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髑髏の石版

奥上 紫蘇

第四章 ~失踪~

話は、坂田探偵事務所に戻る。
「そういえばだが...」
栗森警部が、坂田探偵に向かって言った。
「なんですか?」
「実は、川坂邸でも事件が起きてだな。それで、私がこちらに来るのが遅れたんだ。」
「事件とは...?」
坂田探偵は、まだよく分かっていなかった。
実は、風間助手毒殺事件と同時刻にもう一つの事件が発生していた。
「実は、川坂氏の娘が一人失踪してしまったんだ。」
栗森警部がその言葉を聞くと、坂田探偵は驚いた様子で、栗森警部に問いかけた。
「本当ですか?」
「本当だ。夜19時頃に警察に通報があった。娘が帰ってこないと...」
「なるほど。とりあえず、川坂邸に向かいましょう。急がないとまずい。」
坂田探偵は、すぐに川坂邸へ行くことを決めた。いざとなった時の行動力、判断力は流石である。

木崎助手、栗森警部らも同行して、川坂邸のもとへと訪れた。
木崎助手はもちろん、坂田探偵でさえも川坂氏には会ったことがないので、当然、川坂邸を見るのも初めてである。
見た目は、豪邸といっても過言ではない。周りのちっぽけな一軒家と比べると一目瞭然である。当然、他の豪邸と比べるとワンランクもツーランクも下がるだろうが、まわりがしょぼいせいか、より凄く見えてしまう。建物は二階建て。土地の面積のうちほとんどを建物面積が占めており、玄関が道路と密接している。庭がないという部分が、一般的に言われる豪邸との違いであろうか。
ともかく、これが川坂氏と坂田探偵の初めての対面なのである。
坂田探偵が川坂邸へと入る。中は豪華と言うよりかは、どちらかというと質素であった。部屋自体は確かに全て洋室なのだが、普通の家庭でもありそうなつくりである。
坂田探偵が部屋のリビングに上がると、そこには川坂氏の姿が見えた。
「あ、あなたが坂田探偵ですね。」
川坂氏は、まっさきに坂田探偵を見つけて、坂田探偵と挨拶を交わした。
「はい、私が坂田です。」
「今回の事件、依頼を引き受けてくださり、ありがとうございます。」
「いえいえ。とりあえずは娘の失踪事件ですね。」
「それって、今回のあの超能力者とやらの事件と関係あるんですか?」
川坂氏が一番気になる質問を、坂田探偵にぶつけた。
「ええ。」
一呼吸おいて、坂田探偵は続けた。
「八割ほどの確率で、超能力者が関与しているとみています。」
川坂氏にとっては衝撃の言葉だった。
「実はですね、今回のあなた一族に当てられた犯行予告。あれ、全て超能力者が実際に関与しています。」
川坂氏は、少し怖くなった。自分が、自分の娘が、超能力者の標的となっているということを。
「なので、なんとしてでも情報が必要なのですが。情報を教えてくれませんか?」
「ええ。警察にも伝えましたが、坂田探偵にも伝えておきます。」
ここから、川坂氏が失踪した娘についての話をし始めた。
「私には二人の娘がいまして、うち一人が中学校一年生ですね。名前は、桜子といいます。うちから学校までは、徒歩十分ほどで着くんですが、下校するときには友達と半分くらいまで一緒に帰って、友達と別れて、あとは一人で帰るんですね。」
坂田探偵は、メモしながら川坂氏の話を聞いている。
「で、今日もその友達と一緒に帰ったらしいんです。警察の捜査によると。つまり、桜子が一人きりになった僅か五分ほどの距離の間に何かあったと...」
「なるほど。大体の事件の概要は掴めました。桜子さんの特徴とかありますか?」
「桜子は、身長が140cm台で低身長。本人も身長低いのを気にしてましたね。体型はどちらかというと痩せ型。服装は制服ですね。カバンには、ミッキーのキーホルダーを付けていました。で、本人の写真がこれですね。」
川坂氏は、桜子の証明写真を坂田探偵に差し出した。
髪の毛は、茶髪っぽい感じの色。染めてるわけではない、恐らく天然の茶髪なのだろう。髪はロングで、写真だとヘアゴムで髪を止めているが、果たして今日はどうだったのだろうか。写真を見る限りだと、低身長なせいか顔も小さく、目が少々寄り目になっている。また、目の周りに少々薄いが、そばかすがある。あと、頬に傷跡が見えるがそれは恐らく今日までには治っているだろう。
「なるほど。わざわざ写真を見せていただきありがとうございます。」
「いえいえ。で、本人の特徴ってこんな感じでよかったですか?」
「ええ。よければ、桜子さんの性格とかも教えていただけると嬉しいですね。」
「んーと、桜子はとにかく明るい子だったと思いますよ。最近、仕事が忙しいのもあり、あまり家族に還元出来てない部分、また学校生活のことはよく知らないのですが。あとは、マイペースってところですかね。あまり時間を気にしないタイプかと。」
「なるほど。詳しくありがとうございます。」
二人がこのように会話しているときに、邪魔が入った。
「先生。」
木崎助手が、坂田探偵を呼んだようだ。
「どうした?木崎君。」
「栗森警部が坂田探偵をお呼びです。」
「あー、はいはい。今からいくよ。」
「了解です。」
坂田探偵が木崎助手にこう答えた後、今度は川坂氏に向けてこう言った。
「お呼び出しくらったようなので、とりあえずそっちに向かいますね。」
「はい。」
「もし、なんかあればまたいつでも呼んでください。あと、この事件は絶対に解決してみせるので。お任せ下さい。」
坂田探偵は、助手を失ったショックというのもあって、普段なら絶対使わない"絶対"という言葉を坂田探偵が使っているのを見ると、坂田探偵も平常心を装って、実は動揺してるんだなあというのが木崎助手目線で見える。
「はい。是非とも頑張ってください。そして、娘を、桜子を一刻も早く見つけてください!」
川坂氏は、最後の方少しだけ口調が荒らげた様子だった。それだけ娘に対する想い、愛情というものが強いのだろう。
だからこそ、超能力者は娘から殺害していくという、川坂氏にとって精神的ダメージを与える残忍な犯行手段を計画しているのであろう。
ともかく、栗森警部に呼ばれた坂田探偵は、「何の用ですか?」といって、栗森警部に事情を聞いた。
なんとそれは有力な情報の知らせであった。
「実はだな、近所に住むある老人が、桜子さんが黒い車に乗るところを見たそうなんだ。」
「なるほど。その時に連れ去られたと考えるのが合理的だな。」
「ええ。だから、今はその黒い車の行方を追っています。」
「ふむ。黒い車ってこと以外に何か情報はないのかね?」
「えっと、防犯カメラの情報によると、車の天井にタイヤが積まれていたようです。」
「なるほど。まあ、そこの捜査は警察に任せよう。」
「ええ。直に見つかりますよ。」

桜子が友達と別れてからすぐに人通りのない道で、ある男に話しかけられた。
巧みな話術で、桜子は車へと乗り込んでしまった。連れ去られたというより、誘導されてしまったという方が正しいだろう。
もちろん、その誘拐した男は超能力者。ただの誘拐ではない。もし、ただの誘拐なら身代金なりなんなりの要求を突きつける。すなわち、誘拐された人を人質として自分に有利な条件を出すというのが誘拐の目的である。今回の誘拐は桜子を人質の対象としてでなく、殺害の対象としているのは、超能力者の犯行予告を見れば容易に想像できる。

少し時間が経つと、さらに有力な情報。いや、もはや物的証拠といっていいものが発見された。警察も超能力者事件との関連性がある事件ということで、たくさんの人数をこの事件に配属させていた。ゆえに、ここまで捜査が素早く進展したのだろう。
「坂田探偵、今しがた部下から電話がありましてですね。」
栗森警部が坂田探偵に話しかける。
「お、何か情報ありましたか?」
「どうやら、あの黒い車を発見したようです。」
「ふむ。車を乗り換えたのかな?」
「ですね。黒い車には[超能力者]と書かれたあの四枚の石版だけが残されているのみで、桜子さんの姿と超能力者の姿は見えませんでした。」
「どこで発見されたんだ?」
「高尾山の麓あたりですね。あまり目立たない場所に車が乗り捨ててありました。」
「なるほど...栗森警部。現場にいる部下と電話繋いでくれますか?」
「え、いいですけど。」
栗森警部は、坂田探偵が何をしたいのか分からなかった。ただ、坂田探偵に何か考えがあってのことなんだろうと思い、栗森警部は部下に電話を繋いで、坂田探偵に電話を渡した。
「もしもし、坂田探偵と申します。」
「あ、坂田探偵ですか。ご無沙汰してます。で、何の用ですか。」
「今、あの黒い車のところにいますか?」
「ええ。いますよ。」
「その黒い車にあった証拠って、四枚の石版だけでしたか?」
「ええ。他には、何もなかったです。」
「んーと、カーナビとかついてますか?その車。」
「ええ。カーナビついてますよ。」
「じゃあ、カーナビの電源つけてみてください。」
「はいはい。」
現場にいる警察は、カーナビの電源を入れた。
すると、目的地が表示されている。目的地は、銀座のデパートの地下駐車場。
「カーナビつけました。目的地が、銀座デパートの地下駐車場をさしています。」
「でかした。それが、次の超能力者の出没地だよ。」
「え!?なんで、そんなことが分かるんですか?」
「超能力者の性格的に、桜子さんの姿を見せておきたいはず。だから、車を乗り捨てたまま逃げるとは思えない。必ず、私たちを桜子さんがいる元へ連れていこうと誘導すると思うんですよね。だから、その乗り捨てた車の
中に何か証拠があるんだろうと思っていたら、恐らくそのカーナビのさししめす目的地こそが、超能力者が我々を誘導したい位置。だと思いますよ。」
「さすがですね。坂田探偵。」
刑事は、坂田探偵の推理に感銘を受けた。合ってる合ってないは別として、賢い人の推理というのは妙に説得力があるものだ。
通話し終えると、坂田探偵が栗森警部にこう言った。
「栗森警部、今すぐデパート向かいませんか?」
「ちょっと待て。今、そのデパートに連絡するから。」
栗森警部がそのデパートに連絡したところ、もうそのデパートは閉まっており、今日中は無理だと言う。
ただ、明日の朝八時、開店前ならばデパートを開けることは可能らしいので、特別に警察の捜査のために開店前にデパートを開けることを許可してくれた。
明日、栗森警部と坂田探偵、木崎助手が銀座のデパートへと乗り込む。
果たして、坂田探偵の推理は当たっているのか?また、もし当たっていた場合、デパートでどんな光景が目撃されるのだろうか?

川坂邸の中にある鐘の音が十回鳴り響いた。その鐘の音一回一回が、川坂氏の不安をあおった。鐘の音が聞こえる度、もう時間がないという焦りにおそわれるのである。

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