ご落胤王子は異世界を楽しむと決めた!WEB版

るう

ダンジョンと宝

「幸いなことに、このダンジョンはワープポイントがあるみたいだ」

 ワープポイントとは、転移装置のようなものだ。
 ダンジョンの発生は、実のところ詳しいことはわかっていないが、モンスターなどの巣穴を利用した先人たちの宝物庫だという考え方がある。もう一つが、自然によるもの。その発生は突発的で、どこかからモンスターが湧き出てくる現象が度々あり、そこがダンジョンになるということだ。
 そして、前者の場合にのみワープポイントが存在する。その装置は魔法陣がもとになっているが、再現は難しいとされていた。
 仕組みとしては、一つの着地地点と複数のポイントが紐づけされており、双方へ行ったり来たり出来る仕組みだ。だが、ダンジョン内にあるポイントは一度でも踏まないと、そこへ直接は行くことはできないのだ。

「……この近くにあるの?」

 どこか不安げなアリスの問いかけに、リュシアンは「残念ながら」と前置きして首を振る。

「次の階層の、ボスと思われる魔力マークがある部屋手前と、その先の階段を下りた最終階層の小部屋に一つずつあるけど……」

 まるっと、二階層くらいは進まなくてはならない計算だ。地上の魔境など、赤子の手を捻るように攻略する冒険者の猛者が、恐らく立ち入ったこともないような、とんでもない所を、だ。 
 まるで迷路のようなマップを見ながら、その困難な道筋を想像したのか、ニーナやエドガーの表情もどこか硬かった。

 ダンジョンは成長する。
 先人が宝物庫として利用したダンジョンも、自然発生したダンジョンも、どちらも放っておくとどんどん階層を増やし、フロアも広がり大きくなる。そうなると、住み着くモンスターのレベルも上がっていき、超難度のダンジョンが完成するのだ。
 奥地に住む、いわゆるラスボスがそのダンジョンの親のような存在で、その魔物が死ぬと、次の魔物が住み着くまでダンジョンは活性を止める。いわゆる踏破済みダンジョンとなるのだ。

 先人の秘宝は、大当たりの時もあれば、大したことがないこともある。なぜなら、先人たちはダンジョンに宝を隠したつもりはなく、ただ保管していただけということも少なくないからだ。そこからダンジョンが成長し、とんでもないものになろうとも、宝は成長することはない。
 とはいえ、ダンジョンの主になるモンスターは希少種であることが多く、そのモンスター自体が宝と言ってもよいし、ボスモンスターや、住み着いたモンスターが持ち込んだ貴重品はもちろん、武器や防具を装備するモンスターなどは伝説級の遺物を所持していることさえある。さらに、ダンジョンとして生成された場所にしか発生しない植物、鉱物、水などはダンジョン産の貴重品として扱われるのだ。

 ともかく、リュシアン達にとって救いは、これがワープポイントが存在するダンジョンだということだ。どこに出るかはともかく、ここにいるよりはマシであることに変わりはないだろう。
 ボス部屋の手前にも一つワープが存在するため、少なくともボスとは戦わずに済む。もっとも、そこへ到達するのも容易なことではないだろう。きっと、今まで見たこともない強力なモンスターに遭遇するに違いない。
  
「それにしてもすごいな、そのスキル。マッピングだっけ、便利すぎるな」

 リュシアンがネガティブな未来図にため息をついていると、エドガーは書き上げた緻密な地図をしげしげと見て感心していた。

「まあね。でも、実際にはこんな燃費の悪いスキル、そうそう使えないけどね」
「消費魔力が多いのか?」

 多いなんてものじゃないよ、と苦笑してリュシアンはペンを置いた。

「ごっそり持っていかれて、びっくりした。ただ、この場所が魔力に満ちているせいか、普段よりもかなり魔力回復が早いんだ。普通なら、目を回していたかもね」

 ずっと以前に、あのとんでもない回復魔法をつかった時のように。

「さてっと、先に進むにしても……」

 そこへきて、今まで保留してきた問題を解決すべく、リュシアンは、傍らでじっとこちらを見ている少女に改めて視線を戻した。

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