生きる意味のなかにいたはずの君が消えた日。

RAI

小崎 明瑠 ①


私たちの両親りょうしんが死んだのはたしか、3歳になったころ...。

覚えているのは、突然とつぜんなった大きな音と大きなれと真っ赤に燃え上がるほのおだけ。

私とあらた海流かいる両親りょうしんは昔から仲がよかったらしい。

その日は、怪我けがをしていた海流かいるの母、凪海なみに私たちをあずけ、海外かいがいへ旅行へいった。

その帰り、着地ちゃくち失敗しっぱいした飛行機ひこうき大爆発だいばくはつを起こした。

もちろん乗員じょういん乗客じょうきゃく 生きている人はいなかったらしい。

それから凪海なみは私とあらた養子ようしにし、新しい母親になった。

私たちは生まれたときからずっと一緒。

海流かいるはすぐにふざけるけどいざとなったら冷静れいせい判断はんだんできてたよれる兄的あにてき存在。

あらたは周りをよく見てて困ってる子はほうっておけないけどバカでやんちゃな弟的おとうとてき存在。

となりにいるのが当たり前の私の家族。

あらたとはよくケンカした。

何かと意見が合わず、すぐに言い合いになった。

それを止めるのはいつも海流かいるで周りから2人の保護者ほごしゃと言われていた。

言い合いが終わって少しの間会わずにいると、次会った時には普通ふつうに話していた。

私もあらたもそれを分かっていたから何度も言い合い、が出せたんだと思う。

だから、本気のケンカになんてならなかった。

でも、あの日は少し違ったんだ。






千崎ちさきの話を聞いて、あらたは自殺ではないことを知った。

それに少しホッとした私がいた。

もし...あらたが自殺だったとしたら、どんな仮定かていがあってもトドメを指したのはきっと...私だから。

「なぁ、あらたは...何を探してたんだ?」

海流かいるつぶやきにみんな「え?」という顔をする。

千崎ちさきが見た時、あらたは何かを探してたんだよな?」

海流かいるの問いに千崎ちさきうなずく。

「何か聞いてないの?」

美海みうなが聞くと、千崎ちさきは少し考えてから、首を横にふった。

「わからない...。落し物をして、それを探してる...って。」

「落とし物...」

みんなで考えるが全然わからなかった。

「そーだ。これ。」

気をまぎらわすように美海みうながカバンから枚数まいすうの写真を出す。

「1日目のやつしかないけどさ。写真...。あらたが死んで、見せれなかったけど
...。いい機会かなって...」

美海みうなが出したのは5年前の写真。

昔から写真を撮ることが好きだった美海みうなはいつもカメラ担当だった。

秘密基地ひみつきちにはってある多くの写真も美海みうなが撮ったやつだった。

千崎ちさきの話でしんみりしていた空気が少し軽くなり思い出話もたくさんでてきた。

ふっと1枚の写真が目に入る。

最初に撮った6人の集合写真だ。

「...ピン。」

「え?」

何気なにげなくつぶやいた言葉にすぐ隣にいた美海みうなが反応する。

「あ、いや...なんでもない。」

まさかね...と思った。

もう1度写真を見る。

私はピンをしていた。

向日葵ひまわりの花がついたピン。

あらたが初めて私にプレゼントしてくれた思い出のピン。

前日、あらたとケンカした私は仲直りのきっかけになればと思い、つけていった。

でも、遊んでいるときに落として結局見つけれなかった。

でも、ちがう。そんなはずない。

明瑠あらる。こんなピンしてたっけ?」

美海みうなが横から何気なくいう言葉にドキッとする。

「え。あ、うん。途中とちゅうで落としちゃったみたいだけど...」

変なことばかり考えてしまいうまく笑えなかった。

「落とした?」

なぜか心臓しんぞうがなりやまなかった。

「...うん。」

息が苦しかった。

「ちがう...」

心臓しんぞうの音で自分の声が遠くに聞こえる。

「ちがうよね?」

頭が混乱こんらんし隣にいる美海みうなたずねる。

「...どーしたの?明瑠あらる。」

何も知らない美海みうなは私のかたに手を置いて落ち着けようとしてくれる。

「...ごめん。」

そのおかげで少し落ち着く。

明瑠あらる。大丈夫か?」

海流かいるも心配している。

「ピンを...落としたの。あらたにもらった大切なもの。あらたが探してた物...ちがうよね?」

動揺どうようが隠せず、言葉がうまくまとまらない。

明瑠あらる。落ち着け。大丈夫だから。」

海流かいるが私の背中をさすり落ち着けてくれる。

「...私。あらたにひどいこと言ったの。許されないこと。なのに...私のせいでまた、あらたを...」

「違うから。大丈夫だから。」

全てを知っている海流かいるの大きな体が私を包む。

「私...」

少しして心が落ち着いてくると同時どうじに私は静かに話し出す。

「私ね。あの日の前日。あらたとけんかしたの。いつもの軽いケンカじゃない。初めて...ほんとのケンカだったの。」

私の罪。後悔こうかい

あのたった一言があらたが死ぬ原因げいいんになったかもしれない。


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