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髑髏の石版

奥上 紫蘇

第七章 ~激闘~

そんな桜子の葬式騒動があった翌朝、川坂邸のポストに入っていたのは一枚の手紙だった。

川坂庄太郎へ

どうだい。これで、私の計画に嘘偽りが何も無いということが証明されただろう。君の頼りにする警察や坂田探偵も、結局は後手後手に回ってるだけにすぎない。
つまり、このままだと私の犯行を食い止められはしないだろう。
そこでだ。次の標的は、川坂絵里。
今夜、今夜だ。今夜きっかり絵里を殺害する。そのくらいハンデを与えなきゃ、君たちとは対等にやり合えないだろうからね。
君たちにとってチャンスを与えたわけだ。だから、せいぜい頑張りたまえ。

超能力者

人を見下した、実に卑劣な犯行予告文だった。栗森警部ら警察や坂田探偵までも侮辱している。
川坂氏はこの手紙を見て、まず坂田探偵に見せた。
坂田探偵は内心、この手紙の文に怒りを覚えながらも、これは超能力者が我々の冷静さを欠かせるために煽ってるだけにすぎない。と心にいいきかせて、とりあえず超能力者の犯行を防がねばならないという意識が失われないように努めた。
坂田探偵が提案した案は、実に危ない案であった。
その案というのは、川坂絵里の部屋の中に、川坂絵里、川坂庄太郎、坂田探偵の三人だけを入れて、警察の警備は外側から。しかも、4~5人程度。木崎助手は、川坂絵里の部屋のドアを見張る。といったものだ。
つまり、"少人数の警備"。これが、坂田探偵の提案した案である。
一見、この案はデメリットだけにしか見えない。この案を提案された栗森警部は最初は猛反対した。
だが、坂田探偵はこう言う。
「超能力者は変装の名人なんだから、多人数による警備は逆効果。人数が少なければ、その分変装できる可能性も極めて低くなり、また部屋を密室にしておけば、外から入ることもあるまい。」
栗森警部は、その坂田探偵の意見に半分納得した。確かにそれならば超能力者から身を守れるかもしれない。だが、栗森警部が半分納得していないのには理由があった。それは、もし超能力者が侵入に成功したとき、川坂氏も部屋の中にいるとすれば、巻き込まれてしまう恐れがないかというものだ。
だが、坂田探偵にその懸念はなかった。それは、超能力者の完璧主義を知り尽くしていたからである。
犯行予告からして、殺害対象は川坂絵里のみ。よって、川坂庄太郎が巻き込まれる可能性はほぼ皆無と、そう読んでいるのだ。すなわち、むしろ逆に川坂庄太郎が部屋にいることにより、超能力者の犯行をやりにくくするという効果も狙えるであろう。
栗森警部は、坂田探偵の提案に対して完全に納得はしていないものの、他に思いつくような案もないため、自動的に坂田探偵の案が採用されることとなった。
警備は少人数であるが、徹底する。栗森警部が完全に信用出来る警官を数名選び、今回の警備に配属させる。超能力者が変装の名人であるため、顔をつねったり、指紋を調べたり、身体検査をしたりとありとあらゆる手を使い、もっとも信用出来る警官をもっとも信用出来る状態にさせて川坂邸の外に配置した。
最初、あの犯行予告文を見た絵里は、何も言わずに自分の部屋にこもってしまった。ドアの外から川坂氏が覗こうとすると、絵里のすすり泣く声が聞こえてくる。彼女にとって、とても耐えられる精神状態ではなかった。
最初は、川坂庄太郎でさえも絵里の部屋に入れてくれず、坂田探偵の計画が全くもって無駄となるところだった。
川坂氏は粘り強くドアの外から絵里を説得した。
「坂田探偵がいるから大丈夫だ。きっと絵里を守ってくれるよ。」
だが、最初はふさぎこんで「ちょっと、しばらく一人にしてくれる...?」と彼女は言っていた。
夕食の時間が近づいてきた頃、ようやく川坂氏と坂田探偵が絵里の部屋に入ることが出来た。
絵里の部屋は十六畳。部屋には可愛いクマのぬいぐるみが置いてあったり、可愛い時計が置いてあったりと女子感あふれる部屋だった。家具は小さめのテーブルと机、あとはベッドとタンスだった。
今夜は、絵里はいつも通りベッドで寝て、川坂氏と坂田探偵は地べたで寝ることとなった。布団さえも用意できなかったので仕方ない。
坂田探偵は絵里の部屋に入る前に、ドアの前で警備をすることになった木崎助手に向かってこう言った。
「頼むよ。木崎君。君の働きしだいで、この超能力者の計画が成功するかどうかかかっているんだ。」
すると、木崎助手は自信ありげにこう言った。
「任せてください。一夜、必ずこのドアから侵入させやしません。」
「それは頼もしい。あとは、もし部屋の中で何か音が聞こえたとしても、絶対にドアの鍵を開けないで欲しい。その音が超能力者の仕掛けたフェイクの可能性があるから。」
「ええ。わかりました。」
坂田探偵は、そう木崎助手に忠告したあと、坂田探偵は絵里の部屋へと入っていった。

夜の八時頃、まずは盗聴器が仕掛けられていないかどうかを坂田探偵は調べた。
「なるほど。特に盗聴器は仕掛けられていないようだ。」
盗聴器の発する電波を感知することはなかったので、そこに関しては安心した。
次に窓の確認だ。窓にはしっかりと鍵がかかっており、窓ガラスを叩いても特に強度の脆いところは発見されなかった。
他にも秘密の抜け道がないかどうかなど、懸念しなくてもよさそうなところまでくまなくチェックした。
超能力者の犯行を絶対防げるという確証はなかったが、ここまでの完全な密室の中、どうやって超能力者は犯行を行えるのだろうと思うと、この計画は到底失敗するとしか思えないのである。
坂田探偵は部屋の中に武器を持ち込むことなどはしなかった。持っているのは、懐中電灯だけ。暗転攻撃に転じてきた時に素早く対処するだけである。もし、それ以外に小刀などの凶器を持ち込んでいたとすれば、それはそのまんま超能力者に利用されるおそれがある。一応、万全の準備ではないものの、超能力者を捕まえるというよりかは絵里の命を守ることを目的とした準備が整った。
夜の九時。未だに超能力者の動きは見られない。外の警備との連絡もとっているが、外も特に大きな動きはないという。まさか超能力者は、今回の犯行を諦めたのではあるまい。いや、超能力者はそんなことでは犯行を諦めるなどしないだろう。ましてや、殺人予告まで送り付けてるくらいだから、警察側がどんな対応をしたところで、予告通りに犯行をやり遂げる自信がきっとあるのだろう。
夜の十時頃、一応三人は眠りについたが、三人とも到底寝れる状態ではなかった。
絵里は恐怖に怯え、川坂氏は心配が重なり、坂田探偵はそもそも寝るつもりはなく、超能力者がいつやってくるか警戒している。
そんなとき、ついに状況が動いた。
薄暗い明かりがついている部屋だったのだが、その明かりが急に消えた。停電である。
ただ、他の世帯に停電が見られないことから、この家だけの停電。超能力者の仕業であることは否めなかった。
ただ、停電なのは想定済み。坂田探偵はすぐさま持っていた懐中電灯の明かりをつけた。絵里は恐怖で叫ぶことすらできない。坂田探偵は、「大丈夫。大丈夫。落ち着いて。」と絵里をなだめた。
だが、これだけでは終わらない。次の瞬間、またすぐに明かりが消えた。一体、何があったのか。吹っ飛ばされた懐中電灯。坂田探偵は驚きを隠せない。暗闇の空間であせる川坂絵里。坂田探偵は、吹っ飛ばされた懐中電灯を手探りでさがす。
手探りで探している間に銃声が鳴り響く。ガラスが割れたような音も入り交じる。もう言葉に表せないような恐怖が...そんな恐怖が絵里、川坂氏を襲った。
坂田探偵がやっと手探りで懐中電灯を見つけたその時、、、
「うっ、、、」
どうやら銃弾が坂田探偵の腕をかすめたようだった。そこまで痛手ではない。だが、漏れる坂田探偵の声が、より一層絵里を恐怖へと陥れた。
「さ、坂田探偵大丈夫ですか。」
庄太郎が怯えながら坂田探偵に聞いた。声は完全に震えている感じだった。
「だ、大丈夫だ。」
これに対して坂田探偵が暗闇の中、答える。
「絵里、絵里は大丈夫か?」
だが、絵里から返事はない。
「頼むから返事してくれ...」
だが、全く返事はない。
坂田探偵は懐中電灯をつけようとしたが、なんとつかない。電池切れか?それとも銃弾をモロにくらって壊れたのか?
「木崎君!ブレーカーだ!ブレーカーを上げてくれ!」
木崎助手は、部屋のドアの前にずっといた。部屋の前はあかりをつけておらず、木崎助手はずっと懐中電灯を握っていたため、家が停電の状態であるということは特に知らなかった。 
だが、あの銃声。坂田探偵の焦りよう。木崎助手は、状況を察した。
懐中電灯を片手に持ち、階段をスタスタと降りていく。途中、踏み外しそうになったが、どうにか転ばずに、一階にあるブレーカーの前へとこぎつけた。
木崎助手がブレーカーを上げると...
部屋の中には絵里の姿はなかった。
部屋にあったのは、無惨にも壊れ果てた懐中電灯。坂田探偵の血。割れた窓ガラスの破片。それだけだった。
あかりがついたとき、坂田探偵はあっけに取られていた。
この暗闇の中、どうやって絵里だけを標的に絞りこんで、絵里だけを連れ去ることが出来たのだろうか。
坂田探偵は、銃弾を受けた右腕を軽く押さえながら、ただ呆然と前の方を見つめるだけだった。
一方、川坂氏はすぐに状況を把握しきることができなかった。ただ、絵里がいないという事実を知った川坂氏は、うつむいたまま動かなかった。

翌日、川坂邸のポストに手紙が入っていた。
その手紙の内容はというと...

川坂庄太郎へ

フフフ。どうやら、私の勝ちのようだね。せっかくハンデを与えてあげたというのに、これでは実につまらないね。さてさて、絵里は違うところにいるよ。捜したいのならば、捜せばいい。高尾駅にでも行けば、会えるだろうね。まあ、期待はしないことだ。
なぜなら、もう彼女は既に死んでしまっているのだから。
超能力者より

川坂氏は、最後の一文の"既に死んでしまっているのだから"という言葉を見て、残されていた微かな期待が全て消え去り、絶望という奈落の底へと落とされてしまった。

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