話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

神速の騎士 ~駆け抜ける異世界浪漫譚~

休月庵

空の中で

ロゼリアは感謝した。




「ありがとう。助かったわ。けど、これはどういう魔法?空を飛んでる、いや、歩いてる。こんな魔法聞いたことない。けどおかしい、魔力は感じないし、なにかしら。」


「よくしゃべるな。悪いけど、俺にもどういう仕組みかなんてわかんねぇよ。まあとにかく、無事みたいでよかったよ。薬草も手に入れたみたいだしな。」


「まあね。本当にこれを手に入れられてよかった。ところで、お兄さん何者?だいぶ強いみたいだけど。どうしてここに?」


「ただの駆け出し冒険者だよ。君こそ、すごい魔法だった。オレの助けなんていらなかったか?」


「やめてよ、お兄さんがこなければ今頃食べられてたわ。それよりお兄さんが駆け出し冒険者だなんて、悪い冗談ね。世の中の駆け出し冒険者の概念が壊れちゃうわよ。」




ロゼリアはクスリと笑う。




「私はロゼリアよ。本当にありがとう、お兄さん。」


「オレは大和 光だ。間に合ってよかったよ、ロゼリア。戻ったら、お母さんにもよくお礼をいいな。お母さんが冒険者ギルドまで助けを呼びに来てくれたから、オレは助けにこれたんだ。」


「そう、お母さんが……」




そう言って、ロゼリアは少し俯く。
本当に危なかった。
光が来なければ、今頃狼たちに群がられ、骨しか残らなかっただろう。


もし、自分が死んでいたら。
薬がない妹も死んでいただろう。


それだけじゃない。
父のいない我が家の主な生活費はロゼリアが稼いでいる。
蓄えもいくらかあるとはいえ、長くは続かない。


母も仕事をしているため、すぐにどうにかなるということはないだろうが、自分と妹が死に、一人となった失意の母が長く生きられるとは思えなかった。




「カッコ悪いわね。烈火の魔女なんて呼ばれて、いい気になってたわ。それなりに有名になって、なんでもできるって思い込んでた。こんなんじゃ、全然だめね。」




自分が何とかしなくてはと思っていた。
何とかできている自負があった。
初めてダンジョンで稼いだ時、「ありがとう、さすがお姉ちゃんね。」と誇らしげに言ってくれた母の言葉が、いつも自分を支えていた。
それまで頑張って自分と妹を育ててくれた母を、これからは助けていくんだといつも思っていた。


目の前に迫った命の危険。
ロゼリアは、迫る顎を思い出して寒気を感じた。




光はそんなロゼリアに、何でもないように言った。




「君は妹を助けただろう?」




ロゼリアはハッとして手にした薬草を見た。




「そうね……そのとおりだわ。」




妹を助けられる。
自分も助かった。助けられた。
想像したような悪い未来は来ない。




大丈夫だ。大丈夫。
だから今だけ、今だけだ。




ロゼリアは、光の胸の中で静かに泣いた。

「神速の騎士 ~駆け抜ける異世界浪漫譚~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く