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髑髏の石版

奥上 紫蘇

第五章 ~発見~

翌朝の八時頃、坂田探偵と栗森警部、木崎助手は一緒に銀座のデパートへと向かった。
そのデパートは8階建ての立派なデパートであり、平日休日かかわらず、たくさんのひとが訪れるデパートである。
カーナビが示していたのは、このデパートの地下駐車場。
このデパートの店長の誘導で、坂田探偵らはデパートの地下駐車場へと案内された。
地下駐車場は、車が100台から200台ほど止められるくらいの広さだった。
まだ開店前のため、地下駐車場には誰も車を止めていない。
坂田探偵らは、地下駐車場をぐるっと回って捜査をしたが、特に気になるところは見つからなかった。
「なんで、ないんでしょうね。」
栗森警部が坂田探偵に問いかける。まさか、坂田探偵の推理が外れたのか。と栗森警部は思っていた。
「んむ。もしかしたら、外れてたのかもしれませんね。」
坂田探偵もそれは思っていた。地下駐車場に我々を案内しておきながら、なにひとつ証拠がないなど、これは的はずれな推理だったのかもしれないと思っていた。
「お望みなら...」
坂田探偵と栗森警部が話している時に、デパートの店長が口を挟んだ。
「地下駐車場の防犯カメラの映像でもご覧になります?」
「あ、いいんですか?」
坂田探偵が、思わず反応した。
「ええ。捜査のためになるなら。」
実に捜査に協力的な店長だった。普通に考えて、こんな朝早くからデパートに行かされて、出来れば早く帰って欲しいと思っているところだろう。そこをわざわざ防犯カメラの映像を見せてあげるなど、店長は性格の良い人なのであろう。
坂田探偵らは店長に連れられ、一階にある監視室へと向かった。
監視室には、普通このデパートの店員もしくは警備員しか入れない。今回、特別に入れさせてもらえるということだったが、監視室内での撮影の禁止、加えて防犯カメラの操作の禁止を店長から言われた。まあ、撮影なんて到底する気はないし、防犯カメラも操作する必要性は我々にはないのだが。
防犯カメラは、百箇所あまりにわたって設置されている。
各階に十個ほどの防犯カメラがあり、この防犯カメラの映像を録画しておき、一週間の間保存している。あまりデータを費やしたくないため、一週間で防犯カメラの映像を消すように徹底されているようだ。
そのため、昨夜の防犯カメラの映像はバッチリと残っている。
桜子が失踪したのが、午後五時過ぎ。となると、午後六時あたりくらいからの映像が参考になる。
まずは、地下駐車場にある五つの防犯カメラの映像をくまなくチェックした。
午後六時の時間帯はまだ人がたくさんいるため、正直超能力者がいるかどうかなどは判断しようがない。
午後八時の閉店に近づくにつれて、人の数はだんだんとまばらになっていくが、超能力者らしき人物の姿は目撃されなかった。
午後八時。ついにデパートが閉店する。
そして午後九時頃に、一人の男性が地下駐車場を横切る姿が見えた。
「あ、あの人、超能力者じゃないですか?」
真っ先にその男を発見したのは、木崎助手だ。
「ん?」
坂田探偵が目を凝らして、防犯カメラを覗き込む。
「あ、もういなくなっちゃいましたよ。んと、巻き戻せますか?」
「あ、いいですよ。」
店長が防犯カメラの映像を巻き戻した。
「よく見ててくださいね。」
木崎助手が、みんなの注意を惹き付ける。
「ほら、ここ。」
木崎助手がそう発すると同時に、店長が防犯カメラの映像を一時停止した。
確かに、一人の男性が映っている。
「あー、この男は、恐らくうちのデパートの店員だよ。昨日の鍵当番だな。」
店長がそう言ったあと、さらに続けた。
「ほら、やっぱりそうだよ。あの服装は、このデパートのものだからな。」
ただ、まだ店長の言うことを完全に信用し切れていないのが坂田探偵。なぜなら、超能力者は変装の名人でもあるからだ。
「んと、じゃあその昨日の鍵当番に聞いてくれますか?本当かどうか確かめたいので。」
「あ、それじゃあ今から電話かけるよ。」
店長は、特に嫌がりもせずに坂田探偵の願いを聞いてくれた。
店長がその鍵当番と電話をしたところ、その鍵当番は確かに夜の九時くらいに地下駐車場を通って、帰ったそうだ。
あのあと、防犯カメラの映像には何も映ってなかったことから、あの防犯カメラに映っていた男性は、このデパートの鍵当番に間違いないだろう。
そうなると、いよいよ超能力者がこの地下駐車場に来ていないということが証明されてしまい、坂田探偵の推理が外れているということが裏付けられてしまった。

と、ここで木崎助手がまた口を開いた。
「そういえば、マネキン展ってなんなんですか?」
マネキン展とは...?このデパートで今開催しているイベントである。
地下駐車場から入口に入るのに50mほどの地下通路があるのだが、地下通路に何も掲示などなく、実に物寂しい空間のため、催事場として地下通路を利用することにした。
地下通路の壁沿いに、ずらーっとマネキンが並べられている。
ただ、マネキン展とは言いながらマネキン自体を鑑賞するのではなく、マネキンに着せられらている服や装飾などのコーディネート。これを鑑賞するのである。
色んなコーディネーターが、それぞれマネキンをより美しく、より似合うようにコーディネートしていく。
木崎助手は、たまたまそのマネキン展の広告を見つけて、ここでそれを思い出したのである。
「ああ。マネキン展は、地下通路で行われていますよ。」
木崎助手の問いに店長が答える。
「地下通路...もしかしたら、関係あるかもしれませんね。」
坂田探偵が今回の事件と地下通路の関連性を示唆した。
「なるほど。一応、地下通路も地下駐車場のうちには入るか。なら、一応調べてみますか。よろしいですか?店長。」
栗森警部が、坂田探偵の言うことに納得し、店長にマネキン展の方を見てもいいかどうか聞いた。店長は快く返事してくれた。
「あ、大丈夫です。」

坂田探偵らは、地下通路へとやって来た。色とりどりのマネキンが見える。
使われているマネキンはどれも一緒だが、コーディネートが全然違う。
坂田探偵は、ゆっくり歩きながら、ずらりと並んでいるマネキン達をじっくりと眺めていた。
マネキンの足元には、このコーディネートを施した人の名前がフルネームで書かれており、このコーディネートの題名がその名前の下に書かれている。
坂田探偵達が地下通路の中間あたりまで歩いたところで、坂田探偵がいきなり立ち止まった。
「どうしたんだね?坂田探偵。」
栗森警部が坂田探偵に訪ねると、坂田探偵が足元を指さしてこう言った。
「このマネキンの足元をみてくださいよ。」
全員の視線が下に向いた。そのマネキンの足元にはこう書かれてあった。

游江木  京子
タイトル  「桜」

游江木京子とは、超能力者の妹の本名である。警察内ではこのような情報が普通に共有されていたため、栗森警部は足元を見てすぐに察した。
「ま、まさか...」
栗森警部の視線はすぐにマネキンへと移った。
「桜」という題名ながら、そのマネキンにはサングラスがかけられ、マスクで顔が覆われている。全身も、黒い服に黒いズボン。長袖長ズボン。手袋がはめられ、手袋と靴下の色は赤色。つまり、そのマネキンは肌を見せていないのである。
坂田探偵の想像、栗森警部の想像、木崎助手の想像はそれぞれ一致した。
タイトルが「桜」である意味、マネキンが肌を見せない理由。
ただ一人、店長だけは雰囲気が変わったことに戸惑いを隠せずにいた。店長は、ごく普通の一般人のため、この状況を察せないのは当然だろう。
まず、タイトルが「桜」である意味は、桜子を暗示させている。
マネキンが肌を見せない理由...それは...
坂田探偵が、無理やり顔を覆っているマスクを引き剥がした。
「な、何をするんですか!?」
店長は、坂田探偵の腕を掴み、坂田探偵の行動を止めようとした。
だが、そんな店長の抵抗など全くもって気にせず、坂田探偵はマスクを引きちぎったあと、そのマスクを床へ落とした。
そう。坂田探偵、栗森警部、木崎助手はそれぞれあのマネキンは、マネキンではなく桜子本人が入っているのではないかという風に思っていた。もし、そうならどれだけ恐ろしいだろうか。超能力者ならやりかねない。
だが、意外にも結果は違った。
マネキンは普通のマネキンだったのだ。
「なに...?」
坂田探偵も推理が的外れとなり、驚いて動けなかった。

だが...
彼らが、桜子がここに遺体としていないことを確認して少し安心したその時...
地下通路の天井の一部、ほんの1m四方ほどだが、天井が抜けた。
と、同時になにかが彼らのそばに落ちた。
そう。桜子の遺体である。
桜子が哀れな姿で、地下通路の抜けた天井から転落したのである。桜子は頭を強く打ち、頭から大量の血が流れていた。その血が、游江木京子と書かれたネームプレートにまで流れ、黒文字で書かれたタイトルの「桜」が赤色に染まった。
一同は、この驚くべき光景を見て、誰も動けず、声すらあげられなかった。
栗森警部、木崎助手、坂田探偵はまだこういった光景を見ることは度々あるため、多少は慣れている。だが、店長にとって目の前に人が転落するという光景を見るのは初めてのことであり、大きな動揺を受けるのは間違いない。
まず、栗森警部が店長に向かって「見ないでください。ここから先は私たちの領域なので。」と言った。
店長は壁によりかかり、なんとか気持ちを落ち着かせようとした。
その後、坂田探偵は木崎助手にこう言った。
「木崎君。私は一階に行くから、現場は頼んだぞ。」
「え、先生。あ...」
木崎助手が坂田探偵に答えようとしたときには、もう既に坂田探偵の姿はなかった。

坂田探偵は、一階へと向かった。
なぜ、一階なのか。桜子は、抜けた天井から落下した。ゆえに、桜子が一階から転落した可能性が高い。そのために、坂田探偵は一階へと向かったのだ。
抜け落ちた天井は、一階の男子トイレの床。
坂田探偵がそのトイレへと向かうと、なんと男子トイレの奥に首吊り遺体があった。手前には、抜け落ちた穴...
遺体は、男子トイレの清掃員のような格好をしていた。遺体の足元には、「超能力者」と書かれた血文字と四枚の石版...

デパートの開店を知らせる鐘の音が九つ鳴り響いた。だが、この鐘の音は偽りのものとなった。事件のために、今日からデパートはしばらく休業となったからである。
そして、このデパートがまたもや事件に関与することになろうとは、誰でさえも知る由もない。そう、犯人以外は。

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