなのとは誰も組んでくれなくて――」
そこで、ヴェルムは思う。
ああ、面倒事が舞い込んできちまった。と。
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