神速の騎士 ~駆け抜ける異世界浪漫譚~
諦めない心
ロゼリアは息を整えた。
眼下を見下ろせば、フォレストウルフがうろうろしている。
ロゼリアが力尽き、下に落ちてくるのを待っているのだ。
(失敗したな……なんて間抜けな姿……)
ロゼリアは今、大木の枝の上にいた。
ロゼリアがこの森に来たのは、妹の病気に効く薬の原料を手にいれるためだ。
珍しい病気で、医者も、薬屋も薬を持っていなかった。
命に関わる病気で、一刻を争う。
医者から言われたその言葉が、ロゼリアを焦らせた。
失敗は、いくつかある。
まず、一人でこの森に来たこと。
急いでいたとはいえ、もう少し一緒に来てくれる人を探すべきだった。
次に、自分の力を過信したことだ。
ロゼリアはダンジョン攻略においてひとかどの人物である。
得意な炎の魔法と、自慢の赤い髪を指して、烈火の魔女なんて呼ばれている。
そんな自分が、森の魔物になんか遅れをとるわけがない、そういう自信があった。
ロアの街では冒険者とはダンジョン攻略を生業とするもの。森は初心者が薬草採取に行くもの。
そういう空気が、その自信を後押しした。
結果がこの様だ。
薬草の自生地に近づいた途端、フォレストウルフが現れた。
倒しても倒しても、倒したあとから湧いてきてきりがなかった。
素早い動きに剣はなかなか当たらない。
頼りの綱の魔法力にも限りがある。
退路も塞がれつつあったため、やむを得ず木の上に避難した。
(数が異常すぎる。群れでいるとは聞いていたが、こんなにいるなんておかしい。強いボスが生まれて、群れでもくっついたのかしら…)
なんにしても、そろそろ限界である。
体力も、精神も、そして妹の容態も。
ここにたどり着いた時点で辺りが暗くなり始めていたため、木の上で夜が明けるのを待った。
さらに眠ることができず、回復速度の遅い魔力の回復も待ったため、ここからは見えないが日はすでに高く上っているだろう。
薬草は視認できる場所にある。
魔法で道を確保して、一気に薬草を取り、そのまま離脱する。
やるしかない。
できなければ死ぬだけだ。
自分も、妹も。
「上等だわ……」
力を抜いて、木の枝から下へと落ちる。
途中、付近のフォレストウルフを一掃する。
地面に着地と同時に、自分と薬草までの間に道を作る。
炎が木に燃え移るが構わない。
フォレストウルフが炎に怯えているうちに、薬草まで一気に走る。
あと3歩、2歩、1歩――採った、このまま離脱、と地面を踏みしめたその時。
巨体な狼の顎が炎の壁を突き抜けてきた。
「……あっ」
死ぬ寸前に走馬灯を見るというけれど、そんなことはなかった。
ただ、迫り来る牙がやけにゆっくりと見えた。
牙と、舌と、その奥の赤暗い闇がゆっくりと近づいてきて、そして。
轟音とともに、衝撃が吹き荒れた。
眼下を見下ろせば、フォレストウルフがうろうろしている。
ロゼリアが力尽き、下に落ちてくるのを待っているのだ。
(失敗したな……なんて間抜けな姿……)
ロゼリアは今、大木の枝の上にいた。
ロゼリアがこの森に来たのは、妹の病気に効く薬の原料を手にいれるためだ。
珍しい病気で、医者も、薬屋も薬を持っていなかった。
命に関わる病気で、一刻を争う。
医者から言われたその言葉が、ロゼリアを焦らせた。
失敗は、いくつかある。
まず、一人でこの森に来たこと。
急いでいたとはいえ、もう少し一緒に来てくれる人を探すべきだった。
次に、自分の力を過信したことだ。
ロゼリアはダンジョン攻略においてひとかどの人物である。
得意な炎の魔法と、自慢の赤い髪を指して、烈火の魔女なんて呼ばれている。
そんな自分が、森の魔物になんか遅れをとるわけがない、そういう自信があった。
ロアの街では冒険者とはダンジョン攻略を生業とするもの。森は初心者が薬草採取に行くもの。
そういう空気が、その自信を後押しした。
結果がこの様だ。
薬草の自生地に近づいた途端、フォレストウルフが現れた。
倒しても倒しても、倒したあとから湧いてきてきりがなかった。
素早い動きに剣はなかなか当たらない。
頼りの綱の魔法力にも限りがある。
退路も塞がれつつあったため、やむを得ず木の上に避難した。
(数が異常すぎる。群れでいるとは聞いていたが、こんなにいるなんておかしい。強いボスが生まれて、群れでもくっついたのかしら…)
なんにしても、そろそろ限界である。
体力も、精神も、そして妹の容態も。
ここにたどり着いた時点で辺りが暗くなり始めていたため、木の上で夜が明けるのを待った。
さらに眠ることができず、回復速度の遅い魔力の回復も待ったため、ここからは見えないが日はすでに高く上っているだろう。
薬草は視認できる場所にある。
魔法で道を確保して、一気に薬草を取り、そのまま離脱する。
やるしかない。
できなければ死ぬだけだ。
自分も、妹も。
「上等だわ……」
力を抜いて、木の枝から下へと落ちる。
途中、付近のフォレストウルフを一掃する。
地面に着地と同時に、自分と薬草までの間に道を作る。
炎が木に燃え移るが構わない。
フォレストウルフが炎に怯えているうちに、薬草まで一気に走る。
あと3歩、2歩、1歩――採った、このまま離脱、と地面を踏みしめたその時。
巨体な狼の顎が炎の壁を突き抜けてきた。
「……あっ」
死ぬ寸前に走馬灯を見るというけれど、そんなことはなかった。
ただ、迫り来る牙がやけにゆっくりと見えた。
牙と、舌と、その奥の赤暗い闇がゆっくりと近づいてきて、そして。
轟音とともに、衝撃が吹き荒れた。
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