魔法創作師見習いの恋魔法

ノベルバユーザー99898

メイド美少女と銀髪美少女剣士♪

「ここがマリーナの住んでいる街なんだ!?」

僕達は街道を進み約二時間程で彼女の屋敷があるグランデルという街に到着していた。
この街は王都からも近く、交通の便が良いため、他の街や主要都市に向かいやすく大変栄えていた。
大通りには屋台などの出店も多く軒を連ねており、行き交う人々も活気に満ち溢れて見えた。これから住む街並みに、僕は期待に胸を膨らませていたのだった。

「ああ、そうだ!ここが私の住んでいる街だ。どうだソータ、いい所であろう?」

「うん! 綺麗な街だね!見て、ゴミの一つも落ちてないよマリーナ!!」

「うむ!それはなソータ。何を隠そう、私がこの街の…  」

マリーナが何か言おうとした時、通りすがりの老夫婦が僕達に…というよりマリーナに向かって話し掛けてきた。

「ぉおお〜!? これは、これはマリーナ様ではありませんか!暫く旅に出ると仰っていましたが、いつ戻られたのですか?」

彼女は話の腰を折られて少し残念そうだったが、直ぐに気持ちを切り変えたようで、最初に出会った時の凛々しく美しいマリーナになっていた。

「やぁ!ローカス夫妻。相変わらず仲睦まじい様子で羨ましい限りだな。私はたった今戻ってきたばかりだよ。」

「それは、それは。随分と長旅でごさいましたな。さぞ、お疲れのことでしょう。それより……。」

マリーナにローカス夫妻と呼ばれ、話をしていた夫が、彼女の姿を下から上へ数回見返しながら話を続けた。

「マリーナ様、その奇怪なお姿はなんで御座いますか!仮にも領主とあろうお方が、その様に御御足を露わにした格好をなさるとは……些か礼儀がなっておりませぬぞ!」

マリーナは、赤いミニスカートに白衣といった格好で、僕と初めて会った時と同じ服装であった。

「ああ、これは失礼した。なにぶん旅路から急いで帰ってきたものでな、着の身着のままであったようだ。屋敷に帰ったら直ぐに着替えるつもりだったのだ。」

マリーナの苦しい言い訳だったが、ローカス老人は、何とか納得してもらえたようだった。その後も数分間立ち話をし、ようやく彼女は解放され僕の所まで戻ってきた。

「すまないソータ。随分と待たせてしまったな。」

「いや、それは別に構わないけど、もしかしてマリーナって凄く偉い人だったの?さっき、この街に入る手続きをしていた時だって、門番の兵隊さんが緊張しながら敬礼したり〝ペコペコ〟頭を下げてたみたいだったから…」

「ふむ、先程の話の続きになるが。実はな、私はこの街は勿論、アカントウ領区を治める領主なのだよ!!」

「ふぅ〜ん。そうだったんだ。」

「……。〝ふぅ〜ん〟ってそれだけかソータ!?アカントウ領区といえば、この国の5分の1に辺たる広さなのだぞ!君の世界でいえば、関東一円を取り仕切っている様なものなんだ。」

「そんな事言われても今一実感が湧かないよ。それってそんなに凄い事なの?」

僕は政治的な事に全く興味がなかった。まして、異世界の領区だとか、領主などと言われても、皆目見当もつかない。

マリーナはそんな僕に呆れ顔をし、目頭を手で押さえながら話を続ける。

「まぁいいさ……因みにだが、私の養子になったという事は、将来ローズベルト家の家督を継いでソータはアカント領区の領主になるのだからな。その事だけは覚えておくのだぞ!」

「領主なんて僕に務まるのかなぁ?てっきりマリーナの研究を引き継ぐだけだと思ってたから不安だよ。」

「その事を含めて、これから色々教えていくつもりだ。しっかりと勉強すれば何の問題はないさ。」

彼女はそう言ったが、僕は不安でしょうがなかった。勉強は嫌いじゃないが、領主というものは知識だけではなく領民に好かれたり、信頼されるなどのカリスマ性も必要になるのではないか?

そんなことを考えながら歩いていると、マリーナが大きな門の前で立ち止まり、呼び鈴を鳴す。

すると、中から僕と同じ年か少し歳上のメイド服姿の女の子が現れた。

「ただ今、サターニャ。私が居ない間何か変わりはなかったかい?」

サターニャと呼ばれた女の子は、鋭い猫のような紅い瞳に肩口まである綺麗な黒髪の先を白いリボンで結び片方の肩に垂れ流し、鈴の付いた首輪?をしていた。

これで耳と尻尾があれば猫耳メイドなのに…
そんな事を考えていると、サターニャが一礼してからマリーナの問いに答え出す。

「お帰りなさいませマリーナ様。長旅ご苦労様でした。こちらは特に変わった事は御座いませんでした。」

「ふむ、そうか。長い間留守を任せて悪かったな。」

「いいえ、構いません。それよりも、そちらの方が例の…  」

サターニャは僕の方に〝チラッ〟っと目を向け、誰なのかを聞きたいようであった。
マリーナは待ってましたという表情で左腕を僕の首に巻き付けながら自分の元へ引き寄せた。それでバランスを崩しそうになった僕のことなど御構いなしといった具合である。

「ああ、この子が予言水晶に表れたソータだよ!!」

「初めましてソータ様。私はこの屋敷でメイドをしております、サターニャと申します。」

彼女はスカートの裾を両手で摘み、深くお辞儀をしながら僕に対して礼儀正しく挨拶をした。

それに対し、僕も慌ててマリーナの腕を振りほどき、〝ペコリ〟とお辞儀をして応えた。

「初めまして!マリーナの養子として今日からお世話になります、青山 想太です!よろしくお願いします。」

「養子?…ですか…」

僕がマリーナの養子だと言ったところでサターニャの眉が〝ピクリッ〟と僅かに動き、マリーナの方へ目線を向ける。

するとマリーナは彼女から目線を反らし、少しヒア汗を掻き焦ったように弁解しだした。

「そ、その〜なんだ…ソータはまだ若い、私と結婚するには色々な面で早計だと思ったのだ。は、はははっ  」

これを聞いてサターニャの顔が〝ニャ〜〟っという、したり顔に変わった!最初の印象ではマトモでしっかりしたメイドさんかと思ったのだが、マリーナのメイドだけあって、この子もやはり変わった人のようだ。

「ソータ様、マリーナ様は、このようにおっしゃっておりますが、本当のところはどうなのですか?」

「うん、僕はまだ15歳だからね、結婚何て考えられないって言ったよ。」

「ほほぅ…。つまり…マリーナ様はソータ様に振られたという事ですね。」

サターニャは手を口にあて、〝クスックスッ〟と笑いながら非常に嬉しそうだ。

「ソータ様を迎えに行く際は、『私の嫁が見つかった!この子を絶対モノにしてやる!!』などと豪語していらしたのに。全くもってお笑いですわ!クスッ」

「な!?  サ、サターニャ!!主人に向かって何たる口の利き方なんだ!この〜!!」

       『〝バキッ〟』!!

怒ったマリーナは、サターニャの腕を有らぬ方向へと曲げ強引にへし折った!!?

『ギィヤーーーーー!!』

サターニャの悲鳴が辺りに響き渡り、あまりの苦痛で彼女はうずくまり悶絶し転げ回っている!

「さて、行くぞソータ。森の鎮火をした際に体と服が随分と汚れてしまったのでな、風呂に入るぞ!」

「マリーナ。何もそこまでする事ないじゃないか?酷すぎるよ!」

幾ら使用人が主人を馬鹿にしたからといって、腕の骨を折るなど酷すぎる行為だと思う。僕は、マリーナの人間性を疑ってしまった。優しいと思っていた彼女が実は残忍な性格なのではないかと…

「ああ、これでもサターニャは治癒魔法のエキスパートでな。腕の一本や二本折れたところで何の心配も要らないんだ…そ…」

「そうですよソータ様。私なら何の問題もございません。湯浴みに行くのですね!ササッこちらです。私が、お背中や色々な所を洗って差し上げますわ!」

先程まで地ベタで転げ回っていたはずのサターニャが、いつに間にか僕の上着を脱がせながら風呂場へ案内しようとしていた。

「え!? サターニャもう腕の傷は大丈夫なの?」

「はい、勿論 ♪ 私はどのような怪我であろうと一瞬で治癒出来るのです!」

「それは凄いねサターニャ!!驚いたよ。」

「うふふっ。ソータ様、早く湯浴み場へ参りましょう。」

「あ!?  コラ二人共〜私を置いて行くでない〜!!」

この後マリーナは3人でお風呂に入ろうと言い出すが、さすがに恥ずかしいので、僕が猛反対し、渋々二人が先に入り、僕は、その後一人で入る事になった。

ローズベルト邸は異様な程広く、湯浴み場でさえ僕の家の5倍近くあった!そこに一人で入ると貸切露天風呂に入っているようで物凄く落ち着かない。僕は湯船に浸かるのも程々に、短時間で済ませる事にした。

お風呂から上がると、サターニャが着替えの服を用意してくれていた。その服は魔導師が身に付ける白いローブで金の装飾が所々に施されており、何とも豪勢な感じがした。

少しサイズが大きく、裾を引きずってしまうが、僕は成長期ということもあって、その内丁度いいサイズになるかと思い、腰の部分をズボンのベルトで締め上げ何とか調節する事にした。

そして湯浴み場を出てマリーナ達が待つ応接間に向かおうとするが案の定道に迷ってしまった。確か階段の横を左に曲がり、真っ直ぐ進んで3つめの部屋だったかな…しかし、階段が幾つもあり、どの階段が正解なのか分からない。

僕は一つ一つの階段を全部確かめる事にし、丁度二つめの階段を曲がった時、窓の外から中庭が見えた。中庭には大きな池があり、その池の手前で何かがしきりに動いているのが見える。

「何だアレは?」

不思議に思った僕は、窓に近付き動いている物の正体を確かめようとした。
しかし暗くてハッキリと見えない。どうやら、お風呂に入っている間に日が暮れて夜になっていたようだ。
暫く眺めていると次第に目も慣れてきて、見えるようになってきた。

「人だ!? 何か剣のような物を振り回しているぞ!泥棒か!?… いや、剣術の稽古をしているみたいだ…」

その人影は、何もない空間に向かってしきりに剣を振り回している。
次の瞬間、雲の切れ間から月明かりが中庭全体を照らし出す。それと同時に今まで人影だった人物もハッキリと見えるようになった。

その人物は、シルバーに蒼い装飾が施された鎧を身に纏い、自分の背丈よりも少し長めの長剣を携えた女の子だった!!
月の淡い光に照らされ銀色の長い髪が〝キラキラ〟と黄金色に輝き、緩やかな風に吹かれて、とても綺麗である。剣を振るう度に舞う汗が、まるで雪の結晶の如く彼女の周囲を取り巻いているように見える。

流れるような剣さばきは優雅且つ凛とし、剣術の稽古というよりも舞踊でも舞っているかの如く洗練された動きであった。

彼女の美貌と剣舞の様な鍛錬に心を奪われた僕は、一体どう進んだのか憶えていないが、いつの間にか中庭に出ていた。
そして彼女に吸い寄せられているかのように近づいて行ってしまった。

      〝ジャリッ〟

「誰だ!? そこに誰かいるのか?」

しまった!あまりに無我夢中だったので、中庭の小石に足を滑らし、彼女に僕の存在を感付かれてしまった。

「ご、ゴメンなさい! 決して怪しい者じゃないよ!!君の剣さばきについ見惚れていただけなんだ。」

「私に見惚れていただと? 貴様、嘘も大概にしろ!ここが何処だか知っていて、そんなたわ言を言っているのか?」

「ここが何処かって?ここはマリーナの屋敷で、僕は今日からこの屋敷に住む事になったんだ。君こそ誰なんだい?屋敷の護衛か何かなのかな?」

「今日からここに住むだと?…〝フンッ〟ここはグランデル魔法学園女子寮だぞ!男である貴様が住める訳がなかろう!怪しい奴め!!私の剣の錆にしてやる!」

女子寮!?一体どういう事なんだ?ここはマリーナの屋敷じゃないのか??
そんな事を考えている間もなく彼女が剣で切り掛かって来た!!

「あわわわっ!?」

僕は咄嗟に後ろへと飛びのき、彼女の一撃をなんとか交わしたが、勢い余って尻もちを付いて転んでしまう。
隙が生じたのを見計らい彼女は剣を大きく上段に構え、僕の眉間に狙いを定め振り下ろそうとした!

「待って!待って!!僕はマリーナ・ローズベルトの養子になってココへ来たんだ!!嘘じゃないよ!」

僕は両手を広げ、目一杯前に突き出しながら、事実をありのままに伝えた。この時心の中では半分諦めていたのだが、自然と口から言葉が出ていた。

すると、僕の顔スレスレの所で彼女の剣が〝ピタリッ〟と止まった。

「ローズベルト!?貴様。今、マリーナ・『ローズベルト』と言ったのか?」

彼女は両手で持っていた剣を片手に持ち替え、もう一方の手を自分の顎にあてながらブツブツと考え込んでいた。

(マリーナ・ローズベルトは確か…この学園の学園長だったはず…コイツの着ているローブの家紋もローズベルト家のものだ…)

「あ、あの〜…。信じてもらえたのかな?」

「え!?あ、ああ。すまないが、貴方は本当にローズベルト家の方なのか?」

「うん、そうだよ。っと言っても今日からだけどね。」

「では、そちらの屋敷の中に入って貰えるだろうか。中庭を挟んでそちら側はローズベルト家の領域なんだ。魔法の結界が敷かれているため、部外者は勿論の事、学園の生徒ですら、そちらの屋敷の中には入る事は出来ないようになっている。貴方がローズベルト家の方なら魔法結界など関係なく入れるはずです。」

魔法の結界!?そんな物が張られていたのか…まぁ、元々僕はこちらから来たんだ。
何の問題も無く入れるけど、それで僕への疑いがはれるなら簡単な事だ。

「よいしょっと!! どう、これで良いかな?」

僕は彼女の言う通りに、難なく中庭を挟んで反対側の屋敷の中に入った。
そして再び彼女の方へ振り向くと、何故か彼女は剣を鞘に納め、片膝を地面につき、頭を下げてひれ伏していたのだった。

「知らぬ事とはいえ、先程は大変失礼な失態を犯してしまいました。何ともお詫びのしようも御座いません。つきましては、この身を煮るなり焼くなりお好きになようになさって下さい。」

「ちょ、ちょっと待ってよ!僕も悪かったんだからお互い様でしょ?」

「いえ、ローズベルト家と言えば、ライジン国5大貴族の中でも筆頭ともいえる名家です。その御子息様に無礼を働いたのですから、例えこの場で打ち首にされても文句は言えないでしょう。ですから、私を煮るなり焼くなり…」

「だから煮ないし、焼かないから!!……。
じゃこうしよう!お詫びの代わりとして、もし良かったら僕に剣術を教えてよ!」

今日、盗賊に襲われた時、僕に戦う力があれば、もう少し楽に解決出来たかもしれない。これから先、もっと強い敵と戦う時が来た時にも戦闘スキルを身に付けておいて損はないはずだ!

「……。それは一向に構いませんが…分かりました。私で良ければ是非お供させて頂きます。」

「ありがとう!でも、その言葉使いはやめてよ。普通に接してくれていいからね。僕の名前はソータ・ローズベルト。君の名前は?」

彼女は少し間を置いてから教戦の申し出を受け入れてくれた。その時、何故か彼女の頬が赤らんでいたのだが、僕はそれに気付かず握手を求めた。彼女も快く握手に応えてくれたのだった。

「ソフィー…ソフィー・フェニックスと言いま…だ。これからよろしく!ソータ殿。」

そして手を握ったついでにソフィーを引っ張って立たせようとしたのだが、彼女の力が強過ぎて逆に僕が引っ張られてしまい、倒れ込んでしまった。

   〝バッタン〜ッ!! ……  むにゅっ!!〟

「あぁんっ!」

「痛っててて〜!    むにゅっ!? ん?  や、柔らかいこの感触は………。」

何と、倒れ込んだ拍子に僕の両手がソフィーの胸を揉みしだいてしまっていた!
彼女は顔を真っ赤にして下から僕を睨みつけていた。

「あ…ご、ゴメンなさい…。」

「そ、ソータ殿〜!!な、何をするのだ〜!」

〝バシッ!!!〟

ソフィーの平手打ちが僕の左頬を容赦なくブチ抜いた!!
彼女の剛腕平手打ちで5メートル近く吹っ飛んだ僕は、そのまま気を失ってしまったのだった。

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