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神速の騎士 ~駆け抜ける異世界浪漫譚~

休月庵

転移

大和 光は目を覚ました。




「……うっ」




気だるい体をおこして辺りを見渡すが周囲は闇に包まれており、なにも見えない。


光は腰の鞄から灯りを灯す魔道具を取り出す。
ロゼリアに選んでもらった最低限の装備のひとつだ。


光を中心として数メートルほどが明るくなる。


壁の質が先ほどまでと違っている。
さっきまで壁は岩そのものだったが、この壁は職人が建てた家の壁のような石造りとなっている。


明らかに先ほどまでいた場所ではない。




「ロゼリアは……?ロゼリア!いるか!?」




光は辺りを見渡してロゼリアを探す。
すると、少し離れたところにロゼリアが倒れているのが見えた。




「ロゼリア!」




光はロゼリアに駆け寄り、ロゼリアの名前を呼ぶ。
そのまま揺り動かすと、ロゼリアが目を覚ました。




「……光?いったい、なにが……」


「よかった。怪我はないか?」


「ええ、痛いところはないわね。それより、どうなっているの?」


「わからない。おれもさっき目を覚ましたんだ。ただ、壁の感じがさっきまでと違う。知らない間に移動しているらしい。」


「移動、移動ね……私にも壁を見せてくれる?」




ロゼリアは壁を見て、そしてしばらく俯いて考えをまとめた。




「光、目が覚める前の最後の記憶がなにか教えて?」


「ああ。魔石に触れたな。ダイアウルフの魔石が見えたから、それを取ろうとしたんだ。」




そこまで言って、光は思い出す。




「あ、いや、そうだ。おかしいところがあった。倒したダイアウルフは6匹のはずだけど、その魔石で7つ目だった。」


「……そう。そうなのね。」




ロゼリアは少しの間口を閉ざす。




「まず、私の最後の記憶から話すわ。私の最後の記憶は、光、あなたがなにか拾おうとした姿よ。見ていたら目の前が暗くなって、今に至るわ。」




そこまで言って、ロゼリアは一拍おいた。




「私の記憶、そして今聞いたあなたの話。これをまとめてわかること。おそらくだけど、私たちは転移しているわ。」


「……転移?」


「ええ。転移よ。光が取ろうとした魔石、おそらくそれが原因ね。光に話していなくて悪かったのだけど、ダンジョンには罠があるの。魔石に似た石がきっかけになる罠。いくつかあるけど、今の状況から見て転移したと考えるべきね。たしか、ずっと前にクリアされたダンジョンにそういうのがあったって聞いた気がするわ。」




光は押し黙り、転移、転移と反芻する。




「よし、そうしたら、転移したとしてだ。ロゼリアは、ここがどこだかわかるか?」


「どうかしらね。15階層まではだいたい探索されていて、探索された場所は灯りが灯してあるはずよ。それにこの壁、私は見覚えはないわ。」




光はごくりと唾を飲み込んで聞く。




「それってつまり……」


「ええ。楽しいツアーは終わり。ここからは、本当のダンジョン攻略よ。」




ロゼリアは緊張で強ばった顔でそう言った。

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